第20話 目指すべき姿

 うひゃっほう!


 テンション爆上り中のハクトです!



 なんたってあなた、獣人やエルフですよ?!


 この世界ではケモミミ獣人や亜人種が存在していらっしゃるのです!



 そしてオレは、『存在進化』が出来るウサギ。


 ということは、


 ここはラノベとかに出てくるファンタジーな世界であって、オレは、人間に進化できる可能性が爆上りしたという事を確認できたわけですよ!



 ん? 待てよ。


 この状況ならば、何も『人間』にこだわらなくてもいいんじゃないか?


 そう、今のオレはウサギなのだ。


 無理に人間になったら、ウサギの長所が消えてしまうかもしれない。


 だったら、『ウサギ獣人』を目指すのが理にかなっている!


 獣人であっても、人間社会の美食グルメを味わうことはできるだろう。



 よし!


 オレのこの異世界での目標は、『うさ耳もふもふ獣人になって、人間社会のグルメを味わい尽くすこと』で決定だーーーーー!






 ビュオン! ドガン!



 あぶねえ!



 ケモミミ獣人やエルフを発見して脳内活動がはかどっていたら、ドワーフさんにぶっとい斧で攻撃されていました。


 我に返り、今の状況を再確認する。


 そうだ、オレ、人間のパーティーの前に、テイムされる目的で姿をさらしてたんだっけな。


 で、その結果攻撃を受けていると。


 敵認定されたという事ですな。



 うーん、獣人への進化が現実的になった今、無理にテイムされる必要はないし、どうしましょうか?


 目の前に居るのは、ドワーフ男1、エルフ女1、ネコミミ女1に人間の男が2人に女が1人。


 『存在進化』の糧にするために殺っちゃうか?


 いや待て。こいつら結構強そうだ。



 目の前に立ちはだかるドワーフさんからは、集落に居た大きなゴブと同じかそれ以上のを感じる。


 さらに、その後ろの5人も同等な圧だ。


 まだ様子見なのか、全員の敵意はそれほど高まってはいないようだが、正面から戦ったらこっちがやられる未来が見える。


 よし、ならば。



キュ? キュキュ?ぼくわるいウサギじゃないよ?


  シュタッ



 媚びを売り、右前足で挨拶してからの―― 脱兎!


 あっけにとられている間に、オレは鬱蒼とした森の暗がりに逃げこみ、見事逃走は成功した。




 ◇ ◇ ◇ ◇


「‥‥‥なあ、今、魔物があいさつしなかったか?」


「ええ、あの前足を挙げる仕草、まるで知性を持っているみたいでしたね」


「むーん、今思えば、少し可愛い?」


「そうだな。プレッシャーに圧倒されたが、冷静に考えてみれば、最初の咆哮は何かおいらたちに訴えてきていたのかもしれん」


「えーー? ウサギがあいさつぅ? 何それきゃわいい!」



「うん、よくはわからんが、圧はともかくとして、少なくとも人間を襲うような個体ではないようだな‥‥‥?」


「そうですね。ロバルツが攻撃しても反撃してこなかったですし。」


「そうだよぅ、ロバルツったら、様子見って言ってたのに攻撃しちゃうんだもんっ」


「‥‥‥すまん。あの圧に耐えられなかった」


「じゃあさー、ちょっかいかけなきゃ危険はないんじゃないかにゃ?」


「むーん、そうだねえ。」



「いずれ、ギルドには報告しておこう。確かに強力な魔物だが、人間を積極的に攻撃してくる魔物ではないことをな。他の冒険者たちが下手にちょっかいを出して敵対されるとまずい」


「ええ、それが妥当ですね」



 こんなやり取りが為された後、Bランクパーティー『煌めきの狩猟団』の報告によって、ハクトは討伐対象から要警戒対象へとその危険度が下方修正されるのだが、ハクトには知る由もなかったのである。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 ふう。


 逃走成功。


 最後の前足シュタッでのご挨拶は結構インパクトを与えることが出来たようだ。


 だって、なんか皆さんあっけにとられていたからね。


 もしかすれば、今後はテイム目的で冒険者が現れてくれるかもしれない。


 だが、それはもういい。



 オレの目標は、すでに『獣人への存在進化』にシフトしているのだ。


 むしろ、テイムされてしまえば進化への道は閉ざされてしまう。


 なぜなら、自分がテイムしている魔物が突然獣人に変身したら絶対気味悪がられるし、人間社会でも噂になって生きづらくなることが目に見えるからだ。


 という事で、魔物狩りに全力を尽くすことにしていこう。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 ただいま、マイハウスの洞の中で作戦会議中。


 会議とは言ってもオレの脳内会議なのだが。


 ああ、オレはぼっちなウサギなんだな。


 ウサギは寂しいと死んじゃうんじゃなかったっけか?


 ああ、早く人間獣人になりたい。




 で、人間になるためだが。


 2足歩行の魔物を積極的に狩っていきたいところだ。


 だとすれば、やはりゴブ集落の攻略を進めたい。


 その為には、大きなゴブが持つ『熱感知』をどうにかする必要がある。


 その方法を考えろ。




 前回。


 オレの斜め上の思考で『死んだふり』を試みて危うく本当に死にかけた。


 だが、その発想は結構いいところを突いていたんじゃないのか?


 『死んだふり』はだめでも、『仮死状態』に自分の意思でなることが出来れば?


 そう考えたとき、オレの頭に前世の記憶がよみがえってきた。


 そうだ、あの魔物がいれば、その能力を得られるかもしれない。






ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


 もし、少しでも『面白い』『続きが呼んでみたい』等々の感想を抱いていただいたのであれば、作者のモチベーションに繋がりますので、★や♡での応援や、フォローやコメントをいただければ幸いです!




 

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