第10話 12月5日

両親へ結婚出来ない事を告げられると言う1大イベントから半年が過ぎた。

当時はテレビドラマでも見ているように実感がなかったが、やっとその事実が身に染みてきた。

同郷の石倉くんにだけ事実を話した。(号泣しながらで聞きにくい話を聞いてくれた上にご馳走してくれた。)

職場の人には伝えてない、まぁ雰囲気で別れた事はわかったのだろう、女子会なるものを開催してくれた。


これまで以上に仕事に励んだ。

これまで以上に遊びに行った。

同僚との買い物も楽しみ、ジムにも通った。

週末は同僚と飲みに行く。

平日は家で飲みながら映画をみる。

酒の量は去年の倍になった。


私は気付いている。

これはダメな流れだ。

これまで抑えてきたつもりだったが、もう無理なのだろう。

これは、躁だ。



初めて行く病院は怖い。それが心療内科なら尚更だ。

先生は怖くないだろうか。怖い薬を出されないだろうか。病棟入院と言われたらどうしようか。

待ち時間は長く、時間が経つたびに心配が増えていく。

心臓が早鐘を打ち、目眩がしそうだ。

限界を迎え、帰ろうとした所で名前を呼ばれる。

あぁ、私の番が来てしまった。

処刑台に登る気持ちでドアを潜る。




先生はぶっきらぼうだが、私の心配を理解してくれた。

今回起こったこと、生活に不安が見え始めたこと、過去に診断を受けたこと、全て聞いてくれた。

薬を怖がる私に比較的安全な薬を出すこと、お守りがわりに持っていればいい事、不安になれば少しずつ飲んで、逃げればいい事を教えてくれた。



少しだけ、自分の未来に希望が見えた。

だか、刹那的な楽しさのみを求める日々は変わらなかった。

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