人の惑星〜Planet of the Human~

黒片大豆

第1話

〜1日目〜

 地球との交流を図るべく、まず我々は、無作為に人間を一人さらってきた。しかし困ったことに、意思疎通を図ろうにも言葉が通じなかった。用意した翻訳機では、地球に現存する数百以上の言語をすべて網羅できず、会話が成り立たなかったのだ。我々は急きょ、宇宙船のAIを使い、捕まえた人間の言語の翻訳を試みた。


〜2日目〜

 我々は、彼と同じ格好に変態することとした。腕足が二本ずつで、目は二つ、口と鼻が一つずつ。普段、六つの目と六本の触手で行動する我々にとって些か不便な形だが、これが功を奏し、彼は心を開き始めた。


〜3日目〜

 身振り手振りで、わずかに意思疎通が可能になったが、未だ不十分である。もう少し踏み込んだ会話ができないものか。翻訳結果が待ち遠しい。


〜最終日〜

 宇宙船AIが翻訳を終え、やっと彼との会話が可能になった。我々は改めて、彼を拐った理由も含め、現状を懇切丁寧に説明した。しかし、どうも彼は腑に落ちないといった顔をしている。我々は、何か間違いを犯したのだろうか。


 我々の説明を聞いた彼は、

 顔と尻を紅く染め、短い尻尾を弄りながら、長い犬歯を有する口を開いた。


『実は僕、人間じゃないんだ』

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