第4話 9月17日

この町に来て半年が経った。

任される仕事も増え、楽しくなってきた。

彼との連絡は減ったが、私生活も充実している。

職場の人たちのこともわかってきた。

橋村所長は背は低いが、若くして所長になったイケメンだ。

3人の母でもある小倉さんは、なんでも知っているし社内の顔も広い。

一つ上で事務の池内さんは、おっとりしてて優しく話しているといやされる。

尊敬できるいい人達ばかりの職場だ。





なんてことは大嘘だ。

橋村所長は営業成績こそいいが、すぐにキレる。キレだすと手近な物を投げつけられるので、機嫌が悪い時は近づけない。奥さんには子供を連れて逃げられたので、持ち家の一軒家に母親と同居しているらしい。

時折、私に猫撫で声で話してくるのも気持ちが悪い。


小倉さんは、実質的に所内の裏ボスだ。こちらもキレると怖い。物こそ投げてこないが説教も長い。また、本社の偉い人と出来ているので社内情報も詳しく、変な噂を流されないか不安になる。


事務の池内さんは、彼女持ちの男に色目を使いその気にさせてから振るという遊びを繰り返している。医者の彼氏がいるようだが、そんな彼女に振り回されてメンタルの不調になったような話を嬉々として語られた。


同期の明日花は飲み込みが悪く、同じミスを繰り返している。橋爪所長がキレる理由のうち3割は明日花だ。しかしながらモテるので男には困らないようだ。同期3人は彼女を通して兄弟となり、新たな兄弟となることを願うひともいるようだ。


そんな歪な人達だが何故か嫌いになりきれない。

そんな環境に安心している私がいる。

おそらく、この中で1番私が壊れているからだろう。

何にせよ一つ変わったことは、毎晩飲むアルコールの量が増えたことだ。

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