第8話 居心地

「ごめん。待った?」


「いや、来たばっかり。こんなちゃんとした高校の前で待つ日が来るとは思わなかったわ。」


「そう…」


「まあ乗って!」


白いセダンの車。

ドアを開けてくれた。


「ねぇ?いくつなの?」

「俺?18」

彼は治。私の2歳年上。

高校は一年の時に辞めてしまったらしい。

たまに土方の仕事をしたり夜の仕事をしたり。

自由だと言っていた。


「どこか行きたいところある?」

「別にないよ」

「じゃあうち来る?」

「いいよ」


車で海沿いの道をひたすら走る。

同じ中学だったらしいけどバスの区域らしく随分遠い。

車の中は洋楽が流れていてあんまり会話がない。


「そういえば誰に番号聞いたの?」

「涼が会いに行った日、俺近くで待ってた」

あの日か。


あの日、家の近くに涼がきた日。

うちの近くには小学校があり、門とかもないので校庭で話していたけど

学校の裏の駐車場で待っていたらしい。


「手、クロスさせて拒否したんでしょ?」

って治は笑った。

そうだった。キスしたくなくて。

「あー。そうだったかな」

「俺と涼はタイプが違うから」

「違うから?」

「だから俺なら大丈夫かと思って」


「別にタイプでもないけどね」

「言うね〜」

治はケラケラ笑ってた。

余裕もあるし自信もありそう。


まぁ、そうだろうね。

背も高いし痩せていてモデル体型。

今思えば、はじ◯しゃちょーを更にイケメンにしたような感じ。


でも、タイプではなかった。

というか私はイケメンが好きではなかった。

B専というか自分からいいな。と思う人は一般的には見た目が良くないとされる人が多かったし、顔より雰囲気で好きになっていた。


自分から告白したことはなかったので常に片想いで終わっていた。

告白されて付き合ったり流れで付き合うので

付き合う人は積極的な人ばっかりでイケメンだったりモテる人が多かったけど彼らの顔が好きなわけではなく、

もちろん治の見た目で惹かれることはなかった。


なかったけどふとした時の横顔とか後ろから見た時のスタイルの良さに関しては綺麗だなとは思ってた。


「付き合ってよ」

「え?」

「俺じゃ嫌?」

「嫌ではないけど好きでもないし」

「好きには後からなってくれたらいいよ」

「私のこと好きなの?」

「好きだよ」

「何が好きなの?」

「これから好きになるから」

「これから?」

「そうこれから」

私と同じような考え。

付き合ってから好きになればいっか。みたいな。

好きにならなければ別れる。


治に対しての初めての印象は私と似ているなって思った。

それとまだ何も知らないけど少し知りたいと思った。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る