第18話

 悠真の食べる顔っていいね。

 すごく美味しそうに食べてくれている。


 私は、悠真に聞いてみる。


「私の作ったたまごサンド、どうかな? 美味しいかな?」


 悠真がたまごサンドを口に入れた瞬間、一瞬顔を歪ませていた気がしたけれども、すぐに笑って答えてくれた。


「うん! ‌美味しいよ! ‌さすが未羽だよ。僕の誇れる彼女だね!」

「ふふ。ありがとう」


 このたまごサンド。

 私は、味見なんてしてなかったんだけれども、美味しいんだ……。

 悠真の味覚を少し疑っちゃうなー……。

 私も少し味わったことあったけれども、あれってそんなに笑って美味しいなんて言えるものじゃないんだけれどもね……。


 なんてね!



 私のために頑張って食べてくれてる感じがして、これはこれで良いかも知れないな……。

 ふふ……。

 また作ってあげようっと……。



 悠真が食べる一方で、私は自分用のイチゴジャムサンドを食べる。


 すごく真っ赤なイチゴジャム。

 これは、新鮮な印かもしれないね。

 美味しそうな色をしている。


 早速一口食べてみると、少し苦いような味が口の中に広がった。

 そして、そのあとは、少ししょっぱいような味。


 最後には、ねっとりとした甘みが、ゆっくりとやってきた。

 新鮮なイチゴジャムって食べたこと無かったからな。

 こういうものなのか。


 こんな瓶なんて、見たことないし……。

 私の知らない味で当然だよね。



「これは、なかなか独特の味のジャムだね」


 私の反応に、悠真は苦笑いを浮かべていた。


「それ、ちょっと微妙かもだよね……。味とか、大丈夫?」

「大丈夫だよ。これ、オシャレな味がするよ。悠真は、良くこんなの見つけてきたと思うよ。ホテルの時と言いさ、オシャレな都会の彼って感じでとっても良いよ!」


 最近の悠真は、都会に馴染んでてとてもオシャレだからね。

 私もそれに近づきたいから。


「体調崩す訳には行かないし、栄養いっぱい取っておかないとだから、食べちゃうね!」


 本当にオシャレな味。

 私の目指すのは、こういうものだね!


 悠真も、私の姿を見て、満足そうに笑っていた。


 幸せな食卓。

 幸せな朝の風景。ふふ。



 ◇



 私たちは、それぞれの朝食を食べ終えると不動産屋へ向かった。


 先日も訪れた、綺麗な街の不動産屋さん。

 なんだかんだ言って、ここに来ると高揚感がある。

 街もお気に入りだけど、この不動産屋さんがあるから気に入った所もあったりするし……。



 昨日色々あった後だけど、佐々木さんとどんな顔して会えばいいのかって、緊張しちゃうな……。

 少しドキドキしながら、店のドアをくぐる。


 けれども、佐々木さんの姿は見えなかったり

 今日はいないみたいだな。

 少し残念な気持ちと、安心した気持ちが入り交じっていた。


 悠真に会わせたかった気もするけど、緊張しちゃうから、居なくてよかっかもな。



 代わりに、最初にあった女性の店員さんが迎えてくれた。


「あら、いらっしゃいませ」


 最初に会った女性の店員さん。

 綺麗で、都会っぽいんだよね。


 私を認識して、微笑んでくれた。



「また来て頂きまして、ありがとうございます」


 やっぱり綺麗な人だな……。

 オシャレさが違うよなぁ……。

 憧れちゃうな……。



 店員さんは、ニコッと笑って言ってくる。


「先日は、うちの佐々木がお世話になったようで……」

「え、あ、はい……」


 店員さんは、綺麗な顔で微笑んでいる。

 けど、目の奥は笑っていないような気もする……。


「うちの佐々木がですね、昼休みからなかなか戻って来ないと思ったんです。そしたら、長い時間内見していたらしいんですよね。……どうでしたから?……‌楽しめましたか?」



 そうか……。

 社内で情報共有が行われてるのは普通なことだよね。

 この言い方って、どういう事なのかな……。

 この人に、どこまで伝わってるんだろう……?


 悠真から問い詰められるのは、少し予想はしていたんだけれども。

 まさか、この店員さんからも問い詰められるなんて……。


 けど、私はただ内見していただけ……。

 佐々木さんも、そう言ってくれてるはず……。

 何も難しいこと考えずに、素直に答えれば良いだけのはず……。


 私の答えを聞く前に、店員さんは聞いてくる。


「体調を崩していたらしいですけれども、大丈夫でしたか?」

「は、はい……。佐々木さんのおかげで、すっかり元気になりまして……」



「やっぱり寝苦しかったんでしょうか? ‌ベットの汚れが中々でしたよね……」

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