社畜、ヒーローになる 前編
「リハビリでダンジョン行ったのにまた行くはめになるとはなぁ」
俺はミキティーさんが今まさに死にかけている『粘獣ダンジョン』に向かっていた。
映像が乱れたたため何故死にかけていたのかは分からないが、あの後配信が終了したため命の危機っぽいのでそんなことはどうでもいい。
確か粘獣ダンジョンのランクはB級ダンジョン、A級探索者の彼女なら余裕で攻略まで出来る難易度だ。
何かイレギュラーがあったとしか思えないな……
「ひとまず、現地に着いてから考えるか」
俺は軽くダンジョンに潜る準備し、粘獣ダンジョンに向かった。
数分間走り続けて着いた粘獣ダンジョンには、恐らくミキティーさんの配信を見ていたであろう人達が集まっていた。
人目の多い中ダンジョンにソロで潜って行くのは憚られるが……彼女が死にかけてから数分は経っている。出血具合から見れば今もまだ生きているだろう……だが近くに彼女を瀕死に追い込んだモンスターがいたのなら、もう死んでいるかもしれない。
「……死んでいてもせめて死体を持ち帰るぐらいはするか」
勝手に殺すのもなんだが……俺は彼女が死亡している場合を想定しながら、着てきたパーカーのフードを深く被り人混みを掻い潜りなら誰にも気付かれないようにダンジョンへ潜って行った。
???side
「あーしくっちゃったなぁ…」
少し湿っている壁に背中を預けながら呟く。
私は
今日は粘獣ダンジョンで配信をしながら雑談や解説をしていく予定だったはずなんだけど……下調べが不十分だったみたいで、ダンジョン進化によって層主が強化&層主が徘徊するようになったことを知らずに潜ったらこれってわけ。
「下調べも十分に出来ないなんて、解説系配信者として失格だなー」
自分にダメ出しをしながら、ネジ切られた右腕に目を向ける。
これは徘徊していた層主によってやられたものだった。沼地の周辺を探索していると、突然沼の中から触手のようなものが伸びてきて私の腕をそそのままネジ切られてしまったのだ。
すぐにその場を離れようとするが、棘のように変形した触手で私を殴り逃げることが出来なかった。その攻撃で私は全身痣だらけに、血もダラダラ流しながらここに逃げてきたって訳なんだけど……
「まずいなぁ……ポーション全部叩き割られてらあ」
回復するためにポーチからポーションを取り出そうと中を漁るが……中にあったのは割れたポーションだけだった。
一応服を破って右腕に巻き付けることで止血はしているが、それでもだ。所詮こんなものは応急処置にしかならないし、ポーションが一本でもあればここから出ることは出来た。
自分の不甲斐なさに涙を流しそうになったので上を向いていると……地面がドスンッと揺れた。それは重い何かが飛び跳ねているような振動だった。
「まさか……嘘だよね?」
私は立ち上がり、隠れていた岩陰から顔を覗かせる。バレないように少しづつ頭を出していくと、水かきのような薄い膜の付いた足がちらっと見えた。ここは湿地帯のため色々なモンスターが居る。そのモンスターの中で唯一水かきを持っているのは、層主である『鬼蛙』のみ……つまりあの足の正体は……
答え合わせをするように顔を完全覗かせると……鬼蛙の巨大な目が私をバッチリ捉えていた。
「え、あ……」
私は瞬間的に理解した。『あれには勝てない』、と……傷口が開こうが関係ない。今すぐ逃げなければ死んでしまうと感じるほどの威圧感……まず以前見た鬼蛙と全く別物だった。体長は裕に4mを越え、おまけ程度にしか生えていなかった角は鬼のように鋭く長く伸びていのだ。
私は全力で逃げ、もう一度巨岩に隠れた。確かに目が合いはしたが、ただそれだけ。あいつの巨体では速くは動けないはずだ。
体力と大量に消耗している中、更に全力で走ったからか呼吸が苦しい。
「でももうここまでくれば───ッ」
正面の沼に向けられた私の視界に入ったものを見て私は絶句する。
沼の中から、ふたつの目が私を───見つめていた。その目の主は恐らく先程の鬼蛙……私が恐怖で動けずにいると……沼から鬼蛙が音を立てて跳び、私の目の前に着地した。
目の前にして分かる鬼蛙の巨大さに震える。
私は確かにA級探索者だが、こいつは今まで探索してきたA級ダンジョンの層主よりも遥かに強い。少しでも抗えるのなら抗いたい。でも出来ない。こいつに恐怖感じている私は為す術なく殺られる。
あぁもう、こんなことになるなら探索者なんかやんなきゃ良かった。
私を丸呑みする気なのか鬼蛙は口を大きく開け、近づいてきた。私はただその様子を見ながらその場にへたり込んでいた。
そんな時だった、私のヒーローが現れたのは。
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えちょまです
いつか優希の服溶解、上裸シーンとか書きたいですね。
それじゃ
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