第14話 『決定的事実』


 未だに世界的に勘違いされている重大事項がある。


『日本は原爆で降伏した』


 コレである。大間違いである。

 日本の降伏はソ連の対日参戦によるもの。


 アメリカ軍による国際法違反まるだしの民間人大量大虐殺作戦の結果ではない。


『はだしのゲン』にもしっかり描かれているので見たことある人も多いだろう。

 原爆投下直後のヒロシマでもちゃんと水道が出てたりする。


 あれはつまり、ライフライン(生活に必要な電気・ガス・水道とかのことね)を破壊できていない事を如実に現している。

 地下に埋没されているそういう施設は思いの外、空爆に強く、破壊が難しいのだ。


 市電なんかは原爆投下の3日後にはもう走っている。

 つまり電力も復旧している。(なんと当時被爆した車両は今なお現役で走ってるゾ)


 陸戦部隊が攻め込んで来たわけではないので、爆撃さえ終わればなんとでも復旧可能なのである。


 怖ろしいのは敵兵が入って来ること。占領されること。

 爆弾ではいくら威力があってもそれが出来ないのだ。


 ていうか、そもそもそれ以前にアメリカは日本全国の都市を空爆して焦土にして原爆どころじゃない数の民間人を殺傷してたでしょ?

 それで日本は降伏しましたか? って話なんだが。


 ほとんどの外国人は、日本には原爆しか落とされていないと思っている。

『火垂るの墓』を観て、劇中の『神戸大空襲』のようすを原爆だと思ってる外人さん多数派問題。


 おいおい、ぜんぜん違うだろ。焼夷弾がいっぱい降ってただろ。原爆の事はやたらと誇ったり、「日本人には2発じゃ足りなかったな! HAHAHAHA!」なんてクソしょーもないジョークを言ったりウケたりしてる癖に、根本的にどんな爆弾なのかは知らないんだな。(死ねばいいのに)


 まぁ、一般人はまだしも、やった張本人のアメリカ軍は、ちゃんとその辺把握しとけよと思うのだが。


 アホのアメリカ軍は、いや、原爆を正当化するためにそう言わざるを得なかったのか、どうしても『アメリカが実力で単独で勝った』という事にしたかったのか。

 とにかく『日本は原爆で降伏した』って事にして吹聴した。しまくった。未だに吹聴し続けている始末である。


 そのせいでケンカせずには居れないアホな軍隊が、さらにアホさを増して21世紀になってもアフガニスタンとかで手酷くやられているのだが。(2021年8月30日、アメリカ軍はアフガニスタンから撤退、20年におよぶ『アメリカ史上、最も長い戦争』ともいわれた不毛な軍事作戦に終止符を打ちました。ぶっちゃけ負けた。……莫大なカネと人命をドブに捨てて。)


 そして世界中のかなりの数の人間が(日本人も!)そのアメリカの吹聴を真に受けている。(オーマイガー!)

 まぁ、説明するのに分かりやすいからなぁ。


 現代人にとって生まれる前に無くなった『ソ連』の名前なんか出されても全く興味わかないだろうし、仕方ないっちゃ仕方ないのかなぁ。


 で、

 その考えそのままにアメリカ軍はベトナムに戦争を仕掛けてどうなりましたか?

 ──と。


 圧倒的空軍力による空爆。

 最終的には、第ニ次世界大戦で使用された全爆弾『約220万トン』を遥かに凌ぐ量、ラオス・カンボジアも含めて『1400万トン』以上の爆弾をあのへんに落として、落として、落としまくって、それでなんとかなりましたか? 

 ──と。


 なりません。


 どんなに激しくても一時のことで、嵐を避けるようにやり過ごせてしまう空爆では、

 人は頑強に屈服しないのである。

(戦車不要論を跳ね除けて、戦車が無くならないのにもそこに大きな理由がある)


 結果、アメリカは仕方なく陸戦部隊を投入、案の定、耐え難い損害を出し、地獄の地上戦の凄惨な様子がアメリカ国内に報道され、「ギャー」と大騒ぎになり反戦活動が活発化、戦争継続が不可能となって、手痛い敗北を喫することとなったのだ。


 戦争を決着するのは陸戦部隊。陸戦兵器。

 こいつらがどう動くのかが、現代でも最重要ポイントなのだ。


 そんな国を屈服させる陸戦兵器が、今まで越えられなかった山を、気軽にピクニック気分で乗り越えて殴り込んでくる。

『山』が敵の陸戦部隊を防いでくれることをみんな当てにしているのに!


 その恐ろしさが分かってもらえるだろうか?



 気づくべきだった。


 何に?


『決定的事実』にだ。




 我が国には、日本には、自衛隊には……。


 あの物体を撃破できる手段が無い。


 立体的に高速機動する戦車以上の強度を持った陸戦兵器を撃破可能な手段が無い。

 そういう用途の武器がない。

 あるわけない。

 想定されていない目標に対抗する兵器など存在しない。

 ドクトリン(教義)も無い。


 高速立体機動陸戦兵器の脅威に対抗するための、戦うための、軍事行動をとるための

 指針となる根本的な原理原則が……。


 ──── 現状、存在しないのだ。



 あくまで『現状』では『無い』の話だが、

 そこが一番の問題なのだ。


 現状で対応が無理ならば、これからの一歩先を!

『無理』が『無理で無くなる』よう一刻も早く対策を講じなければならなかったのだ。


 あのロボットが、

 あの陸戦兵器がデマなどではなく実在と確認された時点で。


 それなのに!

 それなのにだ!


 その講ずる時間を。

 貴重な時間を。


 ──────────── 日本政府は失った。



 この『決定的事実』に。


 ここに至るも、

 一体何人の人間が気がついたというのだろうか?



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 追記。


 なぜ日本は各都市を無差別爆撃で焼き払われ、

 東京に至っては原爆を遥かに超える10万人以上の一般市民をナパーム弾

(水では消せない、ねっとりゼリー状に加工したガソリンの固まり、それに火がついた炎の玉を大量に撒き散らすという非常に残酷な焼夷弾。1983年、特定通常兵器使用禁止制限条約で規制された『非人道兵器』。この燃える粘液が人体なんかにべちょっとくっつくともう取れない、生きながら焼かれる。人も建物もみんな生きたまま焼かれる。神戸大空襲で『火垂るの墓』のお母さんが全身包帯で巻かれたまま死んだのもこれのせい。アメリカが無茶苦茶したベトナム戦争で女の子がナパーム弾で燃え上がる村から素っ裸で全身真っ黒に焼けただれて逃げてくる『ナパーム弾の少女』の映像が有名。)

 で焼き殺されているのに。

 さらに原爆まで投下されるという絶望的状況なのに降伏しなかったのか?


 それは負けるにも負け方というものがあるからである。


 人であっても国であっても、相手を追い詰めれば負けを認めるなど、大間違いである。

『負けを自覚する事と、負けを認める事には大きな隔たりがある』

 まったく別問題だと言っても良い。

 ボクシングのノックアウトのように、簡単にケリがつくことでは決してないのだ。


 アメリカという国家ももちろんそれは分かっている。

 分かっていたから『次の宿敵になるであろうソ連の眼の前で2発の原爆のお披露目を済ますまで、決して日本が降伏できないようにもっていった』のだ。


 もし、本気でそれが分からんようなやつが国のリーダーをやっているようじゃ、これからも当分、まったく必要のない無駄に流される人々の血が減ることはないだろう。




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