社畜、配信する 後編

 自分の境遇について話すと、段々コメント欄も落ち着きを見せてきた。


《なるほどなぁ》

《確かに働く場所なかったらヤバいもんな》

《スカウトしてもらえてよかったやん》

《荷物持ちが逸脱者とか初めて聞いたゾ》

《超大型新人で収めていい器じゃないだろ》

《そりゃ神隠ダンジョンも無傷で生還できるわ》


「理解してもらえて良かったです」


 リスナー達に変な勘違いをされずに済み、ホッと息を着くと…霧世社長が俺の肩を叩き、配信には入らない声で呟く。


「まだ配信中だ、気を抜くな。お前はこの後ダンジョンに行ってひとりで配信するんだぞ」

「……はい」


 …そうだった。俺この後ひとりで配信しないといけないんだった。


 頭を抱えている俺の隣で霧世さんがコメント欄にリンクを貼る。リンクの行先は俺のDTubeアカウントだ。


「それじゃあ次はこっちのリンクに移動してもらおうか。移動先の配信では面白いものが見れるぞ」


《楽しみすぎワロタ》

《もしかして僕達の結婚式場ですか?!》

《↑ガチめにキショいから辞めろ》

《ID4690175はDTubeの規約に違反した為BANしました》

《BANされてて草》

《とりま楽しみやな》



 ……あぁ、また胃が痛くなってきた。







 *****






 〜配信が開始されました〜


《始まったぞぉ》

《アカウント名書いとらんけど誰なんや》

《やはりこれは僕と霧世社長とのカップルアカウント!》

《ID561749はDTubeの規約に違反した為BANしました》

《復活早々BANされてて草》

《こいつアカウント何個持ってんだよwww》

《ここどこや》


 うーん、アカウント名何にしようか迷ってたら配信開始になってしまった…後から変えればいいか。


 出来るだけスマイルに…高校時代を思い出せ。愛想の良い笑顔を、人あたりの良い笑顔を。

 ……よし、これでいいな。


 顔が爽やかな好青年の笑顔に変わった。

 その笑顔を貼り付けたまま俺は挨拶をする。


「どうも皆さん、先程ぶりですね。今回の配信は僕のダンジョン攻略配信となっています!」


《高橋お前だったんか!》

《ほーんここで実力確かめたるわ》

《返せよ!俺と霧世社長のカップルアカウントを!!!》

《ID863841はDTubeの規約に違反した為BANしました》

《懲りないなぁ》

《楽しみにしてんで》


「なんか面白いのが湧いてますね。まぁ一旦無視して早速攻略していきましょうか。あぁ、後ここは城崖ダンジョンです」


 ここは一度攻略したことがあるので大した危険性は無いが、霧世社長曰くここでも十分らしい。

 ここも神隠ダンジョンと同じ、S級探索者が数人がかりで攻略するダンジョンだそうだ。

 俺はソロでやったけど。


 チラッとコメント欄を見てみる。


《おい今こいつ城崖ダンジョンって言ったよな?死ぬぞ?》

《それもそうだけどなんでこいつスーツなんだよ》

《俺初めて見たぞスーツでダンジョン攻略するやつ》

《まぁ九条ギルドのスーツは高性能って聞くし…》

《確かにそうだけどさぁ…》


 悪かったなダンジョン攻略用の装備持ってなくて!あんな高すぎるもんには手出せねぇよ!……本音を言えば欲しいが、俺の生身の方が強いからなぁ。

 何か強さと引き換えにロマンを失った気がする。

 …まぁいい、今は配信に集中だ。


「それじゃあ攻略していきます」


 俺は短剣を装備し、下層へと続く階段を降りていった。


 下層に降りて最初にエンカウントしたのは…甲冑を被ったスケルトンだ。

 こいつは大して強くもないので甲冑ごと短剣で微塵切りにして骨粉にする。


「下層では物足りないので走って最深層に行きますね」


《わぁ、甲冑って微塵切りに出来るんだ》

《※出来ません。真似したら剣が折れます》

《シンプルにバケモンで草》

《えっぐ》

《無表情でモンスター捌くのエグすぎw》

《…おい待て今こいつなんて言った》

《物足りないので最深層行ってくるは狂ってる》


 何か色々と言われているが全て事実だ。

 下層では物足りないし、最深層の層主レベルじゃないと相手にもならない。


 足を止めること無く更にスピードを上げ、一気に最深層まで辿り着いた。

 途中途中何かがぶつかった感じがしたが気にしない。


「皆さん、ここが城崖ダンジョン最深層の入口です」


 階段の奥から漂う禍々しい魔力、殺気、怨念。それはリスナーにも画面越しから伝わっていた。


《画面越しなのに凄いものを何か感じる》

《画面越しでこれならその場にいたら気失ってるかもしれない》

《実際そうなるよなぁ》

《っていうかこれめっちゃ貴重な配信やん》

《最深層情報は重宝されるからなぁ》


「ほえー」


 ほえー、そんな貴重なんだ。……じゃあリスナーの皆に最深層がどんなところか見せてやるか。


「行きます」


 最深層へ続く石造りの階段を降りていく。

 長く下が見えない階段をようやく地面が見え始め、そのまま降りていくと…首を何かが掠めた。首の薄皮が切れたのか、血が少量垂れる。


「久しぶりだな。


 最深層のに向かって俺は挨拶をする。

 人間と同じ体格で鎧を着ている骸骨、あいつこそがまさにここの層主だ。

 このダンジョンの最深層は層主部屋まで一直線となっている特殊なダンジョンだ。普通他のダンジョンの最深層はモンスターで溢れかえっていて、一体一体がかなり強いのだが…ここだけは何故か違った。


 話を戻すが…宮本武蔵、誰もが一度は聞いたことがあるであろう歴史の人物だ。実際にこいつは宮本武蔵自身では無いのだが、俺はこいつのことを武蔵呼んでいる。

 その名たる由縁は……こいつの実力だ。

 宮本武蔵は剣豪とも呼ばれる程の実力を持ち、二刀流でよく戦って来たと言われている。そしてこいつの持っている武器は両手に大小非対称の刀。これがもうひとつの宮本武蔵と呼んでいる理由だ。


 コメント欄に目を向ける。


《あんなのが居るのかよ》

《武蔵……ネームドか?》

《誰もここに辿り着けてないんだし高橋命名だろ》

《武蔵つったら最強の剣豪じゃん》

《ならこいつも宮本武蔵と同じぐらいの実力を…》

《怪物対怪物の戦いが始まるぞ》


 俺が武蔵と呼んだことに注目がいってるな…まぁいい、今からの戦いで、俺に釘付けにしてやるよ。


 こうして俺と武蔵の戦闘が始まった。




 --------------

 えちょまです

 何かうーんって思ったけど書き直せない。

 それじゃ

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