第16話 撤退

 戦いの中で戦いを忘れたオレ、白いウサギのハクトです。

 青い巨星ではありません。


 今、絶賛大きなゴブに苦戦中でございます。



 どうやらこの大きなゴブさん、『熱感知』というサーモセンサースキルを持っているみたいなんですよ。


 闇に紛れてアサシンキルを繰り返す予定だったのに、オレの居場所がしっかり把握されてしまってるんですね。


 で、他の雑魚ゴブの中に紛れれば温度センサーも攪乱できるんじゃないかって思ったんだけど、どうやらオレとゴブの体温が、心拍数の関係で異なっていることから容易に区別が出来るみたいでして。


 それを回避するためにどうすんの? ってことで、オレの導き出した答えが、『自分の心臓を止める!』って斜め上の答えだったので、それにセルフツッコミを入れたところまでが前回のあらすじだ。


 戦闘中にセルフツッコミですよ奥さん。



 こんな脳内での語りをしている間にも、大きなゴブのこん棒攻撃はオレの身体をかすめている。


 雑魚ゴブは順調にその数を減らして行っているのだが、このままではじり貧だ。


 なにより、こいつらの集団には魔法を使うやつもいるのだ。



 まだこの戦場に現れてはいないみたいだが、もしその魔法ゴブにも『熱感知』スキルがあったりしたらもはやお手上げだ。



 ん? そういえば。



 前世の知識を思い出すと、ウサギは突然パタッと動きが止まって「え? 死んじゃった?」ってなる時があるらしい。


 それは本来、リラックスできている状態の時にする行動のようなのだが、それを見ている飼い主からすれば、まるで「死んだふり」でもしているかのように見えるのだとか。


 ふむ、死んだふりか。


 どれ、ちょっと試してみるか。



   パタッ



 オレは突然動きを止めて、地面に倒れ込んだ!




   ドガ―ン



 大きなゴブはその場に正確にこん棒を叩きこんだ!



 「あっぶねえ!」



 間一髪避けました。


 冷静になって考えてみれば、いくら『死んだふり』したところで心臓は動いたままなんだから、熱感知に引っ掛かるのは変わらねえんだよなチクショー!



 ダメだこりゃ。



 この状態で魔法ゴブが来ちゃったら確実に詰んでしまう。



 よし、逃げよう。




 オレは囲んでいる雑魚ゴブを倒して包囲を抜け、脱兎のごとくゴブ集落を後にした。




◇ ◇ ◇ ◇


「はああああああああああ~(深いため息)」


 ゴブの集落から撤退した。


 川に行って、泥と血で汚れたウサギボディを洗い、マイハウスに戻ってきた。


 これからどないしよ。



 テイムされる作戦もダメ。


 強くなるためにゴブ集落殲滅もダメ。


 向かうべき方向性が見えてこない。



 むう。


 とりあえず、ステータスでも確認しておくか。




名前:ハクト(ネームド)

種族:ホーンラビット(転生者)


レベル:7→9

HP:30/30→38/38

MP:21/21→32/32


STR:15→21

ATK:38→46

SPD:48→58

VIT:20→28

DEF:21→27

INT:38→49

RES:18→22

DEX:26→32

AGI:52→64

LUK:89

魔法:なし

スキル:

・ラビットイヤー~ウサギ固有。聴覚が鋭敏となり周囲の気配や敵意に敏感になる。


・ラビットアイ~ウサギ固有。近眼。視野360度、暗視(中)、2色カラー。


・ラビットノーズ~ウサギ固有。嗅覚プラス補正。探索、索敵効果。


・脱兎のごとく~ウサギ固有。逃走時敏捷と速度にプラス補正。


・くいだめ~胃の許容量を超えた食事を100回越えたことによる能力。食いだめが出来る。食いだめ中は敏捷と移動速度にマイナス補正。戻すと戻る。


・好物最後残し~イチゴのショートケーキのイチゴを最後まで取っておいた回数が100回を超えたことによる能力。最後に残した好物の旨味に上昇補正。


・食通の勘~味覚で幸福を感じた回数が100回を超えたことによる能力。可食なもの、美味なものを察知する勘が働く。


・聞き耳~周囲の会話の中から興味グルメのある事柄を100回聞きつけたことによる能力。周辺の音に敏感になる。


・消化促進(強)~スライムを100体倒して得た能力。消化が促進され、毒素等の解毒能力も強化される。


・暴食(小)~スライムを100体倒して得た能力。従来可食できなかった者でも消化吸収が可能になる。


・消音移動(強)~スネークを100体倒して得た能力。発動時は移動の際の足音を消し聴覚では感知されにくくなる。


・熱感知(小)~スネークを100体倒して得た能力。五感以外の感覚器で熱源の探知が出来る。



 うん。雑魚ゴブを一定数倒したことによってレベルが二つ上がっている。


 ステータスの上り幅も、1レベルアップあたりの増加値がだんだん増えてきていい感じだな。  


 『消音移動』も手に入れて隠密性は増したが、『熱感知』を持つ相手には通用しないことは分かった。


 どうにかしてあの大きなゴブに対抗する手段を模索したい。


 うーん、AGTの上昇で蝶のように舞って蜂のように刺す作戦をとるしかないのか。


 それにしても、今回は取り巻き雑魚ゴブが邪魔だったから、最低でも大きなゴブと1体1という条件を作らなければならないし、魔法を使うゴブの能力が未知数という不確定要素が痛い。



 うむ。やはり地道にレベルを上げるしかないのかな。




 


  

ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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