「内見バトル」により貧富が決まる世界で、無職の主人公が悪の不動産屋と対決する。
ひたすら勢いがあって笑ってしまう。内見バトルの勝敗はどう決まるのか。最後まで読んでもいまいち不明のままだ。
悪の不動産屋は内見中に、住宅設備を利用し、客である主人公を物理的に殺害しようとする。主人公は物件に隠された収納を見抜き、罠を回避していく。客を殺せば勝ちなのか? しかし負けた相手を「地獄物件」へ送り込み暴利を貪ることで悪の不動産屋は栄えているというからそうではないのだろう。
主人公が罠を回避するたび悪の不動産屋は「信用」の「加点」を行う。「信用」が一定値を超えれば勝てるのだろうか? しかしその後「信用」の話は消え(カード限度額の概念として継続しているのかもしれない)、住宅設備による攻撃と収納による回避のバトルさえ後退し、互いの能力バトルへとズレていってしまう。その主人公の第2の能力もどのように発現し、いかに不動産屋を圧倒したのかも謎だ。
リアリティを支えるための作中世界内の設定や整合性にはほとんど無頓着なように見える。そんなことは関係ないと言わんばかりに、次々と多様な「それっぽい」要素がぶっきらぼうに出現していく。「内見パワー」という結局謎のままのワードや、「大切な人から借り入れた力だ」という突然の他力本願的で無責任なセリフに、ついつい笑ってしまう。
それから、タイトルとサブタイトルが「機動武闘伝Gガンダム」を思い出させて、個人的に好きな作品だった点もぐっとくる。
(KAC第2回アンバサダー企画お題「住宅の内見」/文=八潮久道)