4:陽キャフレンズ
俺の義妹は≪遊んでる≫らしい。
ここ数日、現に俺は、こいつに、遊ばれている節がある。
見た目だって金髪ショートカットのギャルだ。それも、義兄として長年一緒に暮らしてきた俺でさえ可愛いと思えてならない愛されフェイスをしているものだから、この噂には、残念ながら、信ぴょう性があるわけだ。
そんな義妹と、たまたま、街中で出くわした。
女友達を数人引きつれていた。
「あ、お兄ちゃん! ぐーぜん!」
「あ、ども……」
イケイケな女子の集団の先頭を歩く義妹相手にしり込みしてしまう俺。
なぜならこちとら一人。散歩がてら中古ゲームショップを練り歩いていたオタ活の最中だった。
本来なら住む世界が違う住人同士。行動範囲は被らないはず。
でもこれが田舎クオリティ。オタクもギャルも、買い物するならAE
しかし、これだけギャルが集まっても、やはりうちの義妹が一番かわいいな。
「こんにちはーミキのお兄さん、東京の大学いくんですよね。すごっ」
「確かに勉強得意そうー」
「一人でなにしてたんすかー?」
オドオドしていると、ミキの仲間たちが次々に口を開いてきた。うおお……陽キャの
てか、これだけの女の子といっぺんにトークをするのは人生初体験だ。前例がなさ過ぎて、何も言い返せない。
「こらー! 私のお兄ちゃんに寄ってたかるな! ド陰キャなんだからホラ、怖がってるでしょー! もー!」
「ド陰キャ言うな」
そこでミキが間に割って入って、フォローになってないフォローをしてくれた。ありがとうよド陽キャ。
俺の前に立ち塞がってくれるミキの金髪からふわりといい匂いがした。
ギャルたちはひとしきりニヤニヤすると、「ごめんごめん」と謝って、俺に対して手をふるのだった。ミキもちょっと拗ねたような顔つきで俺を振り向くと、シュタッと手を挙げる。
「じゃあね、お兄さーん」
「まったくもう。あ、お兄ちゃん、帰り遅くなるから。バイバイ!」
「はいよ。いってらっしゃ……ん? 遅くなるん? どこ行くん?」
俺の義妹は≪遊んでる≫らしい。
そんな疑念がふと頭をよぎり、俺は無意識につい、聞き返していた。
「男も一緒か?」
「は!? 違うし! てかそれお兄ちゃんに関係ないし!」
確かに関係ない。でも気になる。
そこへお友達ギャルの一人がミキの背にくっついて、「心配しないでください!」と親指を立てた。褐色に焼けたおでこが可愛い子だった。
「ウチらだけでサイコーに楽しいカラオケしに行くだけなんで! だから
今日は……か。
今回の心配は無用そうだが、これまでと、これからの心配が余計に募った。
「ウッチー! 余計なこと言わなくていいから! じゃあね! お兄ちゃんもう帰ってよね!」
ウッチーを引き剥がして、義妹はそそくさと去っていくのだった。
彼女らの後ろ姿を少し眺めて、俺も別方向に歩きはじめる。
「ちなみに! これまでだって、男子とは付き合いでしか遊んだことないから! 変な勘違いしないでよね!」
不意に背中から、ミキの可愛らしい訴えが聞こえてきた。
急いで振り向くも、ミキはすでに背を向けて歩いていて、俺の返事など必要ない様子だった。
友達たちは、さっきよりもこころなしか、ミキに対してウェイウェイ絡んでいるようにも見えるが、まあ、これ以上俺が絡みに行くのも無粋だ。
少しだけ、心が軽くなったので、その足取りのまま帰宅。
ミキが帰るまで、ゲームでもして待っててやろう。
温かい紅茶でも淹れてあげるのだ。
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