第12話 あざといウサギ

 ぴょん。


 ボクはかわいいウサギさんだよ!



 うん、完璧だ。




 ゴブに焼かれた身体も美味い草(薬草)のおかげで回復し、今のオレは絶好調だ。


 焼かれたウサ毛も元通り生えそろい、川で何回も洗ったからつやっつやのビューちぃふぉーなウサギさんだ。



 川面に映る自分の姿を確認しながら、小首をかしげる仕草の練習に余念がない。


 え? 何してるのかって?





 うん、それはね。


 ゴブたちと死闘を繰り広げて強くなるのもいいけれど、とっととテイムされてしまえば楽になれるんじゃね? って思い直したんだ。


 テイムされる為には強くならなければなんて思っていたけれど、やっぱりウサギって強さよりも可愛さ勝負じゃないかってね。


 ってことで、人間の前にこのプリチーぼでぃーで可憐にあざとく姿をさらし、このオレをでたいと思わせる作戦にシフトしたわけですよ。



◇ ◇ ◇ ◇



 と、いうことで人間の匂いを探りながら森の中を探索。


 探索途中に見かけたスライムとかはしっかりと仕留めていく。


 この辺にはヘビさんの魔物も結構いて、木の洞マイハウスに侵入されると嫌なのでこちらも狩っていく。


 普通のヘビと魔物のヘビスネークとの区別が紛らわしいが、やっぱり魔物の方は気配が禍々しいというか、肌で感じる脅威度が異なるのを感じる。


 ヘビさんの攻撃は噛みついてくるか巻き付いてくるかのほぼ2択なので、巻き付きはウサギの俊敏性で躱し、噛みつきに来たところにつので迎撃。


 たまに蛇の毒牙どくきばから漏れ出た毒が目に入ってのたうち回ったが、ちょっとまずい草(毒消し草)を食んで治療した。


 あ、毒消し草の情報は人間を探しているうちにゲットできたよん。



 で、人間探しの方だが、時折美味い草(薬草)を採取していたり、スライムなりゴブなりを狩っている数人の集団を見つけてはいるが、そいつらはスルーした。


 なんでスルーしたのかって?


 だって、むっさいおっさんとかにテイムされたら嫌じゃないですか。


 ひげじょりじょりの顔に頬ずりとかされたら地獄ですよ。


 つまり、そいつらは男性だけのパーティーだったので、オレは戦略的撤退と相成ったわけだ。


◇ ◇ ◇ ◇ 


 

 そんな日々を繰り返し、ようやくその日が訪れた。


 目の前で薬草を採取しているのは女性だけが5人いるパーティー。


 一人ごつい女が周りの警戒をしているが、どう見てもこいつは戦士系だからテイム能力は持っていないだろう。


 残りの4人の中にテイマーがいる確率は低いが、試してみないことにはわからない。



 

 ということで。


 


 ぴょん。


 ボクはかわいいウサギさんだよ!



 警戒に当たっているごつい女と目が合う。


 こいつに愛想を振りまくのは若干不本意だが、他の4人の気を惹く為には、まずはこいつに気付いてもらわないといけないから仕方がない。



キュ? キュキュ?ぼくわるいウサギじゃないよ?



 オレは精いっぱいの可愛さを振り撒く。


 戦士っぽい女がオレの方を向いて動きを止める。



 そして、その女戦士は――



「キャーーーーーーーーーーーーーー!!」



 なんと、大音響で悲鳴を上げた。


 体格の割に可愛い声での悲鳴であった。


 ちなみに、この場合の「キャー」は、『可愛い!』とかそういう類での「キャー」ではなく、驚き恐れおののいた場合の方の「キャー」であった。


 その悲鳴に反応した他の4人も、オレの方に視線を向けてオレの存在を確認する。





キュ? キュキュ?ぼくわるいウサギじゃないよ?


 恐怖の悲鳴を上げられたのは不本意だったが、他の4人の視線を浴びたこの時をチャンスとばかり、オレはあざとく首を傾げ、とても愛くるしいつぶらな瞳で可愛いオーラを送信する。



「「「「キャーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」



 え?


 みんなしてその反応?


 ボクは可愛いウサギさんだよ?


 ぼく、悪いウサギでもないよ?





「なんとおぞましいつのだ! 危険だ! 下がれ!」


「くっ‥‥‥! 森のこんな浅いところにこんな凶悪な魔物がいるなんて聞いてないぞ!」


「どうする?! 私たちじゃおそらく歯が立たないぞ!」


「ハミイ! お前は街に走ってギルドに報告しろ! こいつが街に来たら大惨事になる! 応援はいらん! あたいたちが命がけでこいつを抑えているから、街の防御を固めさせろ!」 


「は‥‥‥はいっ! みんな! 死なないで!」


 女冒険者たちは、そんなやり取りをすると一人が街の方に走り他の4人は遠巻きにオレを取り囲みはじめる。




 えーーーーーーーー?


 何この反応――?!



 こんなにプリチーなウサギに対してなんて失礼な!



 「キュ! キュ!」


 オレは今からでも状況を巻き返すべく、さらに可愛さをアピールする!




「ひいいいいいいいい! なんて恐ろしい咆哮だ! みんな! 大丈夫か?」


「恐慌状態‥‥‥? いや、大丈夫だ! レジスト出来たのか?」


「大丈夫だ! 身体は動く‥‥‥はっ! もしかして、仲間を呼んだのか?!」


「『状態異常回復』! 『防御力アップ』! あとは、えーと、えーと」




 ダメだこりゃ。


 やることなすこと裏目に出るパターンだな。



 ちょいとイラっとしたので女戦士に八つ当たりアタックでもしようかと思ったが、意外にかわいい声をしていたので勘弁してやる。


 このままここに居ても事態は改善しないと判断したオレは、踵を返して森の奥へと姿をくらました。



 ちくせう。

 



 

ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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