【KAC20242】郭公

雪月

郭公

「いかがでございますか?中々に結構ケッコーな物件じゃございませんか?地上20m、暖房付きですよ」


「ははぁ……これは確かによい物件ですね。なぁ、君もそう思わない?」

「そうかしら……一寸騒々しい気がするわ。それになんだか煤っぽいし」

「たしかに……少し煤っぽいなぁ」

「それに直ぐ暖かくなるし、暖房はいらないでしょう?」

「それもそうか……すいません、別の物件はありませんか?」


「えぇえぇ、結構ですよ。他に紹介した方々も機械の音が苦手だとかで空いていた物件でしたから、他にもいくつか紹介できる物件はピックアップしてありますからね、次の物件に参りましょう」



「おや……この辺りにはたしか高架水槽付きのアパルトメントがいくつか建っていたハズなのですけどねぇ」


「何も無いですね……」

「ほんと……更地だわ」


「あ、もしそこ行くお方!ここらで何かありましたでしょうか?住宅街になっていたハズです」


「あぁ!バッファローじゃ!バッファローが全部壊していってしまったんじゃあ!!ヒャーーっ」


「あ……行ってしまわれましたねぇ

……またバッファローでございますか、大変結構です。ですが困りましたわぁ……紹介できる物件はこの辺りに集中しておりましたのに」


「えぇ!?」

「あら……」


「お二方のご希望には沿いませんが、残すはあの物件だけですねぇ……ま、一度御覧くださいませ」



「いかがでございましょう。澄んだ空気、爽やかな風、僅かな木漏れ日、結構な物件だと思いませんか?」


「森はいいね……ボク、こういう森で産まれたんだ」

「私もよ……都会に憧れて街中の物件を探して貰ったけれど、やっぱり森がいいわ」

「そうだね……ここにしよう」


「お決まりでございますか?」


「はい、ボク達ここで営巣します」

「色々ありがとうございます、案内人さん」


「いぇいぇ、お役に立てたなら結構でございます。ワタクシも色々見させていただきましたからね!卵が産まれましたらお知らせくださいませ!カッコーと鳴いてお祝いをお持ちしますから、ね」

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