社畜、焦る
謎の女性の後に次、腕に『九条ギルド』の腕章を着けた人がバタバタと社長室に駆け込み、狗柳を拘束する。
狗柳も呆気に取られていた状態から戻り、抵抗しようとするが、その抵抗も虚しく、拘束している人達の方が強いようで為す術なく外へ連れていかれた。
一応あいつは仮にもA級探索者の筈なのだが、それを複数人とは言えども容易く捕縛するレベルの者たちを確保している『九条ギルド』、一体どれほどの力を持っているのだろうか?
警戒しておいた方が良さそうだ。
狗柳と九条ギルド員が社長室から出ていき、謎の女性と俺は二人きりになる。
互いに正面から向き合い、謎の女性を観察する。
背丈は150cm程度で小柄、そして腰まで伸びた黒曜石のような艶のある髪、顔立ちはとても整っており、身体は小柄な体躯に合わないかなりのマシュマロボディで、威厳ある雰囲気を纏っていた。
相手もこちらを観察しているのか、俺の身体中をあちこち見ている。
互いに観察が終わり、ピリピリとした空気が流れる。
先に口を開いたのは…謎の女性からだった。
「っぷは〜!あぁ、疲れたぁ 。どうだったみんな、私超カッコよかったでしょ!」
「……え?」
先程までの威厳ある雰囲気とは一変、今度は周りにいるだけで、人々を笑顔にさせるようなポワポワとした雰囲気に変わった。
それに対し、俺は拍子抜けしてしまう。
というか彼女は今誰に向かって話したのだろうか?この場には誰も彼女と俺以外に居ないのに、彼女は今も尚、楽しそうに何も無い空中に話し続けている。
「えっと……貴女は一体?」
「あぁごめんなさい、放ったらかしにしちゃって!私は九条ギルド所属の栗宮京香って言います!貴方の名前は?」
絵に書いたような笑顔で自己紹介をする彼女の名前は栗宮京香と言うらしい。笑顔が眩しすぎて消滅しそうだ。
「ご丁寧にありがとうございます。私の名前は高橋優希と言います。……ところで、栗宮さんは今何に向かって話していたんですか?ここには俺と貴女以外誰もいないはずですけど…」
俺が疑問に思ったことを口にすると、彼女は快く答えてくれた。
「それはですね〜、私探索者もやってるんですけど、配信者としても活動してて…それで今誰かに向かって話していたのは配信を観てくれているリスナーの皆と話していたんです!あっ、コメント見せたあげます!ドラン、コメント表示」
彼女が近くに浮いていた球状のドローンに向かって指示すると、目の前に突然、文字がどんどん流れていっている半透明の板が現れる。
そこには
《やあ、見てる〜?》
《ちっすちっす社畜お兄さん》
《おまいが京ちゃんにぶつかった謎の男か?》
《何か強そうでは無さそうだな》
《いや弱そうに見えて強いやつもいるからな、油断するな》
《とりま昨日のことについて話そか^^》
「おぉ …すごい早さでコメントが流れていってる…」
配信かぁ聞いたことはあるが見たことはないな…そもそも、そんな時間無かったし。
……あれ待って、《おまいが京ちゃんにぶつかった謎の男か?》、《とりま昨日のことについて話そか^^》…このコメント、もしかして昨日の神隠ダンジョンのこと言ってるのか?それじゃあ目の前にいる栗宮さんは昨日ぶつかった謎の女性ってこと?
……もしかしてこれってマズイ?
俺は今までに無いほど焦っていた。
------------
えちょまです
この度、現代ファンタジー週間93位にランクインしました。こんな拙い文章の小説を見てくださり、ありがとうございます。
ざまあ展開がなかなか分からず、自分の実力不足だなと痛感しました。これからも精進していきますので、是非とも応援よろしくお願いします。
それじゃ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます