社畜、入社する 前編
「おぉ、でっけぇ…」
俺は目の前にある高層ビルを見上げて呟く。
俺は昨日の件で九条ギルドから呼び出され、現在九条ギルド本社に来ていた。
何で本社かって?知らないHAHAHA。…まぁ本社から呼ばれる程重要なことは分かる。呼ばれた内容としては十中八九、栗宮さんと男のことについてだろう……マズイな、胃が痛くなってきた…
腹を擦りながら本社の前に佇んでいると、ビルの中から見覚えのある女性が出てくる。黒曜石のような髪を靡かせ、スーツに身を包み、威厳のある雰囲気を纏っているのは…栗宮さんだ。
彼女は俺を見つけると、その威厳ある雰囲気には似合わない笑顔で手を振りながら、こちらに向かってきた。
「おはようございます高橋さん!今日はお越しいただきありがとうございます!」
「おはようございます。いえいえ、こちらもここに来るまで色々見て楽しみましたよ」
「それは良かったです!私も初めてここに来た時は驚きました!」
彼女の言葉にうんうんと頷く。実際にここへ来るまで俺は開いた口が塞がらなかった。
雲の上まであるビルに、百均の十倍はあるショッピングモール、空中を走る電車と、初めて見たものが多く、四年間でここまで技術が発達するとは思ってもいなかった。
人間ってやっぱ凄いんだなぁと改めて実感していると栗宮さんが華奢な手で俺の手を握り、俺をビルの中に連れていく。
「ささ、早く行きましょう!社長が待っていますので!」
「あぁ、はい。分かりましたので手を離して頂いても?」
「あ、す、すみません」
無意識で握っていたのだろうか。俺が離してと言うと、彼女は顔を赤らめた…可愛いな、小動物みたいで。
未だに顔が赤い彼女の後を着いていき、俺は社長室へ向かっていった。
*****
「やぁ!君が高橋クン?!私は
栗宮さんとは違った漆黒の髪を持ち、何故かメイド服姿で可愛らしい顔をにっこにこさせながら俺に自己紹介してきたこの女性、九条霧世さんは九条ギルドの社長だそうだ。
…俺は瞬時に感じ取った。あぁ、この人絶対に変だ、と。
いや、少し考えてみよう、これには何か意図があるのかもしれない。もしかしたら昨日の件に関わることかm──
「もうっ!霧世さん、趣味で集めてる服を着てこないでと何度言ったら分かるんですか?!」
……趣味だったんだ、心配して損した。
っていうか栗宮さんの口振りからだと今一回目じゃなくて…数回目?……それだったらとんでもねぇなこの社長。
霧世さんは呆れた目を向けている俺を見て、何かを察したかのように口を開く。
良かった、少しは常識があるようだ。
「もしかして……足りなかったのか?」
「……ん?えっと何が…」
「しょうがないね、やってあげるさ」
「え、は、え?」
意味不明なことを言いながら両手でハートを作り、霧世さんは自分の胸の所まで持ってきて魔法の言葉を呟く。
「萌え萌えキュン!」
「……」
「……」
霧世さんはハートを作ったまま、栗宮さんは軽蔑するような目で霧世さんを見て、俺も栗宮さんと同じような目で見ていた。
一分程時が流れ、俺はひとつの結論に行き着く。
……帰ろう、勝手に帰るのは絶対にマズイが流石にこの空気は辛くて耐えられない。
俺は回れ右をしてドアノブに手を掛ける。
ドアノブを捻ろうとしたその時、首筋にナイフを当てられているかのような殺気が俺を襲った。
その場から直ぐに退き、殺気がした方向を見ると……さっきまでとは違う雰囲気を纏った霧世さんがそこに立っていた。
彼女は俺に圧の籠った声で話し掛けてくる。
「おい、何処に行こうとしてるんだよ」
……このパターンはマズイ、戦う流れになってしまう。それだけは絶対に避けたい、何か方法は……
そう考えている内に、何故か社長室に霧が立ち込める。
「…流石日本屈指のギルドの代表は伊達じゃないってことね…」
霧世から溢れ出る膨大な魔力、彼女の中に秘められた強大な力。どれも今の俺のステータスと肩を並べている。
どうすべきかと悩んでいると霧世が話し掛けてくる。
「今日呼んだのは、君をスカウトするためだ。しかし私は君の力を知らない…ここまで言えばわかっただろう?」
「…はい」
何でこうなるかなぁと思いつつも、俺はアビリティボックスから一部を取り出して戦闘体勢に入る。
両方準備万端となり、霧世が呟く。
「入社試験開始」
「じゃないです」
霧世が言ったと同時に栗宮さんが霧世に拳骨をかました。
……ゑ?
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えちょまです
寝てました
それじゃ
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