本編
第11話 把握
「いってきまーす。」
俺はそういうと家を出た。昨日はいろんなことがあったが学校は今日もあるのだ。夏の強い日差しが体を刺すように照らしてくる。数分歩くとなゆの家が見えてきた。
「あっ、おはよう、あーくん!」
「おはよう。じゃあ行こうか。」
俺となゆは一緒に学校に行く約束をしていた。俺は学校行ったら喋れんのはなゆだけだし、なゆもそうだろう。なゆと他愛ない話をしてると学校についた。校門をくぐると周囲の視線が集まるのがわかる。種類としては嫌悪が一番多くてたまに憎悪や嫉妬、好奇心が混ざっているという感じか、まあ妥当だな。だが見ているだけで話しかけてくるやつはいない。俺はふと隣のなゆを見た。
「大丈夫か?気分は?」
「大丈夫。こうなるのはわかってたから。」
「それはよかった。じゃあ行こうか。」
俺たちは廊下で別れてそれぞれの教室に入った。教室に入ると先ほどと同様の視線を感じる。その中でも特に強い視線を送ってきたほうに目を向けると
「起立、気を付け、礼。」
何事もなく朝会は進んでいく。と思っていたら最後の先生からの報告で
「神野は朝会が終わったら職員室まで来るように。以上」
まじかぁ、めんどくさいな。俺はそう思いながらも朝会が終わった後職員室へ足を運ぶ。そしてドアの前に立ち3回ノックをしてからドアを開ける。
「失礼します。神野明日翔です。」
「こっちに来てくれ。」
瀬川先生が出迎えてくれ、そのまま奥の応接室に連れていかれた。応接室に入ると少し豪華そうな椅子に座らせられ、その前には瀬川先生と学年主任の先生が座った。すると学年主任のほうがしゃべり始める。
「何でここに呼ばれたかわかるかい?」
「あぁ~、昨日の件ですか?」
というかこれ以外ないだろう。俺前はそこそこの優等生で通してたし。
「そうだ。」
「その件に関してはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
俺は別に罪の意識がないわけじゃない。なゆを寝取ったことを後悔していないだけで唯人への罪悪感もあるし、この件は完全に俺が悪いとわかっている。だから俺はちゃんと謝ることにした。
「そ、そうか。謝罪を受け取ろう。ではもうこのような事態を起こさないように、分かったね?」
俺がちゃんと謝ったことを意外そうにしている。なんだよ、そんなに謝るイメージないか?そんなことを考えながら返事をする。
「はい。」
「よし、ではかえっていいぞ。」
「え?」
「なんだい?早く帰りなさい。」
「こんな軽くでいいんですか?もっと重く叱られると思ってました。」
俺がこう思うのも仕方ないはずだ。俺がやったことに対しあまりに説教が短すぎる。
「あぁ、もともとうち学校は妊娠でもしない限り生徒の恋愛に口を出さない方針だからな。それなのにあの会長のせいで事態が大きくなってしまってね。君が謝罪をして反省の意思があるということだけでも情報を持っておきたかったのだよ。まあ私は君が謝罪しないと思っていたからもっと長引くと思っていたけどね。」
「そ、そうなんですね。」
俺はそそくさと職員室を出た。職員室の中とは違う緩やかでさわやかな空気を肺いっぱいに吸う。
今日分かったのは教職員は味方ではないが敵でもないということである。
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