社畜、配信する 中編
準備が整い、コメント欄をちらっと見てみる。
コメント欄は配信前なのに、ギリギリ目で追えるスピードで流れていた。
《今回はどんな新人が来るのかねぇ》
《流石に京ちゃんレベルの新人は来ないやろ》
《wktk》
《九条ギルドから出た配信者は大体つおいから期待》
うーん…あまり期待されても困るんだけどなぁ……胃が痛くなってきた。さっき緊張解こうと思って頬を叩いたのに、意味ないじゃん。
こんなことを思っていても配信するという未来は確定しているので、最後に身だしなみを整える。
寝癖もついてないし、大丈夫だなと確認すると、誰かが肩を叩いてきた。
振り返ると、霧世さんが片手に藤の花の形をしたイヤリングを持っていた。
……何故に?
「高橋。お前、イヤリングは嫌いか?」
「…?いえ、特には…」
「よし、それじゃあこれ付けろ。これはお前が九条ギルドの人間だと証明する物だ」
手に持っていた藤の花のイヤリングを渡してくる。
一見普通のオシャレなイヤリングだが、これもまた特殊素材が使われているのだろう。
耳にパチンッと付ける。
身体に特に変化は無いので特殊効果は付いていないみたいだ。
俺はここで疑問に思ったことを聞く。
「じゃあ、このスーツは何のために?」
「それは社交の場用だ。別に着ていても構わないが、社員の奴らは出社する時は大体私服だぞ」
私服出社って存在したのか?!てっきり伝説かと思っていたけど……正直言って私服なんて持ってないからこのスーツはかなりありがたいな。
狗柳ギルドにいた時もスーツで戦ってたし。
…ん?霧世さんが憐れみの目で見詰めてくるけど…なんで?
霧世さんの口から、俺の心を抉る言葉が放たれる。
「お前、私服持ってなさそうだな」
「……それは言わない約束ですよ」
「クククク。確かにそうだったな。…さて、それじゃあ配信を始めるぞ。お前は画面から出ておけ」
「はい」
俺は霧世さんの紹介後に出てくるので、ライブ画面外で待機しておく。
霧世さんが配信開始と書かれたボタンを押した。
次の瞬間、怒涛の如くコメントが流れていく。
《キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!》
《相変わらずお綺麗ですね霧世社長。結婚しましょう》
《↑帰れ。あわよくば土に還れ》
《辛辣すぎて草》
《今回はどんな新人が来るんですか?》
《男か女か気になる》
《そいつ強いんすか霧世社長》
霧世さんは自己紹介をし、コメントに対して丁寧に受け答えていく。
「九条ギルド社長の九条霧世だ。配信を見に来てくれてありがとう。さて、結婚しましょうとか言ってるアホは無視して…ちょくちょく見えた新人の情報を伝えようか。まずどんな新人が来るか、か…超大型新人だな。次に男か女かだが、男だ。しかも…まぁ見てからのお楽しみだ。次は強いか…ふむ、私と同等…いやそれ以上だな。」
最後の発言にコメント欄が一層ザワつく。
《マジだったらとんでもねぇ化け物だぞ》
《霧世社長に同等かそれ以上って言わせるとか怪物やん》
《それだったら『逸脱者』確定になるんだけど…》
《逸脱者って何ぞや》
《簡単に言えば化け物。S級探索者が束になっても勝てない奴のことを逸脱者って言うんや》
《ほえー霧世社長そんな強かったんやな》
「さて、それじゃあ出てきてもらおうか…高橋、来い」
霧世さん手招きをされ、カメラに向かって出来るだけ好印象を残すために笑顔で自己紹介をする。
「この度九条ギルドに入社しました、高橋優希です。どうぞよろしくお願いします。」
《イケメッ…!》
《誰かグラサン持ってきてくれ、俺には眩しすぎる》
《どうしてこうも九条ギルドは顔面偏差値が高いんだ!》
《俺たちが可哀想だろ!》
《おいイケメンなのも苛つくがこいつ京ちゃんにぶつかったヤツだぞ》
《( * ˙꒳˙ * )ホエッ?…ホンマやんけ》
《なんでおんねん》
「霧世さんにスカウトされまして、狗柳ギルドが無くなった今職に就けていないので入社させてもらいました」
そこから俺は自分の境遇について話し続けた。
-------------
えちょまです
ちょいと休み貰ってました。
継続は力なり(?)
それじゃ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます