第25話 雪辱
ツッコミを忘れていた。
ゴブリンハウスキーパーってなんだよ?!
生活魔法を手に入れたことでお口を洗ってスッキリサッパリ忘れていたが、聞いたことのねえゴブリンが混じっていたようだ。
飯炊きとか専門のゴブだったのかな?
雑魚ゴブの中に紛れていたから上位個体ではないと思う。
まあ、たしかに集団を形成して生活している以上、そんな役割を持つ個体も必要なのだろう。
おかげで
よし、ツッコミを終えて心に引っ掛かることは解消した。
次の獲物を狙いに行くとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
大きな小屋の中にはオスのゴブリンしかいなかったから、多分雑魚ゴブの中の戦闘要員とかがまとめて住んでいたんだろう。
周りには、本当に小さな小屋というか、そんな建物が複数円を描くように建てられている。
多分だが、そっちの方にはメスゴブとか子供ゴブ、家庭持ちのオスゴブとかが住んでいるんじゃないだろうか。
どうしようか。
いくらゴブとはいえ、メスや子供を寝ているうちにジェノサイドするのはなんだか気が引けてきたのだ。
メスを倒さなければゴブはどんどん増えていくのは分かっているが、なんとなく前世の価値観的なものが残っているのか、殲滅するのには忌避感を感じてしまう。
よし、決めた。
メスや子供はこちらに立ち向かってきたら倒すし、逃げたら追わない。
そういう方針にしておこう。
ちょっと豪華な建物の方に向かう。
さすがにこの中には強そうなゴブの気配がする。
お、やべえ。
一つの気配が動き始めた。
こいつの気配は、よく覚えている。
オレの宿敵とも言える大きなゴブ野郎だ。
その場から飛び退くのと同時に『仮死擬態』を発動。
これによって、オレが熱反応を消した位置と、飛び退いた場所の位置を違えることが出来るだろう。
大きな音を立てて入り口の扉をあけ放って大きなゴブが外に飛び出てくる。
そして、さっきまでオレのいた位置を見て首をかしげていやがる。
よし、やっぱりこのスキルは『熱感知』持ちの感知から逃れるのに有効なようだ。
だが、このスキルを使用している間は身動きをとれないというネックが付きまとう。
このまま攻撃に移りたいところだがそれはままならない。
でも、今確認したところ、息を止めざるを得ないから嗅覚は仕事していないが、オレの聴覚や『熱感知』の能力は作動しているようだ。
ならば、もしかして。
「『土魔法』!」
グギャッ!
よし、仮死状態でも魔法は使えるようだ。
大きなゴブの足の裏から鋭い『土のタケノコ』を生やして足の裏から突き刺してやる。
見事足の甲を貫通させることが出来た。
「さらに『土魔法』!」
貫通させたタケノコの先端を変形させ、釣り針のかえしのようにして大きなゴブの足をその場に固定する!
これでこいつは動けまい。
そのタイミングで『仮死擬態』を解除して、これまで止めていた呼吸を行う。ふう、空気うめえ。
そして、後ろ足のハムストリングに力を込めて跳躍!
太ももの筋肉の名称がハムスターの名前に似ているなとウサギの身体で考えながら、必殺の牙を生やして大きなゴブの喉元に飛び掛かる!
シュパッ!
見事、オレのヴォーパルな牙は大きなゴブの喉笛を掻っ切ることに成功した!
急所の首を斬られた大きなゴブは、そのあとも数十秒大きなこん棒を振り回してオレをつぶそうとしていたが、さすがに長くはもたずに絶命した。
ふう、やったようだな。
ようやく、この異世界に来てからの宿敵を討伐することができた。
思えば、一番最初にオレを殺そうとこん棒を叩きつけてきたのもこいつだったのかもしれない。
オレに敗戦という屈辱を味合わせてくれた相手。
礼を言っておくか。
なんにせよ、お前のおかげでオレは強くなれたのだから―― あぶねえ!
ゴオッ
感慨に浸っているオレの脇を火魔法の火球が通過する。
ちょっと! こういう時は回想シーンが終わるまでおとなしく待っていてくれないかなあ?!
この魔法ゴブも『熱感知』持ってるのかな?
ちょいと様子見してみるか。
『仮死』を発動させないまま忍び足で移動。
華麗なステップを踏みながら、魔法ゴブの出方を見る。
すると、新たな火球が一瞬前にオレのいた位置を通過していく。
うん、やっぱり持ってるね。
さっきの大きいゴブにしたように、移動しながら『仮死』を発動し、位置を攪乱。
すると、魔法ゴブはオレの位置を見失い―― 見失ってないだと?
仮死のオレの位置に正確に飛んでくる火魔法の火球。
すぐさま仮死状態を解除して素早く身をかわす。
なんだ?
どうやってオレの位置を把握している?
視覚でもない、熱感知でもない。
なにか、オレの知らない手段を用いているのだろうと思われる。
だが。
「種明かしは後回しだ!」
今の魔法ゴブの魔法攻撃は、大きなゴブという前衛を失った後衛オンリーの攻撃だ。
つまりは、いくらオレの位置がわかろうとも、魔法ゴブ自体は隙だらけという事だ。
そして、オレはとっても素早いウサギさん。
「あばよ」
オレの角は、魔法ゴブが魔法を詠唱しようとしている口の下、あごの下から脳天に向けて突き立てられ、その先端は頭蓋を貫通して頭頂部から姿を現すのだった。
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この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!
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