第14話 暗殺ウサギ誕生

 うーむ、どうしようか。


 オレの『テイムされておもてなしされてグルメ三昧大作戦』はどうやら失敗に終わったようだ。


 逃げて行ったあの女性冒険者パーティーたちの様子から言って、どうやらオレは恐れられてしまったようだ。


 おそらく、街なり村に戻ってからはそのことを周囲に話して回るに違いない。


 となると、オレは『可愛らしくて冒険にも連れていきたいテイム対象』ではなく、『人間が総力を挙げて討伐する対象』になってしまっているかもしれない。


 まあ、もしかすれば『強い仲間が欲しい』と思っているテイマーが訪れてくれるかもしれないが、それはいささか希望的観測にすぎるだろう。


 作戦の変更が求められるな。



 と、いう事で思考はぐるぐるとめぐり、最初の所の「どうしようか」というところまでループする。





 あ、そういえば。


 あの女性冒険者たちは、薬草カゴのほかにもいくつかのアイテムを落としていった。


 その中には、この辺にある街を中心にした周辺の地図も含まれていた。


 その地図によると、この森は『ドトフトの森』という名前であり、そのそばにある街は『ケイテラレントの街』というらしい。


 うん、人間の文字も問題なく読めたね。


 日本語じゃなくても意味が解るこの不思議よ。


 地図の中には、メモのように殴り書きされた情報も書かれており、薬草の群生地、近づいてはいけない森の奥のオーク群生地といった書き込みも見られる。うん、参考になるね。




 そして!


 彼女らが落としていったのはそのほかにもありまして。


 なんと! 異世界モノの定番と言ってもいいでしょう。


 干し肉です!




 はい、食べましたよ?


 いやー、この異世界に来て初めてのお肉ですね!


 肉は美味いでんなー。


 草食であるはずのウサギが肉を食えるのは、魔物だからなのか元人間だからなのか。


 いずれにせよ、やっぱりこの世界で生きていくうえで『食の探求』は生きる目標となることを再確認させられた。



 なんせ、塩漬けでしょっぱいはずの干し肉でさえ美味く感じたのだ。


 干していない焼いた肉なんてもっと美味いと想像できる。







 どうする?


 もっとレベルアップして、街を攻め滅ぼして食料をあさるか?


 仮にそれが可能だとしても、それをすれば街や村などを一つ一つ、まさに食いつぶしていくことになり、全く生産的ではない。


 オレはどこの魔王なんだと言いたい。



 それに、人間を舐めてはいけない。


 奴らは弱いやつは弱いが、強いやつはめっぽう強いはずだ。


 それこそ、異世界というからには勇者だの賢者だののとんでもない存在とか、それに準ずる各国や地域ごとの英雄なんてものも綺羅星の如く存在するに違いない。


 そんなのを相手にすれば、オレの方が消し炭、もしくはヤキニクウサギにされてしまうのは明らかだからな。




 とりあえず、地図とかの戦利品? をマイハウスに運び込む。


 薬草のカゴをどうにか背負おうと試みるも、やはりウサギの身体では無理だった。


 しょうがないから、カゴの中に地図なんかを放り込んだまま口で咥えてズルズルと引きずっていく。


 さすがに木の洞の中にまでカゴは持ち込みできなかったので、どうにかこうにか木の枝に引っ掛けておいた。


 オレの身体では使いようがないのだが、人間の作る文化的な道具は貴重なため手元に置いておきたい。


 地図とか薬草採取用のナイフとかは洞の中に置いておく。


 もしかしたら何かに使えるかもしれない。


 前世でもモノを捨てられなかったハクトです。

 



◇ ◇ ◇ ◇


 ――翌日。


 昨日のテイム失敗? のことは忘れよう。


 何があろうと、何を目指そうとも。


 目の前の今日を生き抜くことが最優先なのだから、それに集中しよう。



 美味い草(薬草)を探して草を食み。


 マイホーム周辺のスライムやスネークを狩りつくし。


 少し足を延ばしては、角狼さんや牙狼さん、はぐれゴブを血祭りにあげたりという生活を1週間ほど続けていた。


 そんなある日。




【スネークを100体討伐しました。同一種族の100体討伐ボーナスとして、討伐種の特性の一部が付与されます。『消音移動(強)』、『熱感知(小)』を手に入れました。】


 おお、いつの間にかヘビさんを100体倒していたようだ。 


 

new!・消音移動(強)~スネークを100体倒して得た能力。発動時は移動の際の足音を消し聴覚では感知されにくくなる。


new!・熱感知(小)~スネークを100体倒して得た能力。五感以外の感覚器で熱源の探知が出来る。




 手に入れたスキルは、どちらも有用なものだった。


 夜行性ウサギであるこのオレ、ハクト君。


 夜間に足音消して移動できたらもう忍者っしょ!


 音や匂いのほかに熱探知で敵の位置知れるなんて、狩り放題っしょ!




 オレはこれらのスキルを手に入れたことにより、とある行動を起こすことを決意するのである。





 ◇ ◇ ◇ ◇

 


 という事で、やってきましたゴブ集落。


 ふっふっふ。


 以前に殴られ焼かれ、まさに因幡の白兎状態にまで追い込んでくれたゴブどもめ。


 ウサギは怒らせると怖いという事を、命を持って思い知らせてくれようか!





ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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