第2話 考察

「魔王との邂逅は偶発的なものだったのでしょうか?……それとも」


 考える。史実における俺が魔王の虜囚となったのは偶然なのか。

 考えてもわかりませんね、どちらとも取れるような設定であったはず。

 考察勢もいましたが、大まかに三派に別れていました。

 まず一つは、魔王は俺が復活することを知っていたというもの。


 魔王は神になることに固執していたので、俺の伝承を詳しく調べていた可能性はあります。

 しかし、『神の資格』という重要要素を魔王が知ったのは俺の力を取り込んでから、そう取れる描写もありました。

 そうだったならば、わざわざそこまで重要視する存在でもない。

 それはそれで危険視された可能性もあるが……とりあえず確定ではない。


 二つ目は偶然俺と邂逅し、この力に目をつけた。その結果、配下にした俺から色々と聞き出したり、力を奪ったりして世界の秘密を解き明かした。

 しかし、あれほど神になることにこだわっていた魔王が、神に成りかけ、一応は神の力をも超えた俺の復活を知らないということは想定しにくい。だから、確定ではない。

 その場合、『神の資格』について知っているかはわかりませんが、エンカウントは必至でしょう。

 しかし、あまりに古すぎる伝承ですからね。神になりかけた者がいて、その者は時代の第三勢力……トリックスターに過ぎなかったなんてお話を信じたがる方でもありませんし。

 なので二つ目……こちらの可能性もありうる。


 三つ目は……あえて、わざわざ、魔王の配下になりにいったというもの。

 己が為せなかったことを、傑物であると見込んだ魔王に為して貰おうと画策していた……そんな考察がありました。

 公式からの言及はほぼないような与太話です。

 ですが……まあ、俺ならばやってもおかしくはない、でしょうか?


 やはり、はっきりとはしません。


 ……一番有り得そうなのは、魔王は復活の事情をある程度知っていたというものでしょうか?


 あはは、それならば逃げられませんね。

 今の俺の力は全盛期の100分の1にも及びません。

 いくら神としての力をある程度振るえるとはいえ、今の状態では魔王どころか四天王最弱のあの方すら倒せないでしょうね。


 ……ですが、それはそれで悪くはないですね。


 この世界の神々は非常に傲慢です。いきなり信者たちを皆殺しにしようとした邪神のほうがまだマシだと思っています。

 この世界の争いを盤面の遊戯としか見ていない。

 人類と魔族の闘争が永遠に続くのも、あの方々がそう定めたからですしね。


 だからこそ、この世界を統べる三柱の神のうちの一柱、光神が裏ボスとして設定されているわけです。


 ……ふむ。魔王にこの権利、貸し与えましょうか?

 あのような輩がいては安心して暮らせません。


 それもアリですかね。……ふふふ。それに、魔族には可愛い女の子がたくさんいますし!

 モブからネームドに至るまで、やたら可愛い子が揃っています!

 人間側にも可愛い子はそりゃいますが、魔族側のほうが明らかに多いですから!


 あー、メタトロンちゃんに会えませんかね?

 同じ四天王(になる予定)ですから、いつかは会えると良いんですけど……。

 そうなったら……ふふふ、どうにか攻略したいですね。

 だって、ものっそい可愛いですから!


 このゲームで顔面偏差値つけるとしたら、メタトロンちゃんと俺が首位争いするくらいですもん!


 ……あ、そういえば今の俺ってすっごい可愛いんでしたよね。

 かつての『私』はあまり己の美醜にこだわりがなかったので忘れていましたが……。


 ……鏡、欲しいですね。


「……!!」


 かつての記憶と経験に従って魔法を使用し、鏡を取り出します。


 そこに写っていたのは……。


「あは、うふふ……」


 思わず変な声を出してしまうほどの美少女でした。

 俺、可愛すぎでは!?絶世の美少女として人生送れるとか最高じゃないですか!


 しかし、鏡を見れば見るほど吸い込まれるような……う、うん。

 あまりナルシストになりすぎるのも問題ですし、鏡は見すぎないようにしましょう。


「はぁ〜、俺、可愛すぎます……」


 既に手遅れになってしまった気もしますが、己しか愛せないならともかく他者をちゃんと愛せるならそれで良いんです。うん。

 メタトロンちゃんもすっごくかわいいですし!

 ……でも、そもそも俺って女ですし、女であるメタトロンちゃんを攻略できるんですかね?

 ……無理じゃないですか?


 い、いや……主人公は男女選択制で、男女の違いによるセリフ差分も大量なのにもかかわらずヒロインは五人の女キャラから一人(場合によっては二人)という形でした。

 女主人公であってもかならず攻略対象は女の子なんです!

 つまり、同性愛は法的に許されている!


 ……それ、人間社会の話じゃないですか。

 魔族社会だとどうなっているとか一切描写ないじゃないですか。

 まあ、魔王であれば功績を上げれば許してくださるでしょう。

 ですが、肝心の本人の気持ちがわからないですからね……原作での出番はかなり少ないのでパーソナリティもよくわからないですし。

 なんなら、四天王最強のはずなのに側近の方々の前座として軽く処理されましたから容姿と口調と声以外はほぼわかりません!


 ……原作を見るのではなく、メタトロンちゃん個人を見るべき、ですね。なんとか攻略しましょう。


 生き残り、そして攻略する……それが目標ですかね。

 幸い、互いに時間はたっぷりあるわけですし。

 勇者にさえ殺されなければ、ですけどね。


 ……そしてなにより、あの神々を討つことも、です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る