第三輪 私は旅に出る
――私は旅に出る。今は亡き君を探す旅に。
私には彼女がいた。とても愛していたんだ。でも、君は自殺をした。別に喧嘩とかをしたわけではない。君は、どうやら虐められていたらしい。
私がこのことを知らなかったという罪悪感に、襲われた私は自殺をしようとしたが、飛び降りれなかった。君に失礼だと、思った。君は頑張って生きたのに……
どこに行けばいいか分からないけど、どこに行くかは決めている。君との思い出の場所を周る。
君と始めてのデートをした遊園地、一緒に花火を見た場所など色々な場所に行った。どんな場所でも何があったのか思い出せる。どこに行っても君の笑う声を思い出せる。その度に私は悲しくなる。それでも泣かない。君の分も強く生きようと思うから。
色々な所を周っていたら、ふと思い出した。まだ君と始めて出会ったあの場所に行ってない。
君と出会ったのは確かこの公園だった。ブランコに乗って俯いている君に私が声をかけたのがきっかけだった。そんなことを思い出しながらブランコに座る。
そよ風と共に君の声が聞こえてくる。私の名前を呼んでいる。周りを見渡しても、君はいない。そりゃそうか。だって君はもういないんだから。
もう一度ブランコに座る。目の前に半透明の君の姿。思わず抱き締めたが、君に触れられない。死んでいるからか。
「ごめん。私のせいで死んだのに、私は何もできなくて……」
君は首を振る。
「あなたのせいじゃないよ。あなたは何も悪くない。私を愛してくれた」
いや、全部私のせいだ。私が君に何も出来なかったからだ。
「あなたがいなかったから、もっと早く死んでたと思う。あなたといる時だけは、楽しかったよ」
君は少しずつ透明になっていく。
「ねぇ、最後に伝えていいかな?本当は生きている時に言いたかった。ずっと大好き……愛してる」
そう言って君は消えた。私は家に帰り屋上へ向かう。私の家は10階建てのマンション。強い風が吹く中、君の声が頭の中を回る。柵を越える。
――私は旅に出る。君が居る遥か遠い場所に向かうために。
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