第9話 ユニークスキル『建築士』
「きゃあああああ!!」
俺は、見てしまった。リサのソメイヨシノのような薄く控えめな桜色の乳頭とお腹の下の無駄な怪我いったさいないなだらな恥丘を。くっきりと、ハッキリと、見てしまった。
「なにジロジロ見てるのよ! 変態!!」
リサは髪の毛を数本抜くと、いつのまにか逞しくなってしまった我が息子を根本から「ギリリ!」と縛り付ける。
「ぎゃあああああ!!」
俺は、あまりの恐怖に、すぐよこにある2つの球体は「キュキュ」と縮み上がる。
「頼む! 許してください。悪気はなかったんだ。まさか入浴中だったなんて……」
「本当に? 見てないわよね!! ワタシの身体!!」
「モロチン!! じゃない、モチロン見ていないよ!」
「だったらバスルームから出て! いますぐ!!」
「はい! わかりました!!」
俺は大急ぎでバスルームを逃げ出す。すると我が息子をギリギリと縛り上げていた銀色の髪の毛が「はらり」と落ちる。
あ、あああああ危なかった! 危うく息子に先立たれるところだった。
俺が四つん這いのまま「はあはあ」と息を荒げていると、「ふわさ」と、身体に布覆いかぶさる。
「とりあえず、それでオゾマシイものを隠して頂戴!!」
振り返るとそこにはバスタオルを巻いたリサが立っていた。
俺は言われるがまま、モゾモゾとバスタオルを巻いているとリサが話しかけ来る。
「神格レベルを召喚するユニークスキル持ちがこの街の宿屋にいるって聞いてやってきたけれど、アナタ、情報を持っていない?」
「ユニークスキル?? それ、多分俺のことだと思うけど」
「ほんとう? その女神って『正義の女神』よね!」
「いや? 彼女は転移執務室のおねーさんだけど。そういえば、正義がなんちゃらとか言っていたような」
「ビンゴ! ってことは、あなたひょっとして『ベンゴシ』じゃない??』
ベンゴシ? そんな言葉この世界で聞いたことがない。
つまりは……弁護士。間違いない、リサも元の世界からの転生者だ。
「いや、俺は弁護士じゃない。宅建士だ」
「は? 宅建士って不動産取引の資格よね? なんで『正義の女神』を呼び出せるの?」
「コッチが聞きたいよ。なんでも、家賃や物件の費用を延滞した相手に行使できるらしい。実際に今うちで買っているウシとヤギが、懲役刑で変身させられた」
「? うーんなんだかよくわからないわね。でもまあ、それを言ったら私もそうか……なるほどなるほど」
リサはウンウンとうなづきながら、ひとり納得している。うん、これでもう確定だ。俺はリサに質問する。
「リサ、あんたも、転生者か? 転移執務室のおねーさん……じゃない『正義の女神』にこっちの世界につれてこられた」
「そうよ」
「てことは、髪の毛を使った魔法って何かの国家資格だったりする?」
「ええ。私は建築士よ。空間を設計する能力がユニークスキルにつながっているってとことかしら」
うーん。なんだかよくわからない理屈けれども、なんだかよくわからない具合で言えば、俺のユニークスキルの方がはるかに高いしな。気にしてもしょうがないのかもしれない。
「とりあえず、あなたとは仲良くやっていけそうね」
そう言って、リサは手を出し、俺はそれに応じる。
「確かに、おたがい異世界転生者どうし、なかよくやっていこう」
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それから3ヶ月後。俺は、リサを疑い始めていた。
何故って? それは、金貨2枚まで出すと言っていた一軒家の支払いを、彼女が一向に払う気配を見せなかったからだ。
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