社畜、ヒーローになる 後編
俺がミキティーさんを見つけた時には、もう既に蛙のモンスターが大きく口を開け彼女を丸呑みにしようとしていた。
俺は速度を上げて蛙の頭上に飛ぶ。落下する勢いを利用して、アイテムボックスから取り出した普通の短剣を突き刺した。皮がかなり分厚いようで刃がピキっと嫌な音を立てたが関係無しに力ずくで押し込む。
脳に直接届いたのか、蛙の悲鳴が沼地に響きわたる。間もなくして、蛙は絶命し地面に倒れた。
俺は地面に座り込んでいるミキティーさんの近くに駆け寄った。
「大丈夫ですか?!」
「………」
何も答えない彼女。もしかしたらモンスターに殺されると言う恐怖がまだ拭えないのかもしれない。彼女はA級探索者だが、明らかにあの蛙はA級以上の力を持っていた。内包されていた魔力かなり高かったし、恐らくS級寄りのA級と言ったところだろうか。
やはりダンジョンの進化の影響は凄まじいと実感していると、ミキティーさんが口を開いた。
「わ、私のヒーロー……!」
「……は、はい?」
ヒーロー……………ゑ?
「で、少し落ち着きましたか?」
「は、はい。お陰様で……先程はすいません。少し混乱していたようで」
「あぁ大丈夫ですよ。あんな目にあったばかりですしね」
意味不明発言をした後に、彼女を少し落ち着かせ事情を聞いてみるとやはり混乱していたらしい。
何故ヒーローにと言う言葉を選んだのかは分からないが、今は良しとしよう。
「それで、その腕どうしましょっか」
俺は彼女の右腕に目を向ける。最早そこにあったであろう右腕は、捻じ切られたような痕が残っており、肩から無かった。
「あはは……流石にもうこれ以上は探索者を続けられないかもしれないです」
……右腕が失くなった程度なら、俺は再生できるし何の支障もない。でもミキティーさんや他の探索者も、人間もそうだ。普通は失くなった腕なんて再生出来ない、出来るのはモンスターや一部の限られた人間だけだ。
……改めて自分が普通では無いと実感すると、少し心が苦しくなる。だが、今はそれどころでは無い。俺の目的は、いち早くミキティーさんを地上へ帰すこと。今の状況を見られたら確実に何らかの誤解をされるはずだし……だったら急がないとな。
でもミキティーさんは走れそうな感じじゃないし……しょうがないか。今はこれが一番だ。
「失礼しますよっと」
「え?え、え、え、ええええええ!!!」
俺が取った最前の選択は、お姫様抱っこ。これならミキティーさんに負荷も掛からないし丁度いい。少々荒っぽいが、そこは勘弁してもらいたい。
ジタバタと暴れるミキティーさんを抱えながら、俺は粘獣ダンジョンの中を走り抜けていった。
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えちょまです。
久しぶりですね。普通に新作やらリアルで忙しくて全然書いてなかった。
許してちょ
それじゃ
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