社畜、恐怖する

 俺に抱きついてきた謎の女性も流石に周りの目が気になったのか、俺をビルの中に案内してくれた…まではいいのだが、今現在俺は真っ黒な部屋の中央で、椅子に縄で縛られていた。抜け出そうと思えば抜け出せるのだが…謎の女性はハイライトのない目でこちらを見ながら俺にブツブツと呟いているので辞めておく。


「ゆーくん高校生の時言ってたよね?君以外眼中に無いって…あれ嘘だったの?社長とも京香ちゃんとも一分以上話してさぁ…ねぇ何黙ってるの?ねぇ答えてよ。ねぇ。ねぇ。ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇっ!!」

「ごめんちょっと落ち着こっか」

「うん♡」


 感情の振り幅怖っ……って言うか、最初に気付くべきだったな、会社名に一条と名前が付いている時点で…


 記憶の奥底から掘り出した彼女の名は一条新沙いちじょうさらさ…高校時代に俺が心酔し、そして俺と同類の女だ。


「別に仕事関係の話をしてただけだよ。やましいことなんてこれっぽっちも無いさ。だから縄、解いてくれない?」


 縄で結ばれていて新沙には見えないが、親指と人差し指で1センチぐらいの空間を開ける。


 普通の人間なら見えない位置なのだが、どうにも新沙には俺の背後まで見えているらしい…怖っ。


「本当に?……分かったよ、ごめんね。誤解して」

「全然いいよ」


 新沙は納得した様子で俺の背後に回り、縄を解いた。

 完全に縄が解け、新沙が縄を持って何処かに行こうとするのを止める。


「ごめん。ちょっとその縄貸して?」

「…?いいけど…はい」

「次は椅子に座ってもらってもいいかな?」

「え?…うん」


 差し出してきた縄を手に取り、新沙を椅子に座らせ…目に見えない速度で先ほどの俺のように縄で椅子に固定した。


「え、あの、え?」


 よしっ!これでOKだ。さっさと攻略部隊長に挨拶をしに行かなければ…こんな不気味な部屋からはさっさとおさらばだ。


 ドアノブを捻ろうとすると新沙が話しかけて来る。


「ねぇ、何処に行くの?」

「そりゃ攻略部隊長に挨拶を…」


 そう言いかけると、新沙から衝撃の言葉が放たれる。





「攻略部隊長私だよ?」





 ………待ってそれじゃあ配属先の上司を初対面で椅子に縛り上げたってこと?!いやでも先にやってきたのはあっちだから……ひとまず…


「すいませんでした」

「全然!ゆーくんに縛られて私嬉しかった!」


 ………ヒェッ





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 えちょまです

 執筆とは終わらない春休み課題からの逃亡手段である。

 それじゃ




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