社畜、緊急配信をする 前編

 さて、私服を買いに都心へ来た訳だけど…休日だからか、如何せん人が多い。中には探索者の格好をした人物もちらほら見える。おそらくこれからダンジョン探索にでも行くのであろう。


「っとと、今日は私服を買いに来たんだった。えーと、ここら辺で評価が高い服屋は…ん?」


 スマホに入っているマップで評価の良い服屋を探していると、一件のメッセージが届く。


 送り主は…新沙か 。


「えーと、『朝ごはんありがとう!服屋は九条ギルドの子会社二条ギルドが運営してるウィステリアがオススメだよ!代金は私が先に払っとくからね!』……何で俺が今思ってたこと知ってるのかなぁ…」


 恐怖心はひとまずどこかに置いといて…ウィステリアね。早速向かうとするか。


 無意識のうちにウキウキしているのか俺の足取りは軽かった。




 *****



「いらっしゃいませ!ウィステリアへようこそ!」


 オシャレな外見をした店を見つけ、中に入ると女性の店員が元気の良い声で挨拶をしてくる。


「すいません。私服が欲しくて来たんですけど…」

「私服ですね!了解しました!どのようなかん感じの服が良いですか?」


 どのような服と言われても俺はファッションセンスの欠片も無いのでおまかせにする。


「おまかせにします。あぁ、強いて言えば派手じゃなくて爽やかな感じがいいです」

「爽やか!確かにお兄さんのに似合いそうですもんね!ではそちらのコーナーにご案内しますので着いて来てください!」


 店員さんの言葉に従い、洒落ている店内を歩き続けていく。

 店員さんが立ち止まり、こちらを向いてくる。


「こちらが爽やかな服を取り揃えたコーナーになっておりますので、この中からお選びいたしますね!」

「お願いします」


 俺の要望に慣れた手付きで服を選んでいく店員さん。俺の外見に似合った物があったのか、数着の服を腕に抱えこちらへ持ってくる。


「こちら、お兄さんに似合いそうな服をいくつか見繕いましたのでご試着してみてください!」


 そう言って扉の付いた個室を指差す店員さん。ありがとうございますと感謝し、試着室に入っていく。


 スーツをハンガーに掛け、壁に付いているフックへ掛ける。

 店員さんが選んだ服を次々と試着していき、その中でいくつか特に気に入ったのがあったので買うことにした。代金は新沙が負担してくれるらしいが、少し男としてのプライドが傷ついた気がする……


「ご来店ありがとうございました!またのご来店をお待ちしております!」

「はい、また来ます」


 最後まで丁寧に接してくれた店員へ好感を持ち、自動ドアの近くへ歩き出す…が、その時俺目掛けて何かが突進してくる音が外からした。


 これは……マズイ!


「すいません!失礼します!」

「え、あ!ちょっ!」


 俺は音に驚いている店員さんを抱き抱え、横へ避ける。その謎の音の生物は自動ドアを突き破り、轟音を響かせた。そこにあったのはバラバラになった服を着たマネキンと、服を置いてあった木棚の破片が散乱していた。


 徐々に土煙が晴れていき、その正体が顕になる。8つの目をギョロギョロさせながら8本の足でこちらへ方向転換する


 再び俺たちを引き潰さんと言わんばかりに突進して来る大蜘蛛。店員さんを抱えて避けれるわ避けれるのだが……流石にウィステリアの店内を滅茶苦茶にされる訳にはいかない。


 後ろにいる店員さんの方を振り向く。

 ガタガタと怯えている店員さんに出来るだけ優しい声で話す。


「大丈夫です。あいつは俺が殺します。だから安心してください」

「は、はい…」


 目から少し恐怖が薄らいだのが見えた。これで大丈夫だろう。

 店員の状況を確認すると、俺は前に振り返ってアイテムボックスから短剣を取り出す。

 取り出したのはただ単なる短剣。何の特殊効果も無い普通の短剣だ。

 しかし、こいつ程度なら…これで十分だ。


 物凄いスピードで突っ込んでくる大蜘蛛。

 それ目掛けて俺は短剣を構える。

 狙うは頭の真ん中。

 そこだけを見つめ、深く呼吸をする。


「一点集中……………ここっ!」


 目の前まで来た大蜘蛛の頭ど真ん中目掛けて短剣で突いた。大蜘蛛の動きが静止したかと思うと…身体が破裂した。


 後ろを振り返り、呆けている店員さんに向かって言う。




「終わりましたよ。店員さん」





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 えちょまです。

 モンスターが外に?!ということは?

 30万PVと☆1000ありがとう!

 それじゃ

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