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目をさますとホラーはいつの間にか銀色のカプセルを背もたれにして、大地の上に座り込んでいた。どうやらホラーはいつの間にかここで眠りに落ちていたようだ。
周囲を見渡すと穴の中にひなの姿はなくなっていた。
ひなちゃん。
ホラーは心の中でひなの名前を呼んだ。でも、ひなの声はどこからも聞こえてこなかった。次の瞬間、ぶるっとホラーはその体を震わせた。ここは寒い。しかもホラーは白いパジャマという服装だった。
ホラーはひなのお話を思い出した。
雪山で遭難をする女の子の話だ。ホラーは今自分がその女の子と同じような境遇にあると思った。お話と違うのはホラーの年齢が女の子と呼ぶには少し高めなことと、それから不思議な生き物がホラーの近くにいないことだ。
ホラーは体を起こしてカプセルの中を一応、確認してみた。
カプセルは空っぽで、その中にひなはいなかった。
ひなは再び、ホラーの前からその姿を消してしまったのだ。きっとひなはどこかで眠っているのだろうとホラーは思った。そしてホラーと同じように夢を見ているのだろうと思った。その夢が、さっき見たホラーの夢と同じように、とても幸せな夢であるようにとホラーは祈った。
するとなぜかホラーの体の内側がほんの少しだけあったかくなったような気がした。ホラーはそこで思考を止めた。
ホラーは大きな穴の中を見渡した。周囲は壁。天井は目には見えないくらいに高く、暗い闇が支配していた。明かりはところどころに光っている(珍しい)青色の水晶の光だけだった。
足の裏がとても冷たかった。当然だ。ホラーは裸足だったのだから。(足の裏がとても痛かった)
「はぁー。まいったな」と、腰に両手を当てながらホラーは言った。
「でも恨んだりしないよ。ひなちゃん。だって、ここに来たのは、私の意志だったんだからね」
ホラーはそう言うと、目をつぶり、大きく息を吸い込んで、そしてゆっくりと上を見上げてそれを全部、吐き出した。(白い息が見えた)
「夢は終わり」とホラーは言った。
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