社畜、配信に映る 前編
地面に描かれた魔法陣が起動され、視界がが真っ白になり、不快な感触が体を通り抜けていく。
「何も見えない…それに体が空間と空間を通り抜けて行くような不快な感触…もしかして転移魔法陣に乗ってしまったのか?」
転移魔法陣、それはダンジョン内の何処かにランダムで転移させる魔法陣だ。
ランダムと言っても、すぐに地上へ帰還できる場所に転移するのであまり害はない。
転移してしまっても、あ〜乗っちまったか〜、さっさと戻ろ〜、ぐらいである。
しかし、何事にも例外はある。
それは俺が転移先を確認するために取り出したスマホに記されていた。
『現在階層:最深層。即刻その場から立ち去ってください。モンスターを視認した、また視認された場合は死を覚悟してください。』
「…うぇ?」
最深層?いやいやいや、俺が居たのは中層だぜ?何で致死率100%である『死の領域』に転移してんだよ。馬鹿なのかな?
無慈悲にも、証拠として中層よりも周囲に漂う魔力が段違いに濃いので、最深層であることは間違いないのだろう。
……果たして運が良いのか悪いのか、飛ばされた最深層がここ、『神隠ダンジョン』でよかった。
ここは一度、俺が完全攻略している。
それは数ヶ月前に遡る…3ヶ月間不眠不休でノルマをしていた時のことだ、頭がやられていた俺はノリと勢いで最深層に行ってしまったのだが、何故かそのまま攻略出来てしまったのだ。
しかし、正気に戻った時に一つ疑問に思うことがあった。
それは、このダンジョンがいつまで経っても崩壊が始まらないことだ。通常、ダンジョンは完全攻略されると崩壊する仕組みになっている。しかしながら、このダンジョンは崩壊が始まっていない。
専門家に頼めばなにか分かるかもしれないが、そんなことに割ける時間など無い。ましてや、自分の頭で考えようとしてもパッパラパーだ。
会社に報告しようとしたが、『神隠ダンジョン完全攻略しました。』なんて荷物持ちの俺が言っても信じてもられないだろうと思い、報告はしなかった。
「取り敢えず、早くここから出るか。っと、一応武器は持っとかないとな。」
こんな物騒な所に留まっていても意味が無いので、アイテムボックスから異様な気配を感じさせる短剣を2本取り出す。こいつらはダンジョンを完全攻略した時に得られた物だ。
ダンジョンは完全攻略すると、その者に『報酬』が与えられるようになっている。
何故かは分からないが、俺の報酬だけ短剣ばかりで、現在所持している短剣の数は30本以上に上る。その中には今現在立っている、『神隠ダンジョン』の報酬も入る。崩壊も始まっていないのに何故?とも思ったが、報酬が得られたので良しとした。考えてもキリがないからね。
ちなみに、報酬にはそれぞれ種類がある。例えば、鎧を装備しているモンスターのみが出てくるダンジョン『城崖ダンジョン』を完全攻略した時の報酬で得られた『鎧割』は鎧を装着している相手に対し、ステータスが2倍以上になる、特定の相手に対してステータスが上昇するもの。
神隠ダンジョンで得られた『神斬』は神に関連している種族に対し、ステータスが上昇する、種族に対してステータスが上昇する代物などと言ったものだ。
そして先程取り出したのは神斬と獣に対してステータスが上昇する『狩命』だ。神隠ダンジョンの最深層は主に神に関連する獣、『神獣』が出現するため、この二つがベストなのだ。
久しぶりに短剣を使うため、肩慣らしに近くにあった10mぐらいの大岩に向かって短剣を同時に振る。
刹那、《《空間に二本の線が入り、大岩
が四つに切れる。》》
「よし、腕は鈍ってないな」
腕が鈍ってないことも確認し、あとはうろ覚えの深層に上がる階段を見つけるだけになる。
しかし、忘れてはならない。今行われたのはただの肩慣らしだということを。
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えちょまです。
久しぶりの投稿です。配信に映るのは次話からとなっているので、乞うご期待。
なぜそうなった?的なことがあれば答えますので遠慮なく質問してください。
それじゃ
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