【KAC内見】暗殺者ルーファスと深夜の来訪者

葦空 翼

暗殺者ルーファスと深夜の来訪者


「おい、邪魔するぞ」


 さてこれから寝ようかという夜更け。その言葉と共に、超絶無遠慮に玄関に現れた人物を見て、暗殺者ルーファスは口をぽかんと開けてしまった。


 ひとつに纏められた、長く少し癖のある黒髪。艶っぽいとも気障ったらしいとも取れる、垂れ目で彫りの深い顔立ち。真紅の瞳でこちらを射抜く、威圧的な態度。長身で黒いマントを羽織った、影の異形のごとき縦長のシルエット。


 異母兄にして侯爵家のお坊ちゃん、リオン。

 が、こじんまりした一般庶民の家に堂々とやってきて、あまつさえつかつかと奥まで入り込んでくるもんだから、ルーファスは慌ててそれを追った。もちろん大した距離じゃない。数歩レベルだが。それでも止めねばならない。


 こいつ、突然こんな時間に何しに来たんだ。


「ふむ、暗い。汚い。牛小屋より狭い家だな。こんなんでも人間が暮らせるのか」

「おい、お前、一体何しに来たんだ」

「かまど。テーブル。椅子。ベッド。……水場はどこだ? え、共同? 面倒くさいな……だがこの際贅沢は言えないか……」

「なぁ、何してるんだってば」


 家主を無視してあちこち謎のチェックを続けるリオンに、何度も必死に呼びかけると。リオンはくるりとルーファスの方を向き、お前の方こそ何を言っているんだとばかりに目を丸くした。


「え、何って内見だけど」

「ないけん……?」

「俺、家出してきたんだ。父上と喧嘩してさ。あんまり女遊びが過ぎるようなら、この家を勘当してやる! って言うもんだから、じゃあ出てってやるよ! って家を飛び出してきたわけ」

「はぁ……………………?」

 

「だから、お前の家を参考に次の家を探そうと思って。ある程度は金掴んできたし、あとは魔法使いとしてその日暮らしで生活費稼ぐのも悪くないかなと」

「待て待て待て……!」


 情報が。情報が多い。

 ルーファスが頭を抱える。


 まず、リオンが父と喧嘩した。リオンの父というのは、正確にはリオンにとってもルーファスにとっても叔父だ。だから彼らは異母兄弟なのだが、とにかく、貴族で侯爵で大魔法使いである彼の養父、ジェロームとリオンが喧嘩した。


 そして、勘当騒ぎになった。原因はリオンの女癖の悪さだという。いや、彼もルーファスと同じように影で暗殺者をしているので。有用な情報源コネを増やすのは非常に仕事に役立つ。上司ボスである真の父もそれを推奨している。


 だが、ルーファスも彼の度を越した遊び人ぶりは噂に聞いていた。一晩一回で複数人の女性をベッドに連れ込んだだの、どこぞの有力者の奥様と一晩を共にしただの、ここでは言えないような奔放なプレイをしただの、まぁ。異母弟として恥ずかしくなってしまうような話をちらほら聞く。


 正直ルーファスとしては、叔父ジェロームの方に同情してしまうのだが。当のリオンは露ほども反省していないようだ。反省するどころか、逆ギレして屋敷を飛び出し、異母弟である庶民ルーファスの家に転がり込んでいる。


 内見。彼は今後庶民として生きていくつもりだろうか。彼にとって牛小屋より狭い家で。全てを投げ出して。


「あのなぁ…………正直、帰れよ。お前が悪いよ。俺だってたまにお前の噂聞くけど、ぶっちゃけエグすぎるよ。そりゃあお前は貴族のお嬢様方からすればイケメン将来有望、素敵な殿方に見えるだろうけど。

 

 それにしたって、特定の彼女も作らずフラフラしたあげく、毎晩違う女と……なんて……ジェローム叔父様だって、心配すると思うぞ」


「るっせぇな」


 あちこち興味深げに見て回っていたリオンが、ピタリと止まった。真紅の長髪を揺らし、ターコイズブルーの瞳を嵌めたツリ目のルーファスを見返す。全く似ていない容姿、異母弟の彼を。憎しみの籠もった目で睨みつける。


「お前はいいよな、気楽な〝庶民の役〟を貰ってよ」

「えっ……」

 

「俺達の預け先、どうせ次男か三男かで違ったんだろ。俺が三男だったら貴族なんかやらずに済んだのに。こんなに縛られずに済んだのに」

 

「それは、でも……母親の身分が違うから。どの道無理だろ」

「いいや。俺達は同じ父親、同じ子種で出来てんだ。どこでどのタイミングで生まれたかなんて、誰にもわかんないだろ」


「……………………」


「ほら。答えられない」


 ハ、と唇の端を上げるリオンの顔は。酷く醜く見えた。怒りと、憎しみと、この世への絶望がその顔から見て取れる。

 

 彼は、あるいは貴族と呼ばれたくなかったのかもしれない。豪奢な服、綺羅びやかな屋敷、溢れるほどの金、ずらりと並ぶ従者、贅沢で美味しい食事を与えられてなお、そんな地位は要らないのかもしれない。


 ルーファスが静かに問いかける。


「侯爵家の長男と呼ばれてちやほやされるより、俺みたいに狭い家に暮らす庶民の方が良かった?」

「ああ、今ならそう思う。俺は……」


 俺は、父様に言われたことを守っただけなのに。

 仲いい人間をたくさん作れと言われたから、そうしただけなのに。


 ぽつりと漏らされた言葉。それは、ふいにルーファスの頭と心に染み込んだ。


 父様。二人の本当の父親。二人とは別の場所で暮らす男。そして、二人に暗殺者という仕事と出生に関する秘密を守る義務を与えた人間。


 リオンは彼のために、彼に言われた通り、〝仕事〟をしただけなのに。何故こんなにも文句を言われなくてはいけないのか。


 そう言われてしまうと、にわかに同情する気持ちがルーファスの胸に湧き上がってきた。確かに、全部父から押し付けられたものだ。秘密の多い、息苦しい生活。日々求められる仕事の成果。彼はそれが嫌になって、ついにここまで来てしまったのかもしれない。


 それはいつかの、ルーファスの姿かもしれない。


「…………わかる? 俺の言ってること」

「………………ちょっと、わかっちゃった。ちょっとだけだけどな」


 リオンの問いに、ルーファスが答えると。リオンは一瞬、ふわりと相好を崩した。ずっと意地も性格も悪い、ルーファスを見下していると思っていた異母兄が、恐らく初めて。ルーファスとほぼ同じ気持ちを共有した瞬間かもしれない。


「じゃあ、協力してくれるか?」

「…………それは、答えかねるけど。でも、今から寝ようと思ってたけど決めた。むしろ外出よう。遊びに行こう。酒くらいなら付き合うよ。もしかしたら、今なら俺の方が金持ちかもしんないしな」

 

「はぁ? 貧乏人のくせに生意気なんですけど」

「それはお前からしたら、だろ。家に金使ってない分、そこそこ貯金貯まってますぅ。なんせ表の仕事は天下の王都の門番兵士だからな。王都の守り手に金払ってないなんて、それ一周回って女王陛下への侮辱だからな」

 

「…………ぐ…………わかったよ、悪かった、そんなつもりじゃない」

「おっけ、それじゃ行きますか」


 そこで一旦言葉を切る。ルーファスは真っ赤な髪を翻し、あおい目を煌めかせてにこりと笑った。


「兄さん」


 その単語、その呼び名はリオンにとっては不服だったようだ。途端に不機嫌な声が返ってくる。

 

「…………お兄様と呼べ」

「バーカ、庶民同士でその呼び方は浮くよ。いいから来いって兄さん」

「はぁ? 舐めんなよクソガキ」

「たかだか一歳しか違わないのによく言うわ。兄さん呼びしてもらえるだけありがたいと思え」

「んだと」


 そうして二人は、連れ立ってこじんまりした家を後にした。厳重に扉に鍵をかけ、魔法で灯りを灯し、繁華街へと足を向ける。真っ暗な空の下、稼ぎ時を迎えた酒場や飯処は眠らない人々で溢れ、活気に満ちていた。


 リオンはそれら一つ一つを物珍しそうに眺めている。彼らの裏稼業のバックに付くもう一人、女王が暮らすのもこの街なので、ここに一度も来ていないわけがないが。新鮮、と言わんばかりの表情でそれを見るリオンは、さながら〝お上りさん〟のようだった。


「…………綺麗だな」

「ああそっか、お前の家、王都からちょっと離れてるもんな。裏の仕事の都合上、明るい所はそんなに歩かないし。表通りを歩くのは珍しいか」

「ホントそれ。表を堂々と歩けるってのもなんか嬉しいな……」

「バレたら連れ戻されるんだろうけどな」

「多分な」


 王都ロンディニウム。女王ヴィクトリアが統治する人間の王国、アルカディアの首都。行き交う人々のほとんどが種族「人間」だが、たまには他の種族ともすれ違う。綺麗な衣を翻す色白のエルフ。迫力ある筋肉美を見せつけてくる獣人。小柄でぽっちゃりした、精霊と共に暮らすノーム。そして、


「おお〜、ケットシーだ。これは俺初めて見たかも」

「本当? 露店覗くとたまに居るよ」


 路地の傍らで地面に敷物を広げ、貴金属を並べる全身猫の獣人、ケットシー。立っても人間の子供くらいの背丈しかないが、非常に頭が回り、商才がある。王都ではこの手の商人をたまに見かける。

 リオンはこれに興味を引かれたようだ。すっとしゃがみ込み、商品の値踏みを始めた。それに気付いたケットシーが、そのうち一つの指輪をつまみ上げる。


「どうお兄サン! この指輪、すごい魔力秘めてるヨ! お兄サン魔法使いなら、こういうの欲しいんじゃナイ??」

「ふーむ」


 確かにリオンは片手に灯りの魔法を灯していて、格好も真っ黒なマントだし、如何にも魔法使いだ。しかし彼は貴族──魔法使いしか居ない身分出身だし、いっそガチの本職なので、この手のアイテムに対する審美眼は厳しい。お眼鏡に適う商品はあるだろうか?


 正直、この手の露店は素人相手のぼったくりが多い。キレないといいけど……。ルーファスが内心ハラハラしながら見守っていると。


「これ……もしかして、6世紀頃作られた骨董品か? 俺の知識が正しければ、だけど……千年前、魔王退治が流行った頃の指輪だ」

「やや! お目が高イ! 高すぎるネ! それを一発で見抜いた人、今まで見たことないヨ!」

「えっ」

「お兄サン面白い人だネ、じゃあソレ、特別に金貨一枚で譲るヨ! 価値を考えたら破格だと思うヨ??」

「ああ、じゃあそれで貰う。ありがとな」

「マイドアリィ!!」


 商談が、まとまった。リオンはほくほく顔で本当に金貨(当然金持ちしか持っていない)をぽんと払い、指輪を受け取ってしまった。そのまま去ろうとする彼を追いかけて、ルーファスが慌てて立ち上がる。


「おっおいおい、おいリオン、いいのかよ? それ、パチモンじゃねーだろーな。あとで叔父様にキレられるの嫌だぞ? 俺」

「馬鹿お前、これの凄さがわかんねーのか? ほら触ってみろ、すぐわかるぞ」

「えっ」


 リオンが中指に嵌めたリング。言われた通りそれに触ると、なんだろう。ふわりと温かな気配がする。


「お前魔力感知苦手なんだっけ? 俺ぶっちゃけ、見た瞬間なんてもん売ってんだと思ったぞ」

「え、いや、まぁお前よりは苦手だけど……」

「いや〜、凄いもん買っちゃったな! シーラとスカーレットに自慢出来る!」

「じゃあ帰ろうよ。帰って妹二人に自慢すればいいじゃん」


 ルーファスが唇を尖らせると。むしろリオンの目は活き活きとしていた。まるで都会に遊びに来た子供。死ぬほど遊び尽くすぞ! という顔をしている。


「なーに言ってんだ、表の王都、めちゃくちゃ楽しいじゃん。案内役にお前が居てくれて助かった。まだ行こうぜ、色々教えてくれよ」

「えっ、えええ……いいけど? いいけど? 物知らずのお兄様」

「一言余計だよお前は!」


 珍しく頼られて反り返るルーファスを、リオンが即座にこづく。二人はふふ、と笑顔を交わした後、意気揚々と夜の街を冷やかした。


 童顔で小柄なハーフリングが披露する、炎の大道芸を眺める。

 あちこちで飲みかわされる酒。

 小銭を払い、行儀悪く歩きながらエールを胃に流し込む。

 

 小腹が空いたら屋台でミートパイを買う。パリパリサクサク、焼き立てのパイがすこぶる美味い。

 半裸に近い娼婦が客引きをしてくる。行こう、とリオンが喜色満面にルーファスの袖を引いたが、彼は断固拒否。他の遊びをしろ、と首根っこを掴んで引きずっていく。


 笑顔の人々。

 眠らない街。

 彼らの笑顔は、女王の安定した統治とそれが生む平和に守られている。ルーファスの知る限りでは、現女王が玉座についてから、めっきり戦争が減ったらしい。もちろん皆無ではないが、それでも宗教戦争だ王位継承争いだと揉めていた数年前までよりは、ずっと良い状態が続いている。


 王都の人々は、間違いなく今「幸せ」だと思う。

 ルーファスとリオンは陰ながら、その幸福を維持する手伝いをしている。その自覚があるから、街の人々が楽しそうにしているのはなかなか悪くない気分であった。


「なんか、平和だなぁ」

「そーだな。他所よそは知らんけど、少なくともここに居る人たちはみんな楽しそうに見えるよ」

「ここに居る全員、俺より貧乏人だけどな」

「まぁ、一生朝起きて仕事して飯食ってちょっと酒飲んで寝るだけの生活を繰り返す人たちだけど」


 それぞれ、褒め言葉とけなし言葉を一つずつ口にする。それでも。改めて市政の人々の暮らしを眺められたのは、良い息抜きになったと思う。


 リオンがよっ、と寄りかかっていた柵から身体を起こす。傍らのルーファスはそれをにんまりと見つめ、一言話しかけた。


「リオン、?」

「……いや、むしろ家に帰りたくなった。俺には俺の仕事がある。それはここに居る人間、俺とお前以外の人間の誰にも出来ないことだ。だから、俺がやらなくちゃ」

「ああ、そうだな」


 もうこれ以上の言葉は要らないだろう。ルーファスはぽんとリオンの肩を叩く。

 

「じゃ、どうせ寝るならふかふかの自分の布団の方がいいだろ? 帰ったら?」

「…………そうする。まぁ、父上には、明日の朝にでも謝るよ」

「うん、それがいい」


 するとリオンは、きらりと今日の戦利品──指輪を煌めかせてターンした。口元には得意げな笑み。


「そんじゃま、世話になったな。今日はなかなか楽しかったぞ。だから……またな、ルーファス」

「ああ、またな。兄さん」


 二人は異母兄弟であり、表の身分がまるで違う。だから本当なら、こんな形で言葉を交わすことは許されない。なんなら、互いの名や関係を呼ぶことすら許されない。だが、彼らは確かに血を分けた家族であり、親しい関係だった。


 明日からはまた、まるで他人のフリをするとしても。今夜だけは。互いを兄弟と呼びたかったのだ。


 ルーファスがひらひらと手を振ると、リオンは瞬時に灯りの魔法、そして自らの姿を消した。彼らには彼らの一族だけに許された特別な魔法がある。この瞬間転移もその一つ。あるいはこれは、二人が家族である証かもしれない。それを使用したのを見送って。


 ルーファスはハタと気付いた。


「えっ嘘、明日まだ平日じゃん。明日も仕事あるじゃん。バカバカばかぁ、せっかく今夜は夜の方のオフだったのにぃ……!」


 明日も表の仕事、門番が待っている。現在恐らく、とっくに日付が変わっている。今から帰って寝たとして、一体何時間寝られるのか。


(俺の睡眠時間……!)


 内心不満な気持ちもあったが。……まぁ仕方ない。異母兄と叔父の仲を無事取り持てた(?)なら。


「…………帰って寝よ」


 ルーファスは一人、とぼとぼと帰路についた。さすがに彼はリオンのように、唐突に転移魔法を使うわけにはいかない。彼の赤髪はそれなりに目立つ。


 それに何より、「赤い髪の若い男」は王都で暗躍する「死神」、彼らが演じる暗殺者の姿そのものなのだ。今は愛想よく市民のフリをしているからいいが、突然姿が消えたとあらば、たちまち混乱を生むだろう。

 

 どのみち、ルーファスは楽して帰宅することは叶わない。諦めよう。


(まぁ、ここまで来たら二人が無事仲直りするのを祈るだけだな)


 静かに夜空を見上げる。そこに浮かぶのは、半月まで痩せた月。叶うなら、こんな穏やかな日々がまた続きますように。









「お帰り、リオン」

「えっ」


 同時刻、リオンの自宅、侯爵家マールヴァラ邸。そろりとリオンが屋敷の正面ホールに足を踏み入れると、そこには養父ジェロームが仁王立ちで待っていた。当然鬼のような形相をしている。大体いつも眉間に皺を寄せている人だが、今夜はとりわけその皺が深い。リオンは思わず身体を硬くした。


「ぐっ、ぇ、父上…………只今、戻りました…………」

「貴様、どの面下げてこの屋敷の玄関ホールを踏んでいる。二度と戻るなと言いつけたはずだぞ」

「そ、それは…………」


 リオンは一瞬言い淀み、しかし次の瞬間。バッ! と頭を下げ、ハッキリとした声音で告げた。


「申し訳ありません、父上! 女王の敵を排し、国民の平和を守るという崇高な立場でありながら、その、異性ばかりに目を向けて……自分の責務を理解出来ていませんでした! 今後はもっと任務に邁進し、〝人脈作り〟はほどほどにすると誓います! なのでっ……」


 そこでジェロームの影が近づいてくる。コツコツと響く足音に、平手でも張られるのかとリオンが覚悟するが。


 ぽん。


 衝撃は来なかった。代わりに、下げられた頭の上にジェロームの手が乗る。


「……ふぇ、」

「…………建前でもいい。それがきちんと口に出来るなら、貴様はまだ捨てたものではない。今後は私を失望させないよう、貴族業暗殺業共に真摯に励め」

「…………、はいッ」


 静かに手が離されたので、リオンも恐る恐る顔を上げる。視線が交わったジェロームの瞳は相変わらず冷ややかだったが、殊更不愉快だ、という顔をした後。


「心配したぞ、馬鹿息子。反省したなら早く寝ろ」


 そう吐き捨てて、足早に去っていった。


 ……これで、お咎めなしか。苛烈なサディストである養父の姿を知っているリオンは、思わずへなへなと床に尻をついてしまった。そして、へらりと笑う。


「へへ、鹿だって」


 それはある意味、彼が最も聞きたかった言葉かもしれない。


 夜空に月が笑うように浮かんでいる。


 

 

 

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