第11話 ウサギ焼かれる
ゴブ集落の入り口。
そこには、見張りに残ったゴブ1体がそのまま見張りを続けていた。
巡回に行った相棒が戻ってこないことになんの疑問も持っていないようで、普通に槍のようなものを持って突っ立っている。
こいつは楽に殺れるかもしれない。
あとから思えば、巡ゴブをあっさり仕留めたオレはこのとき調子に乗っていたんだ。
そういうのって、その場その時には自覚できないのって本当さね。
で、オレはさっきの成功体験をもとに、自分自身を囮にして見張りゴブを誘い込もうと自分の姿をさらした。
「グギャッ!! ギャッギャッギャッーーーーーーー!!!!」
なんと、見張りゴブはオレの姿を見るなり大声をあげて仲間を呼びやがった!
今にして思えば、オレは巡ゴブの返り血を浴びておぞましい姿だったのだろう。
さすがに血まみれのウサギを見て素直に獲物にしようとは思わなかったようで警戒されたと思われる。
その時に脱兎のごとく逃げるべきだったのだが、めっさ動揺したオレは仲間を呼び続ける見張りゴブに飛び掛かって心臓を一突きしていた。
「ゴブゥウウアアアア!!!」
見張りゴブを仕留めることはできたが、さらに大きな声での断末魔を放たれてしまい、しかもゴブの両手はオレのプリティーボディをがっしりと掴みやがった。
オレの角は見張りゴブの心臓につき刺さったまま抜くことも出来ず、さらに身体をつかまれて身動きが取れなくなってしまった!
「やべえ!」
逃げるに逃げられない状況に陥ったその時、さっそく駆けつけてきた戦士っぽいゴブの一撃がオレを襲う。
ドギャッ!
可愛いウサギににつかわないような鈍い音と共に、オレはこん棒で殴り飛ばされる。
おかげで見張りゴブの拘束からは抜け出せたのだが、脳が揺らされたのかたたらを踏んでしまう。
体中もひどく痛い。
どうにか顔を上げたその時、
火の玉が飛んできた。
「あっちいいいいいいい!」
え? オレ、焼かれてる?
殴られた痛みに加え、突然の身を焼く熱さと痛みで意識が飛びそうになりながらも、今の状況を客観的にとらえている自分に驚く。
そこで本能が警鐘を鳴らし、オレは無意識のうちに脱兎と化す。
ゴブどもが追ってくる音と気配を感じつつも、体力の限り逃げ続けてある程度の距離を走ると茂みに身体をうずめて身を隠す。
オレ本来の白いボディーだったらすぐに見つかっていたかもしれないが、オレのビューティフォーな真っ白もふもふウサ毛が焦げて黒色になっていたから見つからなかったのかもしれない。
その後、夜が明けて周りからゴブの気配が消えてからようやく状況を検証するとともに、自分の状態を冷静に観察する。
オレを焼いた火の玉は、おそらくゴブリンの魔法なのだろう。
前世の記憶では、ゴブの中にもゴブリンソーサラーとかゴブリンマジシャンとか魔法を使える個体がいたはずだ。
油断した。
ゴブどもを甘く見過ぎていた。
今のオレは、毛をむしられて血まみれの傷だらけになった、まさに因幡の白うさぎそのものだ。
こんな見た目では、不気味がられて人間のテイマーにテイムしてもらうこともできない。
まずは、身体の傷を回復させなくては。
たしか、因幡の白兎の物語では、こんな状態のウサギに性格の悪い
八十神たちには、『海水で体を洗って、風に当たって乾燥させろ』とか騙されて塩水で悪化して風に当たって肌がひび割れたりしたんじゃなかったっけか。
まあ、この異世界には八十神はいないだろうし、神が通りかかるという事もないはずだ。
当然、正しい情報を教えてくれる
「えーと、たしか川の水で体を洗って、
別に物語の通りに行動する必要は全くないのだが、川の水で体を洗うというのは、火傷を冷やしたり、傷口を洗ったりと理にかなっているためその通りにしたいと思う。
痛む身体でのたのたと移動し、どうにか川で水浴びを行った。
傷にしみるぅ~!
で、蒲の穂の花粉が薬になると。
蒲の穂蒲の穂‥‥‥
どこにあるかわかんねえよ!
まあ、そこにこだわる必要はねえ。
異世界ならではの治療法、薬草(美味い草)をはむはむしながら、身体をこすりつけて草の汁を体に擦り込む。
うん、大部楽になってきたな。
あまり食い過ぎると『食いだめ』のデバフが発生してしまうためほどほどに腹を満たして、木の洞にあるマイホームにようやくたどり着く。
「ステータスオープン」
名前:ハクト(ネームド)
種族:ホーンラビット(転生者)
状態:火傷(重症)、打撲(中度)
レベル:7
HP:4/30
MP:21/21
STR:15
ATK:38
SPD:48
VIT:20
DEF:21
INT:38
RES:18
DEX:26
AGI:52
LUK:89
魔法:なし
おおう、HPやべえ!
もう一発、こん棒なり火魔法なりくらっていたらゴブどもの食料と化してしまっていたところだ。
んー、もっと慎重にならんといかんな。
ーーーーーーーー
この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!
もし、少しでも『面白い』『続きが呼んでみたい』等々の感想を抱いていただいたのであれば、作者のモチベーションに繋がりますので、★や♡での応援や、フォローやコメントをいただければ幸いです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます