第34話 大統領府から来た刺客

 アメリカ合衆国大統領首席補佐官 ジョセフ・テイラーと、

『巨大ロボット兵器対策作業部会調整役』他五名が極秘裏に来日。

 官邸危機管理センターにおいて鳥庵(どりあん)総理らと意見交換した。


 この『アメリカ合衆国大統領首席補佐官』とは、いつでも大統領に会える立場で実質的に大統領に継ぐ権限を持つ。

 ホワイトハウスの影のナンバー・ツーとも言われる。


 そういうのが子分らとともに日本にやってきた。

 そこら辺がちょっと面白い仕組みで。この『補佐官』とかいう人らは──


 1位、大統領

 2位、副大統領

 3位、下院議長

 4位、上院議長

 5位、国務長官

   ・

   ・

   ・

 といった、閣僚の序列に入っていない。

 なのになんで、ナンバー・ツーとか言われてんの? って話。

 偉くもなんとも無いじゃん? 


 ところが、補佐官が大統領の〝 隣の部屋 〟で執務しているのに対し、閣僚の国務長官は1マイル,(約1.6キロメートル)離れた国務省に執務室があるという距離感の違いがあったりする。


 なぜ?

 実は、アメリカ大統領は基本、内閣閣僚に助言を求めたりしない。

 アメリカ大統領は内閣閣僚,(大臣さんらのことね)にさして信頼を置かない場合が多い。


 閣議,(内閣の会議)は、閣僚らと議論をする為ではなく、すでに決まったことを伝達するためにある状態。

 機密保持の観点からも15人以上もの人間が集う閣議は情報漏洩防止に向いていない。(重大事項な相談が出来ない)


 そもそも閣僚は政治的思惑で選定されるので、大統領が個人的に選べるわけじゃないし、大統領より自分のバックに付いてる強力な利益団体の方が大事だったりするわけで。


 ……まぁ、ある日、外からポーンとやってくる形で現れる、政治のことなんかホントにわかってるのか? って感じのドシロウトのスットコ大統領なんかとすんなり仲良くなるのは非常に難しい感じな人種── っぽくなるのかな?


 なのでそういう、政界のプロみたいな怖っちょい,(おっちょい)連中ではなく、大統領の仲良しグループをつくろう! って感じで『大統領府』が作られ、そのメンバーを大統領自身が選らぶ、それが補佐官。安全安心のインナーサークル,(側近)と呼ばれるもの。

 大事なことは、みんなこのインナーサークルの中で相談して決めちゃうって感じなんだって。


 その仲良しグループ補佐官らの中で大統領に最も影響力をもつのが

『アメリカ合衆国大統領首席補佐官』

 大統領から外交政策上の権限を移譲されている。



 まぁ、実際の所『首席補佐官』がどのくらいの影響力を持つかというのは、その時の大統領によるとしか言えないのだが。今の大統領に限っては、かなりヤバイ。

 どのくらいヤバイかというと。



 ────むかーし……

 日本のお相撲さん、その横綱。

 アホな英語に訳すと、

『スモウー・レスラー・グランド・チャンピオン』とかなんとか。そういうのね。


 その、とある有能な横綱が、あるとき〝 おかしく 〟なりました。

 その横綱は、相撲一家というか一族というか、親も叔父も実の兄も有名力士。

 有名どころか兄弟そろって現役横綱。


 この『兄弟横綱』というなんとも華々しい響きよ! もう一族絶好調な状態。

 この横綱もいずれ相撲協会理事長になるであろうことが約束されているような

 完全、勝ち組み、電車道、って繁栄の絶頂にあったのだ。


 それがあるときからまったく一家のコントロールが効かなくなって、言う事聞かなくなったと。一家からすると『暴走』し始めたと。


 一大事。

『相撲名門一家に何が起こったか!?』

『お家騒動勃発!?』


 当時のワイドショーはそりゃ騒いださぁ。

 横綱はわりとイケメンだったし、有名ヘアヌード女優と結婚寸前で婚約破棄したり。有名美人女子アナとできちゃった結婚することになったり。

(会見では、まだ妊娠してないと嫁に言わされてた、すぐバレるのに)

 ま、何かと「周りに流され過ぎじゃね?」って言われる人だったしね。


 で、そんな男が急に自分からマスコミに向かって兄を批判とかし始めちゃって。

 あれれ?…… と。


 どうやら、身内の言うことは聞かないが、専門の整体師の言うことだけ聞いていると。今まで元相撲力士であり、尊敬する相撲の師でもあったはずの父ではなく、そのわけの分からん相撲取りでもない、ただの整体師の言う事しか聞かなくなったと。


『整体師に洗脳されている!!』

 なにやら

「横綱になれなかった親父の言うことなど聞く必要がない」

「すでに横綱になって親を超えている貴方が、格下だった親に指図されるのはおかしい」


 などと吹き込まれているご様子。

 ってな感じで洗脳されてるっぽいと問題になった事件がありました。

 そのいわゆる『横綱洗脳騒動』が、どこまで事実かは知らないが。


 ────あの感じ。あの印象。



『アメリカ合衆国大統領首席補佐官 ジョセフ・テイラー』さんは


 大統領が聞くのは私の言葉だけ!

 私を通さなければ、どんな言葉も大統領には届かない! 的な言動も憚らず。

 自信満々かつ尊大な態度を隠しもしない男。


『大統領がもっとも信頼を置くナゾの整体師』

 そういう印象の人です。


 そういうヤツが『バァァァーン!』とブチ切れ気味に日本に乗り込んできたのだ。

 日本政府は慌てた。


 さあ、きみならどうする!?




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