第15話 特攻! ゴブ集落!

 ゴブ集落の入り口。


 前回の襲撃の件があったからなのか、見張りの数が増えている。


 入り口に門番4体、巡回も4体。


 前の時みたいにボケーッと突っ立っているのでなく、真剣に周りを警戒している。



 だが、こっちも前と同じではない。


 オレの愛くるしいホワイトボディーが闇夜で目立たないよう、体中に泥に塗れさせている。


 さらに『消音移動(強)』で足音を消し、『熱感知(小)』でゴブどものいる所を特定できるのだ。


 もはや、オレは闇に紛れるアサシンラビットである。種族名変わってないよね?




 気を付けるべきは攻撃の後。


 攻撃手段がつのでの刺殺しかないから、どうしても攻撃時には身体を密着させることになる。


 その時に、前回のように体をつかまれてしまえば全くの無防備になってしまうからだ。


 攻撃時には掴まれない様に正面から行かないこと。


 そして、突き刺した角を素早く抜くために後足で相手の身体をキックする動きが重要だ。


 この、刺した後の『キック離れ』はたくさん練習したから大丈夫だろう。



 さて、ゴブどもの血祭りを始めようか。




◇ ◇ ◇ ◇


 まずは巡回している巡ゴブたちから。


 背後から近寄って、背中から心臓を一突き!


 すぐに後ろ足で刺さった角を抜いて、すぐさま闇に姿を隠す。


 いくら急所を一突きとはいえ、絶命までに数秒のタイムラグはあるのでどうしても断末魔の声が漏れてしまう。


 断末魔を聞きつけてもう一体の巡ゴブが現れる。


 今度は、断末魔を防ぐために心臓ではなく肺を突く。


 もう片肺が残っているため、無音とはいかなかったが肺活量が半分になったことで声量は抑えられた。


 だが、絶命までかなりの時間がかかるため、さらに心臓を突いて介錯する必要があり、手数が2倍かかることになってしまう。


 まあ、敵が単体の時はいいが、乱戦になったら心臓一択だな。



 続いて、最初の巡ゴブの断末魔を聞いた他の巡ゴブと門番の合計6体が駆けつけてくる。


 背後に回って心臓を突き、直ぐに離脱して身を隠す。


 それを繰り返すことで、結果相手に一度も視認されることなく6匹のゴブどもを倒すことに成功した。

 


 うん、ここまでは順調。



 だが、すでに集落の中はあわただしくなっており、こちらに向かっているゴブどもの足音が多数聞こえてくる。


 そのゴブ集団の先頭に、周りより一回り体の大きいこん棒を持ったやつがいた。


 多分、前回オレをぶん殴ってくれたのはこいつだろう。


 オレはゴブどもに踏みつぶされないように注意しながら、迫りくる集団の背後に回る。



 「ゴフッ!」


 「ゴブッ!」


 「グギャーー!」



 『熱感知』は(小)なのでそれほどの精度はないのだが、さすがにすぐそばに行くと心臓の位置まで丸わかりで心臓突きがはかどっている。


 感覚的に把握できるので、狙いを定める時間も必要とせず次々と仕留めていく。


 集団の後方に居るゴブどもを半分ほど屠ったところで、身体の大きいゴブがオレの方に向かってこん棒を振り下ろす!



 ドギャン!


 そのこん棒は、さっきまでオレがいたところの地面を激しく叩き、土砂が周りに巻き上がる。



「なんで、こいつはオレのいる位置がわかるんだ?」


 闇夜に紛れて足音も立てていないはずなのに、大きなゴブはほぼ正確にオレのいる所にこん棒を打ち付けてくる。


 その合間を縫って他のゴブを仕留めるが、今度はその瞬間を狙って、オレの角が刺さったゴブごと叩き潰そうとこん棒を振り下ろす。


 哀れ、一体のゴブは上半身が爆散している。どんだけパワーあるんだよ!


 正確で、破壊力のある攻撃。


 幸いにも、その攻撃速度はそれほどでもないために余裕で躱すことが出来てはいるが、一瞬でも動きを止めればその攻撃はオレの頭をたたき割るであろう。


「くっ! ここは根比べだな!」


 他のゴブを倒しながら、大きなゴブの攻撃をかわす。


 そんな動きを繰り返しているうちに、オレの拙い視覚も仕事をして、どうやら大きなゴブの視線がオレの姿を追っていないことから、どうやら視覚以外の情報を得てオレの居場所をしているようである。



 感知?



 そういえば。


 オレはスネークを100体倒して『熱探知』のスキルを手に入れた。


 もしかしてこいつも。


 ヘビさんを100匹倒して、『熱探知』のスキルを所持しているのではなかろうか?


 と、なれば戦い方を変えなくてはならない。



 こいつは果たしてどんな手段を使っているのか、周りのゴブの『熱』とオレの『熱』とを区別している。


 周りのゴブの数が多かった時も、少なくなった今も変わらずオレの居場所を把握している。


 その手段とはなんだ?


 『熱感知』だったら、なぜオレとゴブの熱の違いを把握できる?



 考えろ考えろ。


 ゴブとウサギの違いは何だ?




 はっ!


 心拍数か!


 ウサギの心拍数は、一分間に約150回。


 ゴブの心拍数なんぞわからないが、人間型の魔物であるからには人間に準じて60くらいなのかもしれない。


 通常の状態でも心拍数が2倍もあるのに、こうして戦闘状態にあるのならばその差はさらに開いているだろう。


 その差が体温の違いとなって、大きなゴブのサーモセンサーに引っ掛かっていると思われる。





 よし、ならば!



 オレの心臓を止めれば、こいつに感知されることはない!




 って、自分の心臓止めてどうすんじゃい!




 オレは、戦いの中で戦いを忘れていた‥‥‥。




 

 





ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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