3:初ラブホ…ども…
ラブホの駐車場は狭く、そして、割と台数が止まっていた。
助手席のミキをちらと覗くと、ニヤニヤと冗談めかして笑いながらも、どこか落ち着かない様子だった。
俺だってこんなところ、落ち着かない。なんで義妹とこんなところにいるんだ。おかしいだろ。どう考えたって……。
だけどゆっくり進む俺の車は、未だに出口へUターンするそぶりも見せない。
いや、できないのだ。
こんな狭い場所で自動車を回す技量が俺にはない。
なぜなら俺はペーパードライバー!
どうしても一度、駐車スペースに突っ込んでから、進行方向を切り返す必要がある。
だけど……駐車スペースに、仮にも、仕方がないとはいえ……隣に座るのは義妹だぞ!?
いくら最初に茶化してきたのはこいつだとはいえ、車の主導権を握っていた俺自身が、ここまで事を進めてしまったのは言い訳のしようがない事実である。
いやそもそも、こいつが俺を挑発したのが始まりなわけで、そこからなんだかちょっとおかしな雰囲気になっちゃったわけで。
……いってみるか?
ちょっと、駐車してみて、反応見てみるか?
――いや反応見てどうすんだよ!
いけそうだな。とか思ったらいくんか!?
い、いくか――!?
ええい、脳内会議はここまでだ。
どうせ俺はもうすぐ東京。さらば故郷だ。
なんとかなれ――!
駐車スペースに頭から突っ込んだ。
「—―ミキ。ちょっと、休憩でもするか」
「え? マジ? お兄ちゃん? ウソでしょ? 本当に?」
義妹のこの反応が、どのような意味を持つかなんて、俺にはわからない。
そう。反応を見たところで、わかるわけがないのだ。そもそも何をわかろうとしていたのかすら、わからない。
なぜなら俺は、童貞だから――。
だから結局、こうするしかないのだ。
座席のリクライニングを倒して、わざとらしく伸びをしてみせる。
「はい休憩~」
「うわー! 彼氏にされたらマジで冷めるやつだー!」
「そうか! 俺が彼氏じゃなくてよかったな! それじゃあ休んで体もスッキリしたし、母さんに頼まれた買い物行って帰るぞー」
結局こうしておちゃらけて、なあなあにする以外の選択肢が俺にはないのだ。
「……ま、良かったかどうかはまた別問題だけどね」
だからミキがぽつりと言った言葉も、俺は聞こえないフリをした。
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