愛の巣

フジノハラ

第1話


ここに1羽のハタオリドリが番を求めて作った巣がある。今、メスのハタオリドリが住宅の内見に来ているようだ。

さて、その様子を覗いてみよう。

「きみと一緒に暮らすためにこの家を作ったんだ。どうかな?」

「そうね〜、安定はしてるわね。でもちょっとここの作りがあまいわ」

「そうか、頑張って作ったんだけどなぁ…」

「それじゃあ私、他のところ見に行くからさよなら」

「ああ、もし他のところを見てまだチャンスがあれば戻ってきてくれ」

残念な事にメスは飛び立って行ってしまった。

オスのハタオリドリ“ルーミー”というが、ルーミーはメスが飛んで行った方をしばらく眺めていたが、ため息をついて作ったばかりの巣を見やる。

「もう少し手直ししてみるか…」

とぼとぼと、先程指摘された作りの甘い箇所の補強のために飛び立った。

その間に、また1羽のメスがやって来ていた。最初のメスと違うメスである。

メスはしばらくの間は巣の外側を見ていたが、なかなかオスが来ないので先に中を拝見する事にした矢先に、オスのルーミーが帰ってきた。

「あ、もう誰かが来てたのか。ごめんね!今手直ししようとしてたんだ!少し待っててくれる?」

そう言って、補強作業に入った。作業はすぐに終わり、メスを喚ぶ。

「待たせちゃってごめんね。今終わったからた、どうぞ、気に入ってくれたら嬉しいんだけど」

「ありがとう。では、見させてもらうね。お邪魔します」

メスが巣を見ているあいだルーミーはソワソワと巣の周りで右往左往していたが、そうこうしているうちにメスが巣から顔をだした。

「この巣とっても素敵ね。安定してるし、収まり具合も私にとっても合ってるみたい。それになにより、ここ、とっても素敵な色!赤い葉っぱなの?花ではないでしょう?」

「良かったきみに気に入ってもらえて。赤いのは、花でも葉っぱでもないんだけどとっても綺麗だったから使ってみたんだ。」

「へぇ、そうなのね。とても気に入ったわ!私ここにする!…いい?」

メスは勢いよく言うが、最後は少し不安になったようで、ルーミーの方を伺う。

「本当に!?ぜひ!僕と番になって欲しい!君みたいな可愛い子と一緒ならどんな時も楽しいはずだ!」


それから2羽は木と木の間を飛びまわり、雲が差しかかる蒼い空に2羽のハタオリドリが楽しげに飛ぶ姿と鳥たちの愛の唄が森のなかに響き続けた。

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愛の巣 フジノハラ @sakutarou46

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