団地の章1:まさかの事故物件に遭遇⁉
団地! そんな選択肢は私の中に一切なかったため、その言葉は目から鱗が落ちるようだった。
第一団地の賃貸物件なんて、今まで探していた部屋探しサイトには見当たらなかったし。鉄筋コンクリート造の壁がいいと聞いて賃貸のマンションを検索したことはあったが、出てくるのは分譲賃貸マンションくらいで、分譲マンションの持ち主が一定期間だけ部屋を誰かに貸すために、出て行く期限が決まっているものくらいしかなかった(しかもやけに家賃がバカ高いものが多かった)。
どうやって団地の物件を探すのか、というと、どうやらとある行政法人が運営しているサイトで見ればいいらしい。アルファベット二文字の、よくCMで「礼金なし」「仲介手数料なし」「更新料なし」なんて謳っているあそこだ。そこが、団地などの賃貸の紹介と契約手続き、団地の管理まで全て行っているそうだ。
確かに鉄筋コンクリート造ならば、隣が隣接している部屋でも選択肢に入れていいのかもしれない。そこで団地の物件を見てみると、なんとアパートの家賃相場よりも圧倒的に安いではないか! ただ、出てくるのは築年数の古~い物件が圧倒的に多かった。
そして古い物件は畳の部屋が多かったり、古臭い間取りのことが多い。「ええ~畳の部屋は正直いらないなあ」と妻はあまり気乗りしないようだった。
それでも中には比較的新しい団地もあるようで、母親が「これは畳じゃない部屋も多いよ。それに珍しく角部屋!」とお勧めしてくれた物件があった。
それは実家のあるT市のD団地という物件で、なんと4LDK! 二人で住むにはちょっと広すぎるが、その割には家賃は今住んでいるアパートやK市の二つ目のアパートの物件と同じくらいだった。畳部屋が一つだけあるが、他は洋室で、写真を見る限りそんなに古臭くはない、築25年と団地にしては新しめの、綺麗な物件だった。
妻も「ここなら普通に綺麗だし、団地もアリかも」と乗り気のようだったので、さっそく例のアルファベット二文字の行政法人の事務所に行って、内見させてもらおうとしたが、この部屋は今ガス機器の工事をしているところで、内見できるのは一週間後になってしまうとのこと。
しかしこの部屋はすぐに取り置きしてもらえることになり、他の人がサイトから見れないようにしてもらえるそうだ。その状態で内見から一週間後までの間、考える猶予がもらえるとのこと。これがこの行政法人のいいところで、他の仲介業者のように焦って決めずに済むのはありがたい、と思った。それに営利目的で運営しているわけではないためか、物件の仲介業者さん特有のガツガツした感じもないのが好印象だ。
しかしこの部屋、実は大きな問題があることが後に判明する。なんと、その部屋のある建物はどうやらとある事件のあった、どこかに事故物件のある建物だったようだ。
母親が職場の人にその物件のあるD団地のことを話題に出したことから、偶然それに気づいたようで(そのD団地であったとある事件は、実家のあるT市では結構有名なようだった)、一度営業所にその旨確認してみてくれと言われた。
そうして再び営業所を訪れ、その事件はどの部屋で起こったか確認する。すると私たちが希望している部屋は、なんと事故物件のちょうど真上の階の部屋だったことが判明。
事故物件に該当する部屋ならば流石に告知義務等があるとは思うのだが、どうやらその真上の部屋の場合では、こちらから聞かない限りは教えては貰えないようだ。家賃も普通に高めだったため、まさか事故物件のすぐ近くの部屋だとは思いもしなかった。
いつもならば大○てるなどのサイトで、物件が事故物件に該当しないか調べる癖をつけていた私だったのに、今回はバタバタしていたせいか、すっかり事故物件の存在を失念していた。事故物件というのは意外と身近に存在するようなので、気にする方は注意してほしい。
結果、取り置きしてもらった物件はその場でキャンセルに。D団地には他の物件もあったが、どれも同じ建物ではあったので、どうにも気持ちが悪いとそのD団地自体が物件探しの選択肢から外されることになった。
D団地は外見も小綺麗で見晴らしの良い高台にあり、妻も満足の物件だっただけに、その一件のせいで決まったはずの物件をキャンセルしてしまうというのは非常に残念ではあったのだが。
しかし今後も真下の部屋の事件を意識しながら生活する羽目になるよりはマシだろう、と私たちは切り替え、再び物件探しは振り出しに戻ることとなった。
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