社畜、悪寒を感じる

 初配信も終わり、社長室で霧世さんと今日お配信について話していると急にゾワゾワした感覚がした。


「…?何故か悪寒が…」

「風邪か?風邪ならさっさと家に帰って寝てろ。まぁ、今日は配信も終わってやることもなかったはずだし…うん、帰っていいぞ。安静にな」


 霧世さんが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。


 ここ数年風邪なんて引いたことが無いので違う気もするが…今日は配信で疲れたし、厚意に甘えるとしよう。


「ありがとうございます。それではまた明日」

「ああ、また明日」


 別れの挨拶をして社長室から出ていく。


 地上へ降りるためにエレベーターを待っていると、何処からか視線を感じたが……恐らく疲れているのだろう。


「気の所為…今日は早く帰って休むか」


 社畜だった時からは考えられないような帰宅時間に、俺は胸を踊らせながら家路に着いた。





 九条霧世said


 優希が出ていった後、コーヒーを啜りながら今日の配信を見返す。


「アチッ…!…S級探索者5名が13時間掛けて攻略した城崖ダンジョンをソロでたったの数十分で攻略…ククク、とことん化け物だな」


 武蔵と呼んでいた最深層の層主に最初の不意打ちだけしかダメージを与えさせず、最初以降は傷を負わなかった……あいつの異常性を再確認させられた気分だ。


 コーヒーを息で冷ましながらチビチビ飲んでいると、机に置かれてあったスマホが揺れた。画面に一条ギルドと書かれたスマホを手に取り、耳に翳す。


「どうした?何か用か?」

「はい。新しく入った彼についてなんですが───」


 観測者からの提案は面白いものだった。


「『特攻部隊に入れてみませんか』、か…入ってからすぐにあそこへ異動するなんて異例だぞ」

「社長言ってたじゃないですか…新しい風を吹かす、と」

「お前、優希との会話を聞いていたな?…まぁ良い、あいつには伝えておく。受け入れる準備をしておけ」

「はい。それでは失礼します」


 電話を切り、机にスマホを置く。


 確かにあいつの実力なら特攻部隊に入っても問題は無いだろう。しかしあいつについて分からないことが多すぎる。

 何故荷物持ちがあそこまで強くなれたのか、配信で見せた力は本当に全力なのか…過去に何があったのか…


「まぁそこら辺は観測者に任せるとするか」


 椅子から立ち上がり、地上を歩いている優希を眺めながら呟く。


「あいつが何処まで登ってくるか…見物だな」


 一方家路に着いていた優希は……


「…?また悪寒が…」


 得体の知れない感覚を再度感じていた。




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 えちょまです

 それじゃ

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