第7話 更に遠いあの子

中学生の時、私には親友がいた。

早紀は生徒会長だった。

学年で1、2を争うほど綺麗だった早紀だが、あまりカーストの高くない根暗だった私と馬が合い放課後はいつも2人でいた。


早紀のお父さんは代議士で、お母さんは家で絵の先生をしていた。

家は3軒分もある程の豪邸で、大きな犬を2頭飼っていた。


彼女は当然のようにモテた。普段話をしないカースト上位の先輩から、早紀のことについて聞かれたこともあった。

しかし彼女は誰にも振り向かなかった。それが更に彼女の価値もあげたようだが、根暗な私にはあまり関係のない話だった。


彼女の部屋に遊びに行った時のことだ。

私は彼女からキスをされた。舌の入ってくるディープなやつだ。

当然そんな経験のなかった私の頭はさまざまな感情を一つ一つ理解していくしかなかった。

驚き、戸惑い、哀しさ、そして甘美な誘惑。口内を這い回る舌から滲み出る一抹の快楽に私の体は拒絶を示さなかった。

ようやく離れた彼女は言う。

「これで私たちはおんなじだね。2人で不幸になろう。」

初めて見る早紀の綺麗で妖艶な表情を前に、私はうんとしか言えなかった。


早紀の家も歪だった。

お父さんは家に帰らず、おそらく他の女性と住んでいる。お母さんは新興宗教にハマり、変な人達が家を出入りしていた。

それを理由に私の家に泊まることもあった。

私たちは馬があったのではない。寂しさの周波数が合っていたのだ。


ただ、それだけだったんだ。



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