【掌編】探せ! 最高のマイホーム!!【800字】
石矢天
探せ! 最高のマイホーム!
いま住んでいる家が手狭になってきた俺は、新居を探してさまよっている。
内見はご自由に、と並んでいる様々な物件。
俺はその中からオーソドックスなタイプを選んで中に入る。
「うん、いい。だけど……折角だからもう少し冒険したいんだよなあ」
いま住んでいる家もオーソドックスなタイプだ。
同じような家に引っ越してもつまらない。
もう少し探してみようと歩いていくと、これまでに住んだことのないタイプの家があった。入り口は狭く縦長の狭小住宅タイプ、何より外装がスケルトンというのが新しい。
「おお、これは! …………ないな」
やはり奇抜さで家を選んではダメだ。
とにかく狭いし、よくよく考えたら外装がスケルトンなんてプライバシーも何もあったもんじゃない。
更に歩いて行くと見事な豪邸があった。
カラフルで豪華な外見、広さも申し分ない。
もちろん外装がスケルトンなんてこともない。
「うんうん。こういうのだよ、俺はこういう家を探していたんだ」
ついに理想のマイホームを見つけた。
早々に引っ越しを終えた俺は、スキップであたりを散歩する。
「うおっ、なんだアレ」
何げなく浜辺を見たケンジは、気味の悪いものを見てしまった。
昔からこの浜辺はゴミが多いところだが、人形の頭部だけが転がっている光景は見る者をゾッとさせる。しかもそれがひとりでに動いているともなればなおさらだ。
「なんのホラーだよ」
ケンジは心霊現象を信じるタイプではない。
ひとりでに動く人形の頭部も、気味が悪いと思いながらどうして動いているのか確かめに行ってしまう。
「ああ、犯人はオマエだったのか」
割れた西洋人形の頭部。空洞になっている首元からヤドカリが顔を出していた。
近くに落ちていた巻貝をそばに置いてみたが見向きもしない。
ダメ元で隣にあったストローも置いてみたが結果は一緒だった。
「よっぽどコレが気に入ったんだな」
ヤドカリはケンジに「応」と答える代わりに、右手のはさみを大きく振った。
【了】
【掌編】探せ! 最高のマイホーム!!【800字】 石矢天 @Ten_Ishiya
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