#3ドレ_____シド
すこしの時間にさよさよと会話をしているようだった。僕の耳はもうほとんど音を拾えない。足音が遠ざかり扉が閉まる音が聞こえた気がする。
沈黙が僕を包み込む。
僕のからだは後続機に再利用されるだろう。心臓の回路もクリーニングされ使われるのだろうか。
「嫌だな」
はっとした。涙というものが出そうだ。出ないけど。出ないことも嫌だ。なぜ感情なんてものをどうして。今更になって。
ああいやだな。
長路先生
【エラー】
アサヤくん
【エラー】
ユウヤ…僕の
【深刻なエラー】
【しんこくなえらー】
【しんこくな、】
僕は、ぼくはどうしようもなく苦しいよ。あなたたちにもう会えない。ぼくはずっとあなたたちとはなしがしたかった。
ぼくにことばをはなすことができたなら。
ああ。ああ。
「あ。これはあという文字だ」
「い。う。え。お。」
「これは五十音表という、文字を書き示した紙だ。私が作ったものはキミだけのものさ。紙は滅多に手に入らないから大切にしまっておくんだよ」
「聞いてくれミソラさん!意思疎通ができるロボットが完成した。ついに人類以外の生命が生まれるんだ。素晴らしい日を共に祝おう。すぐに帰るから暖かくして、ああ寝ていてくれて構わない。つわりがする?生まれる日が近くなると再び症状が出ると本に書いてあったね。わかったすぐに帰るよ」
「私たち人類がコールドスリープから目が覚めて____________日目でこの星で最初の子供が産まれた。ミソラさんは目覚めてから___日目で私との子を宿した。素晴らしいことだ。私は嬉しいよ」
「ただいま。お腹がとても大きくなったね。研究が忙しくて帰れずすまない。この匂いかい?匙くんがハンドクリームを開発したんだ。柚子という植物の香りらしい。今後は植物の開発も盛んになる。私も長に掛け合ったからね。そういえば匙くんは君のことをとても気にかけているよ。そうだ。今度三人で食事をしようか。祝うことが重なることはいいものだね」
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