社畜、ダンジョンから出る

 大盛況を見せているコメント欄を横目に見ながら、アビリティボックスへ六割を仕舞って、目の前死体となった蜈蚣ムカデに近づく。


 黒く輝く外骨格をノックするように叩いてみると、案の定と言ったところだろうか。鎧割では到底斬れないような音が跳ね返ってきた。


 こりゃ鎧割使ってたら折れてたかもな。鸚鵡返シ様様だ。


 次に無数に生えている脚を見てみるが…普通の蜈蚣と至って変わりは無い。強いて言えば、節を除いて脚が胴体と同じように外骨格で覆われているぐらいだ。


 次に三枚おろしにしたことで見えるようになった内部を見てみようとするが…ここで一通のメッセージが入った。送信主は霧世さんからだった。


『まさかダンジョンブレイクを一人で片付けるなど思ってもいなかったが……良くやった。死者を出してしまったが、お前のおかげで被害を最小限に抑えることは出来た。ありがとう。今は蜈蚣を観察しているようだが、何かあったら連絡してくれ。こちらでも映像解析で何か分かったら伝える』


 霧世さんも配信を見ていたらしい。それもそうか、霧世さんが言い出したんだし。っていうか今回の配信は何人ぐらい見てたんだろ…?


 高橋が知るのはまだ後になるが、今回の緊急配信ではDtube視聴者数歴代トップ3にも入る程の人数が集まっていた。その数はおよそ300万人……たった数回の配信しかしていない新人がこの数を取るのは歴代の中では一番だ。おまけにソロでこの数を取るのも異常。歴代1位の配信者でもパーティを組んでやっとだと言うのに高橋はソロでここまで来てしまったのだ。


 しかし気になりはしたものの、高橋は蜈蚣の死体に興味津々なようで霧世からのメッセージを確認し終えるとすぐに三枚おろしにされた蜈蚣の体で作られた道を歩き始めた。


 モンスターは不思議な生物で、普通の虫には無いものが備わっていたりする。先程見た脚が外骨格のようになっているのもそうだ。

 内部を歩き見て、肉々しい筋肉の中に、一際輝いている石を見つける。


 モンスターには『魔石』…別名コアとも呼ばれる石が体内にあり、世界の経済を回しているのは魔石と言っても過言では無いぐらいだ。大きければ大きい程高価で取り引きされる。しかも深層主や最深層主の物となれば大きいのは勿論、大量の魔力が内蔵されているため優に億は超える。


 引っ張り出した魔石の大きさは…俺の両腕に収まるぐらいだろうか。今まで見てきた中で一番デカかった。


《でっっっっっっか》

《なんやこの魔石デカすぎやろ》

《これだけでうんめぇ棒30億本は買えるって》

《いらんいらん》

《そりゃこんぐらい大きければ魔石もでかいわな》

《くれ》


 羨ましがるコメントで溢れ返るコメント欄。


 ひとまずアイテムボックスへ仕舞い、歩き続けていると頭部へ到着した。

 死体の正面に立ち、三つに分けられた蜈蚣の頭を見つめる。頭の周りを歩き回り、蜈蚣の頭部から地面に垂らされた触覚を見つける。触覚の先には俺の腕が切断された時に見えたものと一緒のものだった。


 こいつが俺にダメージを与えられたのは六割と八割状態の時だけか……まぁそれでもやった方か。


 ひとりで納得し、背後に立つ光柱に向かって歩き出す。光柱が示しているのはダンジョンからの出口だ。




 暫く歩き、光輝く扉に到着する。

 ここを出ればダンジョンは完全崩壊が始まり、跡形も無くなる。蜈蚣の死体は惜しいが…あんなもの外で出してもまた街を壊すだけだ。一応何枚か外骨格とかは剥いできたし良しとしよう。




 俺は扉へ向かって歩いて行った。





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 えちょまです

 次回から何かが変わるかも…

 それじゃ













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