社畜、治療する
「さて、ミキティーさん……落ち着いましたか?」
「……ハイ」
消え入りそうな声で返事をするミキティーさんに、少し罪悪感を覚える。いや確かに女性の体に許可無く触り、挙句の果てお姫様抱っこ……これは非常にマズイのは分かっている。
だが言い訳をさせて欲しい……不可抗力じゃん!!いやミキティーさん肩から全部右腕ないんだぜ?……まぁ、誰もあの場にいなくて良かった。恐らく目撃者も居ない……はず。
……取り敢えず、今はミキティーさんの腕からだ。確かアイテムボックスに……あったあった。
「あの……それは?」
ミキティーさんが俺の手にあるものを指差して聞いてくる。『千命樹の樹液』。どんな怪我でも再生させるアイテムだ。深層で稀に入手できる代物。そのことを説明すると、驚いたような視線を向けてきた。
「お兄さん……荷物持ちですよね?なのに深層に行けるレベルで強いって……凄すぎます!」
「あはは〜じゃ掛けていきますね〜」
「ちょちょちょっ!」
俺が肩に千命樹の樹液をぶっかけようとすると、彼女はぶっかけようとしていた俺の手を握って止めに入った。
「あの、なにか?……あ、別にこれ副作用とかは……」
「いやいやそんな貴重な物を私なんかに使ったら……!」
どうやらあまりに高すぎる価値に気が引けたらしい。こちらとしては宝の持ち腐れなので使って欲しいんだけど……もうこうなったら無理やり使うしか───
「ゆーくん???何やってるの???」
「ッ?!」
いるはずの無い、聞き覚えのある彼女の声が背後から聞こえた。いや、気のせい。そうただの気のせいだ。疲れているのかもしれない。そうに決まって───
「何で無視するの?」
「ヒュッ」
「ヒッ」
凍てつくような冷たい声に、俺とミキティーさんが小さい悲鳴をあげる。
「い、いや。ただミキティーさんに治療を……」
「ふーん、治療、治療ねぇ……」
「あ、安心してくれ!何もやましいことはしてない!」
「……まぁいいわ。で、貴女は誰なのかしら?」
「あ、それは俺から……」
俺はビクビクしながら新沙に事の顛末を説明した。すると彼女は納得したようで、表情明るくなる。胸を撫で下ろした俺は再度ミキティーさんと向かい合った。
「もうそろそろいいですか?ミキティーさん……」
「は、はい」
了承を得た俺は、ミキティーさんの肩に千命樹の樹液を浴びせる。どういう原理かは分からないが、右腕が再生し始めた。
数分後には元通りになり、機能もしているようだった。さて、ミキティーさんを助け出してから数時間程経った。もうそろそろ救助隊がいた所に着いたところだろう。いなくなっていることに気付かれたら面倒だ。
「ミキティーさん。もうそろそろ帰らないと、怪しまれるかもしないです」
「うわわ!もうこんな時間……あの、ほんっとにありがとうございます!もう続けられないなら辞めちゃおっかなって思ってたんですけど!お兄さんのおかげでまだまだやれそうです!」
「あはは、それは良かったです。それではまた」
帰っていくミキティーさんを見送りながら、俺は家にいる新沙の対処を考え続けた。
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えちょまです。
お久です。
最後ダメです。
それじゃ
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