第2話
天井がいつもよりも近い。人工的な明かりが部屋を照らしているが、気味が悪いのはどうしてだろうか。
気を失う前に思っていた感情の影響だろうか。それとも、手首と足首にある黒く光る鎖のせいだろうか。いやどちらもだろう。
なんで私が、私たちがここに閉じ込められているんだ?安全な場所と言いながら、ここは鳥籠であった?あの光や音楽は何だったんだ?職員と一緒にいたテロリストらしき人は誰だ?国民を分ける基準になったのは何だろう?
たくさんの疑問が襲ってきて、ベッドで座ったまま考える。部屋の壁を見つめながら、視界から違和感を訴えてくる鉄格子には触れたくない。意識を逸らそうと必死であったから、疑問が襲っていたのだろう。
考えても正解は分からないので、私の状況を確認していこう。鉄格子があり、ベッドある反対側には小さなトイレが設置されている。手と足には枷がある。
ここは牢屋であった。そして、監視カメラも見つけた。見張られていると思うと気が滅入る。
「はぁ…」
私のため息が部屋に響く。このまま起こした体をベッドに倒して、布団かぶりながら
「どういうことなの!?」
思いっきり叫んだ。頭がいっぱいで処理が追い付かないし、牢屋的なところに閉じ込められてる状況に耐えられない。
「そもそもなんで私たちが閉じ込められてるんだ!あいつが言っていたことが事実だと仮定すると、この国はどうなっているの?夢なら早く覚めてほしいんだけど…」
可能性の低い願望を言ったところで、この状況が変わるわけではない。顔を出して、とりあえず抜け出す方法がないか探そうとすると
「叫ぶほど、元気なんだな。君たちのせいで上から注意されてしまったじゃないか」
職員と目が合った。私に注射をしてきた、あの忌々しい職員だ。格子の外から眉をひそめているが、笑みを浮かべる顔に体が震える。拳を握りしめながら、職員に近づいて
「知らないわよ。私はあなたたちの思考回路を知りたいんだけど。国を思い通りに動かすために、一部の国民を閉じ込める発想に至った経緯。そして、今の私の状況とこの国が、世界がどうなっているのか教えていただけるかしら?」
私の手にある枷を見せつけながら、職員を睨んだ。職員はさらに口角を上げて
「…君はやはり聡明で、勇敢な人間だな。だが、この国にはもう必要ないんだ。3日前にうっかり話してしまったが、従順じゃない国民は閉じ込めることが決まっていたんだ。それだけしか私は教えられないな」
澄ました顔が気に入らないし、神経を逆撫でる声。胸にドロドロとした感情が生まれてしまう。
「なるほどね…。この国はこんなに腐っていたことに驚いたわ。秘密を知ったからには、この現状を変えるわ!私はあなたが言うように聡明で勇敢な人間なの」
職員は目を見開き、声を震わせた。
「…そうか!やはり君たちは面白いな。君以外も似たようなことを言っていた。だがな、いつまで我々に楯突くか楽しみだな。飽きさせないでくれよ。籠の中に閉じ込められた人間たち。処遇はどうなるかはまだ決定してないから、まだここにいることになるが、くつろいでくれ」
狂気的な笑みを見て、背中が寒くなる。私は距離を取るためにベッドに座りながら、
「牢屋でくつろげるわけがないわ」
「3日ほど寝ていたのだから、居心地が良いのは間違いないだろう」
「寝てたのはあの注射器に入ってる薬のせいでしょ」
「さあな。じゃあ、会議があるからまた」
首を傾けて、そのまま去っていく。すぐに足音が聞こえなくなった。私は拳を握りながら、
「絶対にここから出てやる」
決意が部屋に響くのであった。
仮 空蝉逆転 泡沫 知希(うたかた ともき) @towa1012
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