第23話 仮死の瑕疵

「『落とし穴』!」


 地面の土を除けて穴を掘る。


「『圧縮』!」


 除けた土をその穴にかぶせ、ぎゅーーっと圧縮する。




 今オレはとある魔物と戦っている。


 その相手は、カメムシ―― ではない。



 カメムシ野郎と対峙する前に、臭いを漏らさない土の塊を形成できるようにすべく、土魔法の熟練度をあげておこうと武者修行中だ。


 で、今土の塊で圧殺したのは、コボルドゾンビである。


 このゾンビ、脳を破壊しなければ倒せないらしく、頭部をぐちゃぐちゃにするか、首からスパッと切り離すかしないといけませんでした。


 首をスパッと切り離すには『牙』を使う必要があって、そうするとゾンビの腐肉が口の中に入ったりするのでとても嫌だったんです。


 かといって頭部を破壊するのも何回も『角』で突かなくてはならなくてとっても手間がかかっていたので、『土魔法』で圧殺してみることにしました。


 これならゾンビの頭部をメキャっとつぶせますし、土魔法の熟練度を上げることにもつながって一石二鳥です。


 いまのところ、圧縮した土からは腐汁とか腐臭とかが漏れてきていないのでそろそろカメムシでも大丈夫だと思うんです。


 あ、土魔法は『Lv2』まで上がりました。


 いやー、魔法って、なかなか上達しないもんなんですね。


 そして。


【コボルドゾンビを100体討伐しました。同一種族の100体討伐ボーナスとして、討伐種の特性の一部が付与されます。『2足歩行適応(極小)』を手に入れました。】


【『2足歩行適応(極小)』が統合されて、『2足歩行適応(小)』になりました。】


 コボルドゾンビを100体倒して、『2足歩行適応』が少し進化した。


 ゾンビだけあって他の能力は手に入らなかったが、ゾンビの能力が手に入っても微妙なものになりそうなのでまあこれはこれでいいとしよう。


 前足、いや、手の指をにぎにぎしてみる。


 肉球プリチーなオレの前足の指が、さらに器用になってきたようだ。


 まだナイフを握ったり鼻をほじったりまでは無理そうだが、順調に『ウサギ獣人』への進化の道を歩めているようだ。







◇ ◇ ◇ ◇



 発見。


 カメムシ君を見つけました。


 戦闘準備に入ります。


 

 臭い対策で距離を取るため、のたのたと木の枝に上ります。




 「『落とし穴』!」


 カメムシのいる地面の土を除けて穴を掘ります。


 カメムシが落とし穴に落ちました。


 たぶん、ヤツは攻撃を察知してこの時点で臭い汁を出してきます。


 だから急ぎますね。

 



「『圧縮』!」


 除けた土をその穴にかぶせ、ぎゅーーっと圧縮します。


 イメージは、カメムシをがっつり閉じ込めて潰すように。


 

  ブチョッ


 嫌な音がしました。


 そして、経験値が流れ込んでくる感覚があります。


 どうにか、臭いを封じ込めたまま倒すことに成功したようです!




◇ ◇ ◇ ◇







 【カメムシキングを100体討伐しました。同一種族の100体討伐ボーナスとして、討伐種の特性の一部が付与されます。『仮死擬態』を手に入れました。】

 

 よっしゃ!


 臭いを封じ込めながらカメムシ君を倒せるようになってから約一週間。


 そこらじゅうの落ち葉をめくってはカメムシ君を探し、静かに土に葬る作業を続けてまいりました。


 まさかお名前に『キング』が付くほどの魔物さんであったとはつゆ知らず、いろいろとご無礼をはたらいてしまったかもしれません。




・new!仮死擬態~カメムシキングを100匹倒して得た能力。任意で仮死状態となり周囲を欺く。


 そしてとうとう手に入れましたよ?


 大きなゴブの『熱感知』に対抗するためのスキルですよ!


 これでようやく、ゴブの集落をつぶしてなかなか進まないストーリーも進めることができそうです!


 いやー、長かったなあここまで。



 よし、今日のところは美味い草(薬草)食って、マイホームに帰って熟睡しよう。







◇ ◇ ◇ ◇



 おはようございます。


 とても気持ちの悪い夜ですね。


 夜行性の怪しいウサギ、ハクトです。


 

 わたしは今、因縁のあるゴブ集落の前に来ております。


 ご覧ください。


 ゴブの数がめっさ増えております!



 おかしいな?


 前回のアタックで結構間引いたはずなんだけれどな?


 たしか、最初は50匹くらいの集落だったから、今は半分以下にその数を減らしているはずなんだが。


 オレの『熱感知』と臭覚、聴覚から得られた情報によると100匹超えてますぜ?



 だが、まだ焦る時間帯じゃない。


 いくら数が多いとはいえ、そのほとんどは雑魚ゴブだ。


 「アサシンヴォーパルバニー」であるオレの敵ではない。


 なんたって、アサシン暗殺もすれば、ヴォーパルクリティカルもするんですよ?

 

 もう、これだけでオレの勝ちにしてくれてもよくない?


 しかも、『仮死擬態』なんてスキルも覚えちゃったんだぜ?



 よし、さっそく『仮死』に擬態して集落に殴り込みと行くか!






 「‥‥‥仮死状態だと動けないのね」


 新たな事実を突きつけたれたオレは、仮死状態を解除していつものように、体毛を黒くして闇に紛れながら足音を消して集落にのたのたと歩を進めるのであった。

 





ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


 もし、少しでも『面白い』『続きが呼んでみたい』等々の感想を抱いていただいたのであれば、作者のモチベーションに繋がりますので、★や♡での応援や、フォローやコメントをいただければ幸いです!


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