第7話 高揚 side逢川唯人

「復讐しない?私たち二人で」


「………え?」


……復讐?何を言っているんだこの人は。すると会長さんが少し心配そうな顔をしながら言葉を続ける。


「もしかして復讐って知らない?」


「…そのくらい知ってますよ。」


 ちょっとイラっときたので声に不機嫌さが混じる。


「じゃあしようよ、復讐。君は彼女を寝取られたのだろ?なら君はあいつら2人に復讐をする権利がある。」


「…まぁ、」


 今までそんなこと考えてもいなかった。なゆが取られたのは俺が甲斐性ないからだと思っていた。


「いいか?君は何一つ悪いことをしていない、被害者なんだ。悪いのはすべてあの2人なんだ。今のままだとあいつらがこのまま幸せに生活していくままだ。それでいいのか?」


「いやだ。」


 即答だった。明日翔となゆがこのまま幸せになっていく姿を想像しただけで身体中を嫌悪感が駆け巡る。


「だろう?ならしようじゃないか、私たち2人で。」


「…わかりました。よろしくお願いします。」


 少し悩んだがこのままでいるのはどうしてもいやだった。それに復讐するとなった瞬間少し心が高揚した気がする。


「でもどうやって復讐するんですか?僕ら学生なんでできることも限られてくると思うんですけど。」


「ふっ、では作戦を立てようか。私の家に行くぞ。」


「はい?」








「え、えっとだなっ、ま、まずは作戦をっ、立てていこうと思うのだが。」


「なんで家に呼んだ本人が一番緊張してるんですか。」


 今僕はあの公園から歩いて20分ほどのところにあった会長さんの家にお邪魔している。あのとき僕はなんか感情が吹っ切れていて会長さんの誘いに何の迷いもなく乗った。まあその時の会長さんはちょっと戸惑っていたけど。いざ会長さんのお家を見るとだいぶ豪邸だった。聞いてみると親が成功している人らしい。そして今は会長さんの自室で作戦を立てようとしているところだ。なぜか会長さんはめちゃくちゃ緊張しているが。


「しょっ、しょうがないだろう。異性を部屋にあげたことなどないのだからっ。というか家にも呼んだことないぞ。」


「じゃあなんで僕を家にあげてくれたんですか。」


「そっ、それはいろいろあるんだよ、いろいろ。」


「はぁ、そうですか。」


 全く話が進まない。ちなみに先ほどお風呂に入ってきたため部屋中にフローラルないいにおいが漂っている。ちなみにちゃんと別々で入りましたから。決して何も起きていません。決してです、決して。


「ん?どうしたんだぼーっとして。」


「いえっなんでもありません。それよりはやく作戦立てましょう。」


「そっ、そうだな。まずちょっと説明をさせてくれ。」


「はい、お願いします。」


 会長さんが急に真面目な顔になって喋りだす。


「えっとだな、私たちはあいつら2人に復讐をしたいわけだが復讐の方法にもいろいろあると思うんだ。1つ目は精神的に落とすやり方、2つ目は社会的に落とすやり方、3つめは暴力だ。理解できるか?」


「はい。」


「で、まあめちゃくちゃ殴ってやりたいがそれは人としてだめだし最悪君にも被害が行くかもしれない。だから3つ目の暴力は却下だ。だから1,2個目のやり方でやっていく。でだな、1つ目の精神的に落とすほうなんだが、」


 そこまで言うと会長さんは頬を赤くした。


「どうしたんですか?」


「そ、そのだな、私と付き合うというのはどうだろうか?」


「え?」


 どういうことだろうか。俺と?会長さんが?付き合う?


「あっ、あくまで疑似的にだ、偽カップルということだ。」


「あぁ、そういうことですか。でも何でですか?」


「まぁ、自分で言うのもなんだが私はそこそこ整った顔立ちをしているだろう?」


「そうですね。」


「そ、そう即答されるのも照れるものだが。まぁだから神野明日翔には少なからず嫉妬心を覚えさせることができると思う。さらにこれで一番衝撃を受けるのは黒咲なゆだ。彼女はまだ君のことを自分のものだと思っている。だからそれを急に奪われた、要するに今の君の気持ちを体験させられるはずだ。」


「た、確かに。」


 会長さんの言っていることは結構理にかなっていると思う。これだったらあの2人に復讐できるかもしれない。


「わかりました。会長さんの作戦に乗ります。」


「じゃあ、今から疑似カップルということでいいか?」


「はいっ。」



 こうして俺と会長さんは疑似カップルとしてふるまうことになった。







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

※この2人は主人公とヒロインではありません




あと1話ほど逢川唯人視点を続けさせていただきます。


 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る