第6話 希望 side逢川唯人
「君、逢川唯人君だよね?こんな公園のど真ん中でどうしたの?」
「誰ですかあなた」
僕は見知らぬ人に名前を知られていたことに恐怖を感じたがそれ以上に今は放っておいてほしかったためぶっきらぼうに言葉を返す。するとその女性は言う。
「私を知らないか。まああの程度のこと覚えてなくてもしょうがない」
「え?」
「いや、こっちの話だ。それより私の自己紹介をしよう。私は七瀬凛、君の学校の生徒会長をしている。」
あぁ、思い出した。そういえば入学式などで前で話していた気がする。たしか誰にでも冷たい態度をとるため氷姫とも呼ばれていた気がはずだ。そう考え僕は会長さんのきれいな顔をじっと見つめる。
「な、なんだ私の顔を見つめて。少し恥ずかしいからそんなに見つめないでくれ。」
ん?誰にも冷たい態度をとるから氷姫なんじゃなかったか?まあいい。今の僕には関係ない。
「申し訳ないですが早くどこかに行ってくれませんか?今僕は一人でいたい気分なんですよ。」
今の僕の心情上ほんとうに早くここから離れてほしいためかなり強い口調で言う。
「悪いがそれはできない。」
「なんでですかっ。」
イライラしてきた僕はほぼ叫びながら言葉を返す。すると、
「今、君が死を考えているからだ。」
え?なんでわかったんだ?
「図星だろう。そしてなんでわかったのか。それは私も昔同じような経験をしたからだ。今の君はそのころの私と同じ目をしている。」
「は、はぁ」
「それで、君はなんで死にたいと思ったんだい?」
「……なんであなたに言わないといけないんですか。」
「うーん、そうだね、私は死にたいと思っていた時ある人に助けてもらったんだ。私はその人の名前も知らなかったけど自分の悩みを話してみた。そうしたら心がぐっと軽くなったんだ。」
「…そうなんですか」
「うん、だから君も私に話してごらん?あの人のようにうまく聞けるかわからないけど話したら楽になるからさ、ね?」
「……わかりました。」
僕も心の奥底では誰かに聞いてほしいと思っていたのかもしれない。だからか、会長さんに話してしまおうと思った。それから僕はなゆと付き合っていたこと、仲の良い幼馴染の明日翔がいること、そして今日明日翔になゆを寝取られたことを細かく話した。最初はそこまで話すつもりはなかったのに話しているとだんだん思いがあふれ出てきて細かいところまで全部話してしまった。特に最後のほうなんかは落涙していたと思う。それでも会長さんは最後まで親身になって聞いてくれた。
「…なにそれっ、その二人最低じゃんっ」
会長さんの口調が変になっている。まあそれも真剣に聞いてくれたということだと思うから僕は少しうれしくなる。
「ようするになゆは君と付き合っているのにも関わらず明日翔ってやつと関係を持っていたってことでしょ?」
「まぁ、そうなりますね。」
「サイテーじゃん、くずじゃん、頭いかれてるよね?死んでいいと思うよ?」
「はは、ちょっと言いすぎですよ」
とは言いつつも全くをもって言いすぎなんて思っていない。はっきり言うともっと言ってほしいぐらいだ。
「うーん、じゃあさ、君はどうしたいと思っているんだい?」
「そう、ですね。まだ特に何も考えていないんですけど。」
「じゃあさ、………」
「はい?」
「復讐しない?私たち二人で」
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