第10話 はじめてのゴブリンキル

 集落の見張りをしていた2体のゴブリンのうち、1体がその場から離れて行った。


 巡回なのかトイレなのかはわからないが、これはチャンスだ。


 オレは息をひそめて、そのゴブリンの後を追う。




 巡回しているゴブリン、略して巡ゴブは、やはり巡回なのか周囲を見渡しながら集落の周りを歩いていく。


 見つからないよう、巡ゴブの視界に入らないよう、慎重に。



 確かに巡ゴブは単独行動ではあるのだが、いかんせん集落に近いところを歩いているため、もし大声とかを上げられたらすぐに他のゴブどもが駆けつけてくると思うとなかなか仕掛けられない。


 決め手のないまま後をつけていくが、決定機は訪れそうにない。



 待てよ。


 すっかり獲物を狙う人間の思考になっていたが、今のオレは可愛いウサギさんだ。


 人間が姿を見せれば警戒して仲間を呼ぶだろうが、果たしてウサギ一匹を見つけて同じことをするだろうか?


 もしもオレが巡ゴブの立場だとしたら、おいしそうな可愛いウサギを見つけたら、その場で狩って自分だけで食べようとするんじゃないのかな?


 そうだ、オレ自身を囮にしよう。



 そう決めたらオレの行動は早い。


 巡ゴブの斜め後ろあたりで、わざと草むらをガサガサさせ、オレの白いプリチーボディを曝け出す。


 案の定、オレを見つけた巡ゴブは粗末な槍を構えてオレの方に駆け寄ってきた!


 

  チャーーーンス!



 巡ゴブを完全にいてしまわない様に、適度な距離を保ちながら逃走し、集落からある程度離れたところで反転し、心臓の音をウサギイヤーで確認し、その位置を正確に把握して狙いを定める。


 ぴょーん


 ぐさっ



 グギャーー!



 角で心臓をひと突き!


 息絶えるまで若干の時間があり、断末魔を叫ばれてしまったが集落からある程度離れているため多分大丈夫だろう。




 巡ゴブは胸からドクドクと血を流しながら絶命している。


 ゴブリンの肉って美味いのかな?


 いや、いくら『暴食』とか『消化促進』とかがあっても、どう考えてもまずそうだし、さすがに食う気にはなれないな。


 食べないことは決定事項として、ゴブリンって倒した後、どうすればいいんだっけ?


 たしか、ラノベとかでは魔石を取り出したり、お金を奪ったりとかしていたな。


 お金は‥‥‥うん、コイツは持ってないね。


 そもそも、ゴブが金持っててもどこで使うんだよって感じだよな。


 光り輝く金貨とかなら珍しいものとして宝物にする可能性もあるが、汚れてくたびれた鉄貨や銅貨なんて持ち歩こうとは思うまい。


 となれば、あとは魔石か。


 ゴブリンの胸のあたりを前足でたしたしして体内からの反響音を確かめる。


 うーん、ねぐら探しの時も思ったけれど、この反響音探知便利だな。


 まるでソナーとかエコー検査みたいな使い方が出来ているからね。



 で、ゴブの体内エコー検査の結果だが、うん、石みたいなのが心臓の横あたりにあるね。多分これが魔石だろう。まさか胆石が胸にあるとは思えない。


 で、これをどうやって取り出すかだが‥‥‥。


 解体用のナイフなんてウサギであるオレは当然持っていないし、仮に持っていたとしてもこの可愛いウサギの前足ではナイフを操ることなどできない。


 はっ! ステータスのDEX値がそんなに高くないのはこれが原因か!



 気を取り直して、ではどうやって胸を切り開こうか。


 オレが持っている刃物と言えば、この額にある雄々しいつのだが、これは突き刺すことには長けていても、切る事には向いていない。

 

 角をグラインダーで削って刃物のようにすれば切ることも可能だろうが、そんなものはないし、もしあっても痛そうだからやらないが。


 んー、どうしよう。



 とりあえず、角で魔石周辺をグサグサ突いて、穴をたくさんあけて、点を繋いで線にしようと試みる。


 ひとしきり突いて傷口を広げ、ようやく姿を現した魔石を体内から前足ですくい上げる。


 うん、とってもスプラッターな状況になってしまったな。



 で、どうにか魔石を取り出したわけだが、この魔石ってどうするんだっけ?


 確か、冒険者ギルドに持って行って換金とか‥‥‥ウサギはギルドに行けねえな。


 魔道具を作ったりとか、魔道具を動かす電池みたいに使ったりもしていたが、魔道具なんてものもない。


 ならば、持ち帰って貯めておいて、何か機会がある時まで取っておこうか‥‥‥って、運ぶ手段がねえ!


 口に咥えれば何とかなるかもしれないが、きちゃないゴブ魔石を口に入れたいとは思わない。


 結局、苦労して取り出した魔石はそのまま放置して、再度ゴブの集落入り口まで戻るのであった‥‥‥。






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 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


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