社畜、伝説に再認定される 後編

 巨大な体躯に禍々しい鎧のような外骨格。胴体と思わしき部分からは鋭く、あらゆる物を突き破ることが出来そうな程の足。そして何よりも強靭な顎を携えていた……俺の目の前に姿を現したのは奥に聳える山脈をも凌駕し、数百メートルにも及ぶ蜈蚣ムカデだった。


《は?》

《いやいやいやデカくね?》

《あんなのが新宿で暴れ回ったら隣区まで被害が出るぞ》

《蜈蚣だよな?世界の終わりみたいな見た目してるやんけ》

《終わった(´^p^`)》

《流石の高橋でもあれは無理》


 コメント欄はあいつを見て絶望に陥っているようだ。確かに大きいが…それ以外には何も特筆すべき点はない。毒を持っている可能性は大ありだが、それは俺の肌を貫通しなければ無意味だ。それに九割であれば解毒も出来る。


 ……ひとまず、八割で様子見か。


 アビリティボックスへ一割保管し、八割の状態になる。


 武器は……普通の短剣だとキツそうだ。普通の短剣があの硬そうな装甲を傷付けられるわけが無い。

 あの外骨格を鎧と認識すれば鎧割が使えるだろうか……?……壊れたら嫌だし辞めておこう。穿牙も良いが、あれだと面白味がない。外のモンスターの駆除もしたし…少しぐらい遊んでもいいだろ。


 良さげな短剣が無いかアイテムボックスの中を探る。


《おい高橋前!》

《気付け気付け》

《呑気にアイテムボックス漁ってる場合じゃないって!》

《何でこんなに落ち着いてるんですかね…》

《高橋だから》

《それや》


 コメント欄が何やら騒がしいが、俺は気にせずにアイテムボックスを漁る。


 実際、蜈蚣が走行中の列車のようにこちらへ突進してきているのは分かっている。それでいて、俺はのんびりとアイテムボックスを漁っているのだ。


 蜈蚣が近づいてくる轟音をBGMにしながらアイテムボックスに手を突っ込んでいると、丁度最適な短剣を見つけた。


 取り出してすぐ目の前にまで来ていた蜈蚣を見据え、構える。蜈蚣はその構えを警戒することなく突進してくるが……短剣に触れると巨大な体躯が宙を舞った。倒れた振動で地面が震える。


 俺はここに立っていただけなのに蜈蚣が吹っ飛んでいるのにはこの短剣が関係している。『鸚鵡返シ《オウムがえし》』。そのまんまの意味の効果を持っている短剣だ。相手から受けた攻撃を相手に返す。攻撃が弱いモンスターにはあまり効果がないが、高いモンスターには穿牙の次に最適と言っていいだろう。


 未だにピクピクと痙攣している蜈蚣を見つめながらコメント欄へ目を向ける。


《夢か》

《夢だな》

《はよこんな悪夢覚めてくれんかなぁ》

《異常です》

《伝説が始まりますたwww》


「楽しんでいただけて何よりですよ……さて、蜈蚣がなんか痙攣してるみたいですけど…あっ起きた。早いですね」


 意識を取り戻した蜈蚣が胴体を起き上がらせる。その巨大な体躯には似合わないスピードで俺から距離を取り始めた。どうやら俺をと認識を改めたようだ。


 ガチガチと顎を鳴らしながら山の向こうに見えた長い胴体を持ってき、俺を囲むように胴体が円を描いた。

 自身の土俵に持ち込めたからなのか、どこか優越そうな表情をしているように感じられた。


 虫にイラつくことなんて蚊以外にないとは思っていたんだけど……


 俺は鸚鵡返シを構え、蜈蚣を煽るように手で招き、挑発する。やはり煽られていると認識できるだけの脳はあるのか、優越感に浸っていた顔がみるみる歪んでいく。


「こいよ。蜈蚣の三枚おろしにしてやるから」


 俺が言ったと同時に空気をビリビリと揺らす咆哮をあげ、地面に潜る。姿は地中に隠れ見えなくなったが真下で蜈蚣が蠢いているのは分かった。

 しかし胴体が長いからか、中々奴が何処から出てくるかが分からない。


 地中からの攻撃を警戒し、耳を澄ませる。

 途端に真下から轟音が聞こえた。俺はその場から飛び退き、先程まで居た地点を見る。


 そこからは蜈蚣が俺を丸呑みしようとしていたのが分かるように、ごっそりと土が無くなり直径10mぐらいの穴が空いていた。

 またもや俺の真下から音が聞こえ、蜈蚣が飛び出してくる。


「それだけしか芸が無いのかよ」


 ただこれだけなら興醒めだ。こんな調子ならさっさと殺して今回のダンジョンブレイクを終わらした方がいい。


 俺は鸚鵡返シを穿牙に持ち替え、次の攻撃が来るのを待つ。

 案の定、俺の真下から轟音が聞こえ始める。


 しかし、こんなのが層主だなんて言われたらリスナー達が勘違いを起こしてしまうかもしれないし……最後ぐらい見せ場作っといてやるか。


 俺は少しだけその場から離れ、飛び出してきた蜈蚣を両腕で掴み…引っこ抜くようにして蜈蚣を地中から引きずり出した。


 驚いたような声を出す蜈蚣。


 俺は蜈蚣に近づき、両手を広げて言った。


「来い」


 蜈蚣は少し呆けていたが、自分が舐められてると気付くと激昂し勢い良く突進してきた。

 俺はそれを正面から受け止める。

 今のステータスじゃ止められない程の推進力。あまりの重圧に耐えきれなかったのか肋骨が折れる音がした。


 その音が聞こえたのか、蜈蚣も更にスピードを上げてくる。

 後ろにある木が音を立てながら俺にぶつかり折れていく。


「これ以上のスピードは出ないのか?」


 知能がある蜈蚣にそう問いかけるがスピードは上がっていないのでこれが限界なのだろう。


 ……本当に図体がでかいだけの虫だったな。


 アビリティボックスから九割を引き出し、骨折やその他諸々の怪我を完治させる。完治したのを確認すると、蜈蚣を止める為に全身に力を入れる。


 スピードが落ちていることに気づいたのか、蜈蚣がスピードをあげるがスピードは落ちていくばかり。


 やがて完全に停止した蜈蚣は最後の悪あがきに強靭な顎で切り裂くように噛み付いて来るが…全くもってダメージは感じられなかった。


 生物としての本能なのか、俺には勝てないと悟り逃げていく蜈蚣を眺める。


 ……最後まで期待外れの奴だったな。


 俺は穿牙を全力で蜈蚣に向かって振りかぶる。空間に二本の線が入り、蜈蚣は三つに切断された。


 これにて、蜈蚣の三枚おろし……層主討伐完了だ。


「呆気ないね」


《伝説再認定》

《なんじゃこりゃ》

《伝説定期》

《呆気ないねじゃないんよwww》

《めちゃくちゃだよ》

《まぁダンジョンブレイクは収まったんだしよしとしよう…》






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 えちょまです

 遅れたごめん

 内容薄いごめん

 この蜈蚣と霧世とかが戦ったら普通に人間側死にます。

 それじゃ

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