第34話 人材

「……」


 考える。これから先、必要になる人材のことを。

 まず思い浮かぶのは史実の闘争において活躍した人々のこと。

 大体が人間側の存在であり、そもそもまだ子供だったり生まれてすらいない人物が大半だから意味がないでしょうね。

 だけど……『原作ゲーム』の世界において、仲間になるキャラクターは主人公含めて合計15人いるんです。

 その中には選択肢によって仲間になるかならないかみたいな人物もいるんですよ。

 というか、主人公とメイン級ヒロインと親友枠のキャラクターの三人を除けば、全員がそれ。

 最低限7人は揃うようにできていましたが……そんな人々の中には魔族だったり、老人だったりもいましたね。

 それと、一人だけ劇物になりかねない人も。

 

 魔族の方は隠遁した厭世観溢れる賢者といった人物です。

 『世界の秘密を教えてやる。我らも知らない秘密も知れる。だからついてこい』とでも言えば、いつかはついて来てくれる……と思います。

 戦闘力もさることながら、ブレーンとしてはさらに優秀でしょうね。

 偏屈なのに意外にも理想主義者というか、人間と魔族の民族融和を目指すような方ですので少し不安ですが……史実の陛下のように憎悪で曇っているわけではないから、可能性としては仲間になるのは全然あり得るでしょう。

 

 老人は傭兵であり、この時代ではまだ50代になっているかならないかくらいでしょうけど、強さで言えばかなりのものです。

 人間ながらも魔界で傭兵として働いていた過去も語られていましたので……仲間になる可能性は高いと言えましょう。

 もっとも、探し出せればの話ではあるんですけどね。既に名前だけは聞いています。今は東国ビンルインで傭兵として暴れ散らかしているらしいですから、彼の国を平定する際に引き入れれば良いかなと思っています。

 あるいは、不利と見てなにもせずともこちら側に付くかもしれませんね。


 原作では陛下のやりようがあまりにも無体だったために離れたようですが、この世界ではそうなることはまずないでしょうからそこも安心。

 ……できれば俺の配下として欲しいですね。


 問題は最後の一人。

 ゲームにおいてはランダムイベントでしか仲間にならない上に、その条件が厳しい少女。

 ……ドラゴンの王を自称するあの子ですね。

 下手を打って勇者側に付かれたら厄介なんですよ。

 とにかく戦闘力が化け物じみていますから。


 竜に変身するというかもう一つの身体へと変わる『トランスドラグ』に、その形態になった時限定の強力な攻撃の数々。

 その上、人間形態限定の大技や便利すぎる補助技もあります。

 まともに育てば単騎で本気の『私』をも粉砕する事ができるほどの化け物です。

 設定的には勇者の持つ権能の力のサポートを得てのことではありますが……それでも、今の俺が相手にするには荷が重すぎますね。


 勇者が本編開始前の時点で彼女と出会い、完璧なコミュニケーションを取って、力の片鱗も示して仲間に引き入れたりということを考えると、流石に薄ら寒いものを感じます。


 そのうち、仲間に引き入れるか殺すかをしないと……神々でも勇者でもなく、あの子にひっくり返されて終わりかねません。


 そのうち、住処を特定しますか。未来の神候補三人に加えて左右の大臣。その五人でとりあえず議論しましょう。

 あくまでも『超強力なただのドラゴン』への対策でしかなく、対神々ではありません。

 ですので、お二方の協力は非常に役に立つことになるでしょうね。


 ですが、その前に……前者二人を。いえ、違いますね。賢者殿を迎えに行きましょうか。


 ドラゴンのあの子の居場所の特定にも役に立ちそう……というのは一旦置いておきましょうか。


 手紙をしたためます。まず一つは賢者殿へ。貴殿の力が私には必要なのだ、ということを熱烈に伝えます。また、陛下は人間の族滅は願っていない。『対等の視点に立ちたいだけなのだ』という一文も入れます。

 興味は持ってくれるでしょう。

 陛下がそんな事を考えているわけないんですけど、方便ですよ。他に興味を引く事は知っているから、会うことさえできればあとはこっちのもの……なはずです。

 

 もうひとつは傭兵のあの方へ。我らが魔界を統一するのは時間の問題。貴殿の力は天下に鳴り響いている。殺すのは世界の損失である。私の配下になってくれませぬか、と。


 どちらとも手紙のやり取りは少しだけしていたのですが、ここらで一気に踏み込むべきかと思いまして、少し踏み込んでみました。


「さて、どう転ぶのでしょうか……」


 傭兵の老人の方はいれば確実に役に立つ人材という程度に思っていますが、賢者殿の方はほぼ必須です。

 必要ない道筋というのも考えてはいますし、路線変更できるようにチャートも組んでいるんですが、仲間にできなければ結構大変なことになるんですよね。


 ……どうにか、仲間にできますように。


 その他にも手紙をとにかく書いてから、バアルと共に床につきました。

 ……陛下を娶ることになるんですよね。今はともかく、将来的には。

 罪悪感やなけなしの忠義心が悲鳴を上げている気がします。

 神に逆らうと言っておきながら、魔王には従順に従っていた……ふふ、少し滑稽ですね。

 ですが、未だに従っていたいです。

 

 もう決めたことですから。後ろを振り返ったりはしませんが、どうにか忠誠を守り抜くことはできなかったかと考えてしまって眠れませんね。


 ……考えるのはやめです。寝る時はちゃんと寝ましょう。

 正直、睡眠なんて取りたくなければ取らなくてもいいんですけど……パフォーマンスは一応上がりますからね。

 それに、電気の時代ではないから夜という時間に働きまくるのは意味が薄い。


 ……うん、さっさと寝ましょう。

 寝ているバアルに抱きつきます。


「……ん?ははは、妾を抱き枕にしたいのかぁ。良いぞぉ。へへん、いい匂いがするぅ……」


 バアルが寝ぼけながら普段なら言わなそうなことを言っています。

 明日からかってやろうかなと思いつつ、脳を睡眠モードに切り替えてぐっすりと寝ることにしました。


――――

恋愛要素やコメディ要素の練習のためにTS百合の新作書き始めました。TS百合が大好きだからその手の小説しか書けない呪いにかかっているのに、肝心のそこらの描写が下手くそすぎるので……。

こっちをメインに書いて向こうは気が向いたときに更新する形になります。

こちらは今まで通り一週間に6〜5回くらいの更新ペースになります。こちらのペースを落とすつもりはありません。

気が向いたら新作のほうも読んでやってください。

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