第19話 森での邂逅

 あーもう、やってらんねー。


 こんにちは。


 ゾンビの腐肉が口に入ってしまったハクトです。



 人間への『存在進化』を目指して、レベル上げと2足歩行の魔物を狩っていこうと決めた翌日にコボルドゾンビに遭遇して、一気にテンションが下がってしまった。


 なんで、こう、うまくいかないかなー。


 なんか、ひとつ壁を越えればまた新たな壁がすぐに立ちふさがってくる感覚ですよ。


 オレは美味い飯が食いたいだけなのに!


 なんで腐肉なんか口に入れなきゃならねえんだよ!




 あれ?


 人間に進化するために2足歩行の魔物を狩る?


 だったら、を狩ればいいんじゃね?



 いや待て待て。


 さすがにそれはまずくないか?



 落ち着けオレ。


 そもそも、オレが人間目指しているのは美味い飯が食いたいからだよな?


 人間殺して人間になったとして、それで食う飯が美味いのか?


 それに、人間を殺したからと言って人間になれるとは限らない。


 もしかして、真逆の方向で魔人とか悪魔とかに進化してしまうかもしれないじゃないか。


 そうなったら、もはや美味い飯どころではなくなってしまう。


 人間の生き血とか、血の滴る動いたままの心臓とか食いたくなっちゃうかもしれない。



 だから、人間狩り、ダメ。絶対!



 よし、オレはオレを論破した。



◇ ◇ ◇ ◇


 はむはむ。


 はあ、草うめえ。


 オレは自分を落ち着けるため、原点に戻って美味い草(薬草)を食べることにした。


 うん、草は確かに美味い。


 でも、やっぱり肉とか、ステーキとか、焼肉とか食いたいんだ。


 カレーやラーメン、お寿司にハンバーグ。


 よし、大丈夫だ。


 オレの食への探求心はまだ心の中で輝いている!



 

 そんなことを考えていると、なにやらオレの聴覚と嗅覚に反応がある。


 この気配は、人間だな。



 前回、女冒険者たちに逃げられてからというもの、とんと人間の姿は見ていなかったので久しぶりだな。


 さて、どうしよう。


 ダメもとでもう一度、『ボクは可愛いウサギさんですよ作戦』を実行しようか?


 でも、オッサンだらけだったら嫌だから、とりあえず姿を隠して様子を見るか。


 オレはウサギ体毛を迷彩柄に変化させ、森の奥で身を潜めた。




◇ ◇ ◇ ◇



「目撃情報があったのはこのへんか?」


「ええ。その通りですリーダー」



 

 『ケイテラレントの街』の冒険者ギルドに所属する女性だけのパーティー、『紅鎌団』の5人が目撃したという、『脅威度C+』に該当すると判断されたウサギの魔物。


 その調査、及び討伐のクエストを受注したBランクパーティー、『煌めきの狩猟団』の一行は、ここ『ドトフトの森』に探索に来ていた。


 このパーティーは、普段領都の『領都エーリアド』で主に活動をしており、領都のギルドでここケイテラレントからの応援要請を見てわざわざやってきたのだ。


 ケイテラレントの街に近いドトフトの森は薬草の一大群生地があり、そこに凶悪な魔物が出たという事で薬草採取に出るパーティーがいなくなり、そのために近隣の薬草やポーション類の価格が上昇しているという経緯があり、依頼料もそれなりの高額であったのだ。



「周辺に気配はないか?」


「むーん、なさげだねー」




 パーティーのリーダーと、その斥候だろうか。そんな会話が聞こえてくる。


 声や気配の感覚から、総人数は6人。リーダーは男性。最初に会話していた人と斥候の人は女性。他の3人は‥‥‥臭いからすると男性2の女性1か。くんかくんか。


 全員女性じゃないのは残念だが、男性だらけよりはましだ。


 周囲にテイムしているような魔物の気配はないから、このパーティーにもテイマーはいないのだろう。


 ん? でも、この臭いは?


 なんか以前に嗅いだ人間の匂いとはまた違う感じがする。


 なんだろう?


 視力がよくないので、この距離からはどんないでたちなのかよくわからない。

 

 よし、近寄ってみるか。



 気配を消して、足音も消してのたのたとそのパーティーに近づいていく。


 うーむ、まだよく見えないな。


 こうなったら、気づかれるくらいもっと近くに寄って、「キュ? キュキュ?ぼくわるいウサギじゃないよ?」作戦を決行しようか。



 ◇ ◇ ◇ ◇


 これまでに嗅いだことのない臭いの正体を確認すべく、男女3人ずつのパーティーに近づいていく。


 よし、一気に距離を詰めて、身体の色を白に戻して――



  ぴょーーーん



キュ? キュキュ?ぼくわるいウサギじゃないよ?




「「「「「ひいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」」」」


 オレの姿を見たパーティー一行は、突然現れたオレに驚いてしまった!




「うおおおおおおおおおお!!」


 そしてオレも驚いてしまった!


 どうしてオレまで驚くのかって?


 だってだって、


 そこには、


 ケモミミの獣人がいたからなんですよーーーー!!!!




 獣人!


 この世界には獣人が存在していた!



 ちなみに、そのパーティーの中には耳の長くとがったエルフと思われる人物や、背が小さいが体格の良いドワーフらしき人物も含まれていた。


 この異世界は、多種多様な亜人種が存在する、まさにファンタジーな世界だったのだ!



 ならば、


 可能なはずだ。



 あくまでも可能性があるとしか考えていなかった、人間への進化が!


 



 


ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


 もし、少しでも『面白い』『続きが呼んでみたい』等々の感想を抱いていただいたのであれば、作者のモチベーションに繋がりますので、★や♡での応援や、フォローやコメントをいただければ幸いです!



 



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