第12話

 料理を作り終えて、生ゴミの処理もした。

 生ゴミはまとめてキッチンのゴミ袋に入れて、見えないようにティッシュで包みなおして、しっかりと袋の口を閉じている。

 明日はゴミの日だからね。


 全て作業が終わった所で、悠真から電話が掛かってきた。

 優しい悠真の声がする。


「いま仕事終わったよ、遅くなっちゃってごめん。今どこにいる?」


 一度気持ちの整理をしたから、大丈夫。

 間違いは、誰にでもあるもんね。

 少し揺れてしまう気持ちもあるけれども。

 それでも、自分に言い聞かせる。


 悠真は仕事だったんだもん。

 大変だったんだよ、多分。

 信じてあげないとだよ、私!


 一息ついてから、私も優しく答える。


「今ね、あなたの家にいるんだよ」

「……あ、あれ?……鍵持ってるんだっけ?」


 なんで悠真は、慌てちゃってるんだろう。

 私を信じさせてよ……


「私が合い鍵作って置いたんだよ? ‌何かあった時に駆けつけられるようにって。悠真って忙しくなると、ご飯も食べないで仕事しちゃうじゃん?」

「そっか、俺の事心配してくれてたからか。ありがとう」


 私の愛情を受け入れてくれる悠真。

 悠真のことを信じても良いんだって思えるけれども。

 不安が拭いきれないところもある。


 視界の端にあるキッチンのゴミ袋が目に入る

 あの中にある、忌々しい生ゴミの事が頭の中をチラついてしまう……。

 そうすると、やはり聞きたくなる……。


「……悠真はさ、私が家に入っても、特に見られちゃいけない物とか無いもんね?」

「……あ、ああ。そうだね。もちろんだよ」


 落ち着いて、一言一言喋る悠真。

 私の思い込みが激しいから、そう思ってしまうのかもしれない。

 悠真が言うことを、信じないとだよね。


「じゃあ、大丈夫。私は、悠真を信じてるからね!」

「おう。ありがとう」


 私と悠真は、二人で明るい声になる。


「それじゃあ、早く帰ってきてね!」

「分かった、すぐに帰るよ!」



 ◇


 私は、これ以上何も見ないように、キッチンテーブルの椅子に腰掛けていた。

 これ以上揺らいでしまうと、壊れてしまう気がするもん。



 私が我慢していると、すぐに帰ってきたようだった。

 このアパートは、壁が薄いから外の音もすぐ聞こえる。

 足音が家まで近づいてきてる、


 ちゃんと、宣言通り早く帰ってきてくれたんだ。


 私は玄関まで走っていき、待機する。

 ドアが開かれると、そこには悠真がきた。


 悠真の顔を見ると、少し安心する。



「おかえりなさい!」

「ただいま」


 悠真の笑顔が、

 これこれ。

 これがやりたかったんだ。


 私は、こんな感じの、新婚さんみたいなことがしたかっただけなの。

 憧れだったこと。

 ふふふ。まだ結婚してはいないけれども。

 もう幸せだなって感じちゃう。



 玄関口で、カバンを持ったままの状態の悠真に抱きついて、キスをする。

 悠真は驚いているけれども、私の愛に応じてくれる。


 いつにも増して激しい気もする……。

 男の人は、お腹が空いていると、性欲が増すらしいんだって聞いた事あるし。

 あと、疲れが溜まると、生存本能的に性欲が高まるというのも聞いた事がある。


 ……やっぱり、さっきの生ゴミは、私の勘違いだよね。

 悠真を信じよう。


 悠真は、私の物だからね。


 私と悠真は、身体を離す。


「ちょっと、いきなりびっくりするよ。どうしたの?」

「ふふ。新婚ごっこがしたかったんだよ」


 悠真は、笑ってくれた。

 それで、ベタなことを言ってくる。


「そうしたら、定番の質問してくれても良いんだよ? ‌ご飯にする、お風呂にするって言うやつ」


 ニヤニヤとする悠真。

 私も、悠真の悪ふざけに答えてあげる。


「それじゃあ、悠真さん。ご飯にする? ‌お風呂にする?……それとも、私にする」


 私が、そう言うと悠真はカバンをその場に置き捨てて、私に激しくキスをしだした。


「……もちろん、未羽にするに決まってるじゃないか」


 激しく身体も求めてくる。

 私もそれに応えるように、服を脱いでいく。


 悠真は、やっぱり優しい。

 私を不安にさせないように、してくれているんだ。


 私は、悠真を信じるって決めたんだもん。



 悠真に求められるまま、玄関で押し倒される。

 不安が無くなるくらい。

 何も考えられなくして欲しい。


 キスが一度離れた隙に、私は悠真に伝える。


「……悠真? ‌昨日よりも、もっと激しくして欲しいな……」


 悠真は、悪い顔をしてるかもしれないけれども。

 私の言葉にしっかり答えてくれる。


「……もちろん」

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